夕方、午後6時半
色々あって遅れました。
ゲームとかゲームとか…
…すいません…
「あぁー!よく寝たー」
グッと背伸びをする。
「おやすみ」
ばたり。
リナは俺が起きると同時にソファーに死んだかのように眠った。
「はいはい、おやすみ〜」
俺は大きく深呼吸をする。
よく眠れたからか全てが明るく見える。
今日は何かいいことがあるだろう。
「よし!行くか!」
今日こそ、ギルドにてまともな仕事を受ける。
異世界の冒険者が迷子の世話役や、事務処理的仕事は断じてやるべき仕事では無い。
そう、俺は、魑魅魍魎どもを見つけ次第斬り捨てる、そんな夢ある仕事がしたいのだ。
どんな仕事に有り付けるかと俺は嬉々としてギルドのフロントへと向かった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「今ですと、八百屋さんの客引き、野菜の収穫の手伝い、飲食店のお手伝い、庭の手入れ、等の仕事がありますね」
「…え?」
首を90度傾ける。
ゴブリンの討伐は?オークの群れ殲滅は…
「どれにします?」
マリエさんは可愛らしく首をかしげた。
「…ゴブリン討伐とかって言うのは…?」
「ゴブリン?あぁ、大昔にはそんな仕事も有ったらしいですが今では魔物自体殆ど居ませんからね。たまに、まだそんな仕事がある、なんてバカな人が居るんですけど笑っちゃいますよねー!」
「ははははは…確かに笑えますね…」
マリエさんは、歯を見せ笑った。
あぁ...そっか、魔物は絶滅危惧種だっけ…
「じゃ、じゃぁ…飲食店のお手伝いで…」
「はいはいー、承りました。ギルドカードの提示をお願いします。魔具でクエストを刻みますので」
おぉ!魔具!
と言うことは魔力的なのが出て文字を書くやつですよね!
えーっとカードは確か、ポケットに入れてたような…
「あ、あった」
ギルドカードをマリエさんに渡した。
どんな物なのかとワクワクしながら行く末を見守る。
「はい、じゃ、ちゃっちゃとやっちゃいますねー」
「はい!」
そう言ってギルドカードを四角い箱に挿入した。
「あれ?…」
ピピーッピピーッピピーッ!
四角い箱は物凄く機械的音を鳴らした。
うわぁ…ハイテク。
思ってたのと違う…
「はい。出来ましたよ」
「ど、どうも」
カードを受け取る。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
名前 リン
年 16歳
職業 無職浮浪者
ランク Eランク
ポイント 0
クエスト名: 栄光と祝福の調味料
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
たかだか、飲食店のバイトで、なんて大層な。
「じゃ、頑張ってきてくださいね」
マリエさんはニッコリと微笑んだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「お疲れ様でしたー!」
栄光と祝福の調味料 完!
接客業。
笑顔を振りまいたり、無駄に丁寧な言葉遣いだったりと結構大変な疲れる仕事。
けど森の暮らしに比べたら断然楽。
「あいよー、お疲れさん。はいこれ」
店の店長さんが四角い文字の書かれた木の板を渡してくる。
「これは?」
木の板切れを見つめる。
「何だ知らないのか?これをギルドに持っていくと給金と変えてくれるってもんだよ。ま、証明書だな」
ぶっきらぼうに答えてくれた。
「今日は助かったよ。また縁があれば働いてくれや」
そっぽを向いてボソッとつぶやいた。
まぁ、お金に困ればまたお世話になります。
「まぁ、縁があればまたやりますよ。では今日はお疲れ様でした」
「おう、お疲れさん」
俺はエプロンをおっさんに渡し店を出た。
外は赤く染まって綺麗な夕日が見える。
スーーハァーー。
夕暮れの少しひんやりとした風を浴び大きく深呼吸をする。
今日は、本当によく働いた。
人の役に立ち給金を貰い帰ってゆっくりと寝る。
それこそが人の正しい...あり方......
「異世界に来てまでバイトしたいわけじゃ無いんだけどなぁ…」
というか、異世界の飲食店なんだったら普通、マンドラゴラの野菜炒めとかドラゴンのステーキとかいろいろあるだろう?
なのになんでメニューは川魚の塩焼きとか川魚の煮物とか普通の魚料理ばっかりなんだよ。
普通すぎるんだよこの世界は!
はぁ、もっと血湧き肉躍る心揺れ動く冒険劇は無いものか…
あたりはまだ夕暮れ、街を探索するくらいの時間は残っている。
うちに門限はありません。
となれば、ギルドで木の板換金したのち探索あるのみ。
「レッツゴー!!」
腕を大きく振り上げ叫んだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「あー、迷った。」
ギルドで木の板換金した後リナも一緒に探索行かない?と誘おうとしたら、まだ寝てやがった。
口開けてグーグーとバカそうに。
それで仕方なく1人で来たらこれだよ。
まだ歩き始めて30分だよ?
「どこだよー!ここ!!」
大きく腕を振り下ろした。
ゴーン。ゴーン。ゴーン。
突如後ろから、胸に届くほどの重々しい鐘の音が響いた。
後ろを振り向くと、何故気付かなかったのかと思うほど立派な建物。
それは黒い屋根に大きな十字架。少し壁が色あせていたりしてボロいところはあるがそれはまさしく絵に描いたような教会だった。
沈み切る前の夕日と鐘の音のなる教会。
その共演は、どこか幻想的で神聖なもの。まさしくファンタジー。
素直に見惚れてしまう。
「いい!こういうやついい!!」
鐘の音に吸い寄せられるかのようにその教会へと歩き出す。
教会の前まで来ると質素な装飾の木でできた扉に軽く力を込める。
扉は軽くすんなりと開く。
扉が開くとともに薄暗い教会の中に夕陽の光が差し込んだ。
「あらあら、こんな時間にお客さんなんて珍しい。」
闇よりも暗い漆黒の長い艶やかな髪を持ち
「あなたは、生きるべき道を探すアホな羊さん?」
黒と白の修道服に身を包み込みこんだ少女が一人。
「それとも、死に場所求める愚かな人間?」
しかし、少女はその修道服には決して似合うことのない小さな鎌のついたネックレスをクビにつけ
「ようこそ、私の教会へ、迷える子猫ちゃん」
整った顔で不敵な笑みを浮かべた。
思わず息を飲む。
何かが起こる予感を感じたから。
そしてそれは今まで待ち望んだ、ワンシーン。
「そう!!...こういうイベント待ってた!!!」
「えぇ...えぇ??」
ダンジョンメーカーってゲーム面白いですね。
なんか面白いゲーム知ってたら教えてください




