第二章
俺を小脇に抱えたじいやは、目的地に向かいズンズン移動している。
途中、多くの侍女達が無言で礼をした後、また、いつものか的な視線を俺に向ける。
俺は仔犬のような視線で、侍女達に助けを求めるが、彼女達は無言で両手を合わせ胸元で十字を切ってきた。
「じいや、せめてパンツだけでも履かせて欲しいのだが…。」
俺の言葉に足を止めることなく、じいやが仕方ありませんね的な雰囲気を醸し出し告げる。
「坊っちゃま…。時間の無い中、多くの大臣達や公爵様方がお待ちしております。陛下はともかく、国の為に、身を粉にして働いて下さる方達が、わざわざ王都まで来て下さっているのです。こちらの都合でお待ち頂くわけには行かないのでございます。」
「いや、それは分かっているよ。だけど、俺を会議に呼ばなくても、どうとでもなるだろう?」
足を止め、俺を向き合うようにして床に下ろしたじいやは、しっぽり聞かせるように口を動かし始める。
「坊っちゃま…、もう何度も言っておりますが、ご自分の立場を理解して頂きとうございます。齢5歳にして、国の治安、都市改革、行政安定、魔法開発等、数々の問題を指先一つで改善し、そして最近は何やら怪しい商売まで始め出す始末…。」
指先一つって、どっかの世紀末かよ…。
「いやいや、それは違う。俺はただ横から口を出しただけで、それらを考え実行しているのは父上以外の彼等だよ。俺じゃ無い。」
後半の話には触れないように配慮しながら俺は反論した。
「坊っちゃま、すでに、その歳でそれを考えられる事自体が必要とされる理由でございます。ちなみに、怪しい商売で売り上げた金額は、坊っちゃまの最近の行動記録と共に王妃様にお伝えしておきました。」
「ふむ、そういうものなのか。って、今なんと…?」
「ですから、怪しい商売で売り上げた金額は、坊っちゃまの最近の行動記録と共に王妃様にお伝えしときました。ついでに反省も見られないようなので、黙っていましたがバニーガールとお戯れになっているお写真も華麗に添えておきました。」
俺は膝に力が入らず、そのまま意識を失いそうになった。
まずいっ、まずいぞ、母上に知られるのだけはまずいっ!!
父上はともかく、母上はマジやばいっ!!うさ耳は、片方が折れているのが良い!
俺は、この先起こるであろう大戦に向けて必死の対策を考え始めた。
アカン、おしっこちびりそう…、ていうか、ちょっと出ちゃったかも…。
そして何も思い浮かばない。
「じいや、一生のお願いだ。あれをあれして、これをdfgklfghjkgh」
「はぁ…、自業自得でございます。さっ、坊っちゃま行きますぞ。時間がありません。」
そういったじいやは、ピクリとも動けない簀巻き状態の俺を小脇に抱えて処刑台へと向かう。
会議室へを到着し、扉を開いたその先には、案の定議題とは、まったく関係無い
母上が在席していた。
あかん、これはマジあかんやつや…。