表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異端ノ魔剣士 ─外伝─  作者: 如月 恭二
2/6

凱旋 弐

固有名詞とか、多すぎるのは勘弁して下さい(笑)


本編のネタバレしたら──そりゃあ元のネタはしょうもないとは思いますけど──面白くないんですよう(泣)!

 そこには、白髪頭を揺らす白衣の男がいた。

 不健康とも取れる目の下は影を作り、神経質を思わせる眉間のしわを(たた)えている。学者然とした容貌(ようぼう)だが、その目は何処か(よど)んでいるように映るだろう。

 彼こそが、かつて赤雷の忌み名を持つ無頼漢(ぶらいかん)と行動を共にした、アルシュ=クロワその人だ。


 「手紙とは違って、随分早い到着じゃな。……まあ、よい。上がりなさい」


 「……相変わらずだな」


 何気なく返した男に、アルシュは小さく笑う。

 両の手を広げ、歓迎する仕草をする彼だが、男はさりげなく手を伸ばすだけだった。困った顔を作り、互いに手を握る。

 座ってくれ、とすすめるアルシュの指示にも無言を貫き、着席した。二人は円卓を挟む形で相対する。

 濃密な薬臭さに、しかし彼は眉をひそめることもなく周囲を見渡す。怪しげな、或いはあからさまな毒物に囲まれているにも関わらず、至って落ち着いていた。


 「君は君で随分と変わった。その口調、まるで誰かさんそっくりじゃ。それはそうと、彼女がお待ちかねのようでな。君の手紙を知って気が気ではない様子じゃった。……顔を見せればきっと喜──」


 「──依頼以外に興味はない」


 アルシュが視線を送るも、男は顔を()らす。よく観察すれば、彼の顔は向かってやや左側を向いているように見えたことだろう。

 アルシュの微笑みが、僅かに困惑と不安の気配を帯びる。


 「では、依頼の話をするとしよう。北部の街から、愛人の間男を殺して欲しいとのことじゃ。これは依頼人の住所を示す地図になる。くれぐれも無くすでないぞ? 分かっておるとは思うが、他言無用じゃから、の?」


 ぼろの羊皮紙を受け取ると、静かに男は(うなず)いた。

 目深(まぶか)に被ったフードの下。その表情はようとして知れないが、アルシュは彼の顔が浮かべるものに見当が付いていた。


 「把握している」


 言葉少なに答えると言う点で、かの赤雷と違いはあれど、振る舞い自体は(まご)(かた)なき彼のそれだ。

 アルシュは懐かしさを感じるが、それには胸の痛みも伴っていた。


 「はは、まったく懐かしいものじゃ。あやつと仕事をしていた頃を思い出すわい。しかし、あやつと来たら年長者を(おもんばか)るということをせなんだ」


 男は無言を貫いている。

 それでも、円卓に乗せられた拳が震えていた。暫しアルシュの昔話が続くが、やがて意を決したように彼は口を開く。


 「その話は……やめてくれないか」


 その言葉の後、診療所内を重苦しい空気が包む。これにはさしものアルシュも口をつぐむよりない。

 話をして和ませようとしていたが、その実では彼の傷口を(えぐ)る真似をしていたのだ。それはアルシュの望むところではない。


 「すまんな、どうやら儂は野暮な話をしたようじゃ」


 「…………そんなことは、ない」


 聞き取れぬ程の声量で何事か呟くと、彼は黙礼し踵を返す。

 男の去り際、アルシュはこう言った。


 「無事に帰って欲しい。……なあに、爺の要らぬ心配じゃろうがな。ただ、君の帰りを待っておる──そんな奴ばらも居ると言うことじゃ」


 扉は優しく穏やかに閉じられた。

次回も、“予定は未定”をお楽しみに!

次回、ミシェルが登場する……かも知れません。


状況により、内容は通達なしに変更しますよし、あらかじめお断り申し上げます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ