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死神の仕事、感謝一つ

熱い日差しの続くと言うのに、炎やらなんやら熱そうな展開です。

まぁ、冬に書くよりはましかと…

 手足を軽く振るう。

 頭がありえないほど冴え渡り、妙に体が軽い。

 俺は今までに感じたことのないほどの高揚感に包まれていた。


 行ける!!

 今ならば、この狂気に満ちた少年もいなすことが出来る。

 いや、それすらも軽く思えてしまう。


 体が動くままに何も考えず、頭を下げ腰をあげる。

 クラウチングスタートの構えをとった。

 視線のセンターに少年を収め、しっかりと地を踏みしめた片足に力を込める。

 体はバネのように勢いよく、しかし頭はぶれずに、地面すれすれを飛ぶように走る。

 目に見える景色がありえない速度で後ろへと消え行き、すぐさま少年へ元までたどり着く。


「っ!」


 少年は思わず目を見開き驚いた。

 初めて握るナイフに力を込め握りしめ、足元から下から上へと跳ねるように切りつける。

 が、器用に剣でナイフを弾かれズボンの端を少し切る程度でしかなかった。

 ならばと飛び上がり少年の頭上をとった俺はさらに追撃を仕掛ける。

 大きく跳ね上がったことにより生まれた重力を味方につけナイフを振り下ろそうとするが目の端に剣を捉え追撃をやめ防御へと移行する。


 ガンッ


 ナイフと剣がぶつかり合い激しく音を立てる。

 空中に浮いていたこともあり俺の軽い体は吹き飛んでいた。

 クルリと一回転してから地面に手をつき難なく着地する。

 息をつく事も無くまたもや感覚に任せた無策な突撃を敢行する。

 ただひたすらに身体が望むままに、右に左にナイフを振り回し、縦横無尽に剣に合わせ駆け回る。

 滝が止まることを知らないように一度動き出した身体も止まることを知らなかった。

 一転攻勢、ただただ惨めに逃げることしか出来なかったあの時が信じられないほどの一方的な戦い。

 ほんの五分程度で少年は、致命傷こそないもののあらゆるところにナイフによる切り傷を受けボロボロの様態であり、俺はというと五体満足の無傷の状態。


 誰が見ても勝敗は明らかだった。


「どうだ!参ったか!!はぁ...はぁ…」


 ひたいから大玉の汗がポタポタと流れ落ちた。


「やはりあなたは強いですね」


 少年は最初の余裕のある表情とは違い、一挙手一投足を見逃すまいする鋭い目つきでこちらを睨んでいる。


「え!?あぁ!!そ、そうだ!…だから今のうちにぃ…はぁ…逃げた方が、良いじゃないか!?見逃してやるぞ…はぁ…はぁ...」


 …やべぇ!!この身体、体力ねぇっ!!


 誰が見ても勝敗は明らかだった。


 もはや足がガクガクと震え立っているのがやっとの状態。


「私がそんなの安い挑発に乗ると思っているのですか?」

「いや、挑発じゃなく...」

「しかし、このままでは勝ち目がないのも事実。だから!奥の手を使わせてもらいます!」


 少年は一度鞘へと剣を収めゆっくりと目を閉じ剣の柄へと手を当てた。


「我が無力な身に一度(ひとたび)の偽りの権能(ちから)を『付与(エンチャント):火炎』ッ!」


 少年は言い終わるやいなや勢いよく細剣を抜き放った。


 眼に映る全てが真っ赤な炎に飲み込まれた。


 ゴゥッ


 やばいと感じ迷うことなくフラフラの体を無理やり動かし左の芝生へと飛び込む。


「熱っ!!」


 顔のすぐ真横を炎が通り過ぎた。


 ちらりと先ほどまで立っていた場所を見てみれば灰だけが舞う完全に壊れた世界があった。

 一瞬にして草花が燃えつきており、あたりには焦げ付いた嫌な臭いが充満していた。

 炎が通り過ぎた後でも頬がジリジリと焼け付く熱を訴える。

 それは先ほどの炎が生半可なものではない火力の炎という事を証明していた。夢か幻でも疑いたくなるような嘘みたいな炎は、掠りでもすれば即灰となる一撃必殺のチート級の攻撃。


 は、反則だろ!!!

 幾ら何でも、序盤で即死技使う奴が出てきていいわけないでしょ!?

 即死なんて復活の手段を確保してからだろ!!


 少年の方へと視線を戻すと手にはメラメラと赤く燃えたぎる剣を握りしめていた。


 先ほどとは違うヒヤリとした汗が流れ落ちた。


「この力を使った以上は悠長にしている暇はありません!ですから、早々に決着と行きましょうかッ!」


 少年は猛獣が如き眼光で睨みつけ、風を切り肉薄する。


「あっ!ちょ!ちょっとタンマ!!」

「問答無用!」


 縦に一線。凄まじい熱気を放った剣が振り下ろされた。

 回避は間に合わないとナイフで受ける。


「あっつッ!?!!」


 剣を受け距離が近くなった事で直に焼け付くような熱気を浴びる。

 手がしびれるほどの熱を受けながら苦し紛れにナイフを振るい剣を押し返し距離をとった。


「熱っ!」


 少年は、手をヒラヒラと振り、息を吹きかけていた。


 …ん?


「もしかして…それ、持ってる本人も熱いのか?…」

「当たり前じゃないですか!」


 おぅ…なんと言う欠陥技…

 しかし、それを笑えるほど今は余裕のある状況じゃなかった。


「やはり『偽りの権能』は魔力消費が激しい。だから!次で終わりにしましょう!『オーバーヒート』ッ!!」


 今までの炎とは比べものにならないほど業火が剣を包み込む。

 轟々とあたりにあまりある熱を振りまきその刀身をさらに赤く燃やした。


 炎で真っ赤に染まる剣で風を焼き地を焦がしながら少年は距離を詰める。


 天高く燃え上がる炎にナイフで受けるなんてただの自殺行為。

 ならば逃げるしかないと横へと駆け出そうとする


「っ!」


 が足がすでに限界を迎えていた。

 足が思うように動かず、倒れ込んでしまった。

 フラフラの状態の自分を騙しながら動かないはずの足を無理やり酷使して来たツケが最悪のタイミングで訪れたのだ。


 少年が距離を詰め剣を振るう短い時間に様々な事が浮かんでは消えていく。


 缶詰食べたことや、森で遭難したこと、徹夜で仕事した事...


 しかし、まだ死にたくはない。

 せっかくの異世界で苦労しかしていないのに死んでたまるかと。ここで死んだら異世界に働きに来ただけになってしまう。

 その想いだけは強くハッキリと浮かび上がった。


「こっからが面白い所なんだよ!!そんな中まだ死んでたまるかッ!!!」


 もう逃げ出すのは無理と威勢良く吠えてみるものの無情にも剣は目の前にまで迫って居た。


 思わず目を閉じた。ここまでかと。


 我が人生に、一片の悔いあり!


 ガンッ


「良くぞ言いました、リンさん。」


 この暑い中涼しげな声が耳に届く。


「なっ、あなたは…」


 来るはずの痛みが来ず、何が起こったのかとゆっくりと目を開ける。


「プ、プルー?」


 目の前にはプルーが立っており飾り気のない無骨な木で出来た大鎌を持ち燃えたぎる剣を受け止めてた。


「イェス、死神プルー、今宵は人…いや神の命を救ってみせましょう!」


 プルーは、少し傷んだ黒色のローブを派手に翻した。


「…あっちっ!!」


 プルーは思わず手を振り冷やした。

誤字脱字、代名詞の乱立、文章のみだれ等御座いましたら、お近くのコメント欄にて教えてくれませんか?

(実はかなり恥ずかしかったりします。)

代名詞の乱立や誤字脱字、等は、とりあえずで書いておいたものがちゃんと修正出来てなかったりするものなので教えてください!

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