団体旅行客、30台
最近投稿できなくてすいません。
世間では夏休みや盆やと言って休みだというのに色々あって京都行きが決定したり東京行きが決定したり…
でも、9月中頃からは一様書く時間確保できます!
時はしばし巻き戻る。
それは、いつも通りお客様に笑顔と愛想を振りまき、クタクタに疲れて仕事から帰ってきた、何の代わり映えのしない日のこと。
「ただいま…」
いつも通り仕事が終わったのでマリエさんのところへ報告をしに行く。
「おかえりさなさい。…って毎度のこと思いますが、今のリンさんは働いてる時とえらい違いですよね」
マリエさんは話しながらもテキパキと依頼完了の手続きを済ましていった。
「…違うって?」
「いえ、気づいてないかも知れないですが実は巷ではリンさんってすごい人気あるんですよ。可愛くて愛嬌があってかわいいからって」
え?そうなの?
「それで八百屋のおじさんや喫茶店のマスターさん等の人達は、よく『あの子いないの?あの子、また指名したいんだけど?』とよく来ますよ」
…キャバクラか。。
と言うか、指名するくらいなら給料上げてくれよ!
未だに時給600アリスはどうかと…
これでもBランク冒険者だよ?
「でも、そんなリンさんの仕事終わりはいつも、この世の終わりを悟ったかのように疲れ切った表情をしてますよね。そんなリンさんを見れば皆さんどのように思うんでしょうね…」
俺は自分の顔をペタペタを触った。
俺そんな顔してるの?
「(まぁ、それでも十分可愛いんですけどね)」
マリエさんは何かを小さな声で呟いた。
「ん?何か言った?」
「いえ!何でも無いです!」
マリエさんは慌てて手を振り否定した。
「あ!リンさん、そう言えば指名の仕事が来てますよ!」
マリエさんは作業の手を止め、思い出したかのように話した。
さっき話に出た中年のおっさん達が気持ち悪く指名したのだろうと想像するとげんなりする。
が一様話しだけは聞くことにする。
「それはどんなおっさんの指名ですか?」
「えーっと、おっさんと言うかおっ様というか」
「ここからは俺から説明してやろう」
マリエさんの柔らかな声とは別の思わず顔をしかめたくなる声がした。
似た別の人だと言い聞かせて顔を上げてみれば案の定というか…、厄災の権化、出会えば最後厄介ごとを押し付けられる最悪の存在。
「げっ」
ギルドのおっさんの登場であった。
「毎度毎度会うたびにげっとは何だ。せっかく説明してやろうというのに」
腕組みをし不満を述べるおっさんをジト目で凝視する。
会うたび会うたび毎度、面倒を押し付けるからだよ。
前あった時なんて緊急の用事だとか抜かして寝ている時に叩き起こしたくせに、その用事が行方不明の飼い猫探しっていうんだからやってられない。
「まぁ、いい。今回依頼したのは、この地を収める領主様。スズキ マッティア大公だ」
えー…と。
「あぁ!ミアのお父さん」
「お前いつのまに大公なんて大物と知り合いになったんだ?」
おっさんは首を傾げ考えるそぶりをした。
「ま、いいか。今回依頼されたのは護衛の仕事だ」
「護衛!」
護衛といえば盗賊を蹴散らしたり、魔物から荷馬車を守ったりするファンタジー定番の仕事!
ついに冒険者っぽくない仕事からの解放されるのか!
「2日間、王都まで送り届ける仕事だ」
「王都!!」
花の都、王都!
異世界に立ち寄ったらぜひ一度は立ち寄ってみたい場所ナンバー1と言っても良いファンタジースポット。
「どうする?引き受け」
「やります!!やらせて下さい!!」
「うむ、いい返事だ、なら明日の朝一に正門に集合だ」
「了解しました!」
俺は足をピシッと揃えおっさんに丁寧な敬礼を素早くした。
よくやった!ギルドのおっさん!!
あんたの事ほんの少しだけ見直したよ!
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「おうっと〜!おうっと〜!」
俺は上機嫌にスキップを踏みながら朝早くから大通りを歩いていた。
「ちょっとは落ち着いたら?田舎者みたいよ?」
隣いたリナがいつも通り毒を吐く。
しかし、今日だけは何があっても許してやろうという寛大な気持ちになれた。
「田舎者で結構。どうせ俺は異世界人なんだから」
リナの毒舌を難なく受け流した。
「ふぅ〜ん。今日のあんたは珍しく寛容じゃない」
「そうだな。今日は記念すべき冒険の初仕事なんだから些細なことでは怒りはしないさ!」
リナはニヤリと嫌な笑みを見せた。
リナはしばらく静かに俺の少し前を歩いたあと不意に思い出したように振りこっちを振り向き俺を指差した。
やけに嘘くさい演技で…
「あ!そう言えばあんたが大切に隠してたクッキー食べちゃった!」
リナはいたずらな笑みを浮かべ舌をペロッと出した。
「は!?」
「ごめんね〜」
「あ!ちょっま!」
リナは俺の制止を無視して走り出した。
俺はすぐさまリナを追いかけ走り出した。
「返せ!!この泥棒の神が!!」
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「はぁ…はぁ…はぁ…」
結局門まで走ってしまった。
「だらし無いわねぇ。ちょっと走った程度で…これだから引きこもりは。ちょっと走り込みでもしたら?」
リナは首を軽く振った。
「お、お前の方がぁ、ずっとギルドにぃ、引きこもって…はぁ…」
「あぁ!!もう暑苦しい!」
リナは鬱陶しそうに俺を手で振り払った。
覚えてろよ!
帰ったらお前の大切にしてるビスケット全部食ってやるからな。
「おぉ、お前たちか、思ったり早かったな」
リナを恨めしそうな顔で睨んでいると門にずらりと並んだ荷馬車の一台からのっそりとギルドおっさんが現れた。
ギルドのおっさんはいつも携えていない剣を腰に差していた。
「マスター!荷物の積み込み終わりましたー」
こっちに向かってマリエさんが小走りに走ってきた。
「あ、リンさん」
マリエさんは俺に気づき軽く手を振った。
「よし、ちょうどいい。マリエ、ギルドの皆んなを集めろ」
「はいはい〜」
マリエさんはおっさんの命令を聞き荷馬車のある方へと走っていった
「え?皆んな?まさかまさかおっさんも行くのか?…いや!そんなまさ」
「行くよ」
ガッ!
瞬間、雷に打たれたかのような衝撃を受けた。
こんな暑苦しいおっさんと2日間共に過ごす??...
「当たり前だろ?これからこの国一番の祭りが開催されるんだ。行かないわけないだろ」
「祭りですって!?」
リナが珍しく興味しんしんといった様子で尋ねた。
「なんだ、知らないのか?国王の愛娘アリスティア・リール・ア・ルナティーナ様の誕生祭が王都で5日間、開催されるんだよ。それをギルドみんなで遊びに行くっていうのがこの街のギルドの決まりなんだよ。今までなんのために部外者であるお前たちにまで書類仕事を任せたと思ってるんだ。」
あ、なるほど。
往復合わせ9日間ギルドを休まないといけなかったからあんなにデスクワークがあったのか。
「それはもちろんマスターがめんどくさがって今までやってこなかったからですよね?」
「しっ!余計なこと言うなマリエ!」
マリエさんが大勢のギルドの職員の人を連れて帰ってきた。
結局おっさんのせいじゃないか...
「みんなを連れてきました」
「よーし、じゃあ整列しろー、諸注意を始めるぞー」
ギルド職員がダラダラと並び始めた。
「今回お前たちは馬車にでもいって大公の相手でもしてのんびりとしとけ。護衛の仕事は殆ど俺たちギルドの職員がするから大丈夫だ。よかったなお前の好きな楽な仕事で」
え?
いや、ファンタジー要素は消さないで。
おっさんはくるりと後ろを向き、ギルドの職員たちの方を向き直す。
「例年通り、怪我なく、事故なく、病気なく、の安全とマナーを守り、元気よく挨拶を忘れずにいくぞー!」
「「「おおー!」」」
ギルド職員全員が声を張り上げた。
遠足??
明日、明後日と永遠に続くかと思われた時間も今日だけには余りにも無力。
子供たちの咽び泣く声が町中に響き渡る。
そんな1日が今日8月31日!!




