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第118話 酒呑童子の呪い

ハスターの眷属から逃れた冒険者たちは、平安京廃墟に身を隠しつつ南を目指す。


カカシ

オズの国、エメラルドシティの王。ドロシー第一の従者。

親友のブリキの木こりを探しにカルコサまでやってきた。


ヘンリー・ウェントワース・エイクリー

地球人の民俗学者。脳みそだけになり缶詰に入れられている。

契約によりカカシと旅することを義務付けられている。


緑衣仙女

道教神族、七仙女の末っ子。多くの仲間が逃げ延びた幻夢境に行く方法を探っている。

カルコサにいるという姉、黄衣仙女の行方を追っている。黄衣仙女は平安京より南のラジオ局に勤めているという。


坂田金時

平安時代の武士。昔話の金太郎その人。イタカの巨体に忍び込みカルコサにやって来た。

何か目的がるようだが……。


芥川龍之介

大正時代の文豪。イタカによって連れ去られ、カルコサの奴隷になっていたが金時に助けられた。

 平安京の廃墟の中に隠れ、南を目指す冒険者たち。


 芥川は金時に問いたださずにはいられなかった。

「坂田氏、あなたは鬼のことを頼光(よりみつ)様と呼んでいましたが。

 もしそれが源頼光(みなもとのよりみつ)のことならば、彼はあなたの主人のはず。

 なぜ鬼に?」

 

 先頭に立つ金時は黙したままで先に進むばかりである。


「あなたが、ここに来たのは主人を殺すためですか」

 

 金時は立ち止まり、芥川を睨む。

「芥川先生、それはあなたに話す必要がありますか?」


「必要はある」

 答えたのはカカシだった。

「それぞれがカルコサで目的を果たすためには僕らは協力しなければならない。

 僕は友人のブリキの木こりを探しに来た。緑衣は姉を。

 そして、僕らが脱出する為にはあなたの持っているイタカの情報が必要なんだ。

 あなたの目的のために勝手な行動をとられたら、僕らはあなたを助けられないし脱出もできない。

 結果的に全員が困ることになる」


 金時は深くため息をついた。

「そうだな、あなたの言う通りだ。

 私はここに主人を……、源頼光を殺しに来た。

 それは頼光四天王の一人として責任を果たし償いをするためだ――」

 坂田金時が神族となる前、彼がまだ人間だった頃の話である。

彼は源頼光に従い大江山を拠点とする鬼族の討伐に向かった。


 敵は酒呑童子(しゅてんどうじ)、平安時代中期において日本の鬼族を束ねた首領である。


 非力な人間では鬼一人殺すだけでも、神仏の助けが必要とされた。

その鬼族が徒党を組み占拠する大江山。いかに頼光と四天王が優れた武人であっても攻め落とすことは不可能である。


 計画が必要だった。


 頼光らは山伏(やまぶし)に変装し、大江山の鬼ヶ城に乗り込んだ。

 酒呑童子は彼らを警戒し、都の姫君らを殺しその血肉を振舞った。

四天王たちは理屈をこねてそれを拒否したが、酒呑童子は機嫌を損ね、より警戒心を強めてしまった。


 一部のスキもない。頼光は覚悟を決めなくてはならなかった。

酒呑童子を油断させるために人肉に手を出したのである。


 これにより、頼光は同族食いの(ごう)を背負ってしまった。

鬼の呪いの準備ができあがる。


 次に頼光は神便鬼毒酒(しんぺんきどくしゅ)なる神器を用いた。

これは人間には万能薬となるが、鬼族には猛毒となる痺れ薬である。

 

 頼光は人肉のお礼として神便鬼毒酒を鬼族に振舞った。

効果覿面(こうかてきめん)、油断した鬼たちは次々と倒れていった。


 酒呑童子も毒酒の前に倒れるが、頼光への憎悪を燃やす。

「俺はいかなる敵も正面から打ち破る。ところがお前は卑怯な策略を用いた。

 どちらが鬼かわからぬな」

 

 それが最期の言葉となった。頼光の童子切安綱(どうじぎりやすつな)が酒呑童子の首を斬りおとしたのだ。

ここに酒呑童子の怨念による鬼の呪いが完成したのである。


 鬼の呪いはすぐには効果を発揮しなかったが、年月とともに頼光の身体を蝕んでいった。

彼の死後、その肉体は鬼へと変貌を遂げた。






「毒酒の策だけなら鬼にはならない。それに加えて人肉を食らったために呪いが完成してしまった。

 ……頼光様が鬼になったのは俺たち四天王が至らなかったせいだ。

 だからこそ、俺が四天王を代表し頼光様を討ちにカルコサに来たのだ」


 金時は語るべきことを語り終えたが、芥川にはまだ理解しかねる点があった。

「それで頼光氏が鬼となったことはわかりました。

 しかし、それがなぜカルコサに?」

「茨木童子、大江山の生き残り。遺憾だが、今や頼光様は奴の家来。

 茨木の故郷はルルイエに滅ぼされたという。その復讐のためにカルコサに組しているという話だ」


 ヘンリーはカルコサラジオから得た情報で分析する。

「うぅむ、カルコサはルルイエとの戦争を有利に進めているようだ。

 茨木童子としては満足だろうな」


 ついこの前までイダ=ヤーの下にいた緑衣仙女は複雑な思いで金時たちの話を聞いていた。 


「僕は鬼に対して有効な桃弓を持っている。心臓も破壊したし倒せない相手じゃない。

 だが、それはここにいる全員を危険に晒すことだ」

 カカシは桃矢を握り締めた。

 



 そのとき、平安京各所に設置されたスピーカーからカルコサラジオが大音響で流れ出した。

『いあいあ、はすたー、ウェーイ! 黄衣仙女がお送りするカルコサラジオ緊急放送です。

 カルコサに侵入した悪い人たち、すぐに自首してくださーい。今なら死刑ですみますよー。

 奴隷の皆も見かけたら通報してね。

 オズのカカシ、こいつはその名の通り案山子だから見間違えないね。

 次に、赤い服着てるジャップ、坂田金時ぃ! マサカリと刀で武装してるから要注意!

 最後に黄金の蜂蜜酒の儀式の客人でありながら公務執行妨害をした悪女……、 

 うそ……、あの……、これ言わなくちゃ……』

 高揚した扇動者を演じていた黄衣仙女は声を震わせる。


『台本通り読めやクソアマッ! また時計工場の廃棄ラジウムを飲みたいのか!?』

 別の誰かの怒鳴り声。何かが倒れ割れる音。黄衣仙女の泣き声が響く。

『ごめんなさい! ごめんなさい! 言います! 言わせていただきます!!!

 だからもうラジウムはやめてください、お願いします』

『さっさと読めや!』

『えっと……、公務執行妨害した悪女……、りょ、緑衣仙女……』

『笑顔で読めや!』

『ひっ……、

 緑衣仙女ォ、お、お姉ちゃんがラジウムにっ、し、沈められる前に自首してっ……ね。

 今ならァッ、茨木童子様が羅生門で待ってるよォ』

 黄衣仙女は恐怖の中で無理矢理の笑顔を作る。必然、裏返った声しか出ない。


「もう嫌!」

 緑衣仙女は両手で両耳をふさいだ。 

「こんなお姉様は見ていられない!」

 

 金時は舌打ちする。

「クソッ、緑衣仙女の姉を人質にとるか」

  

「このまま自首するか!?」

 ヘンリーは打つ手なしと判断に迷う。


「いや、放送通りなら、自首したところで全員死刑でしょう。

 となれば黄衣仙女は見捨てて我々が助かるしか……」

 芥川は非常な選択に出ようとする。


「そんなこと! 私一人でも自首します。

 羅生門はどっちですか?」

 緑衣は単身でも羅生門を目指そうとする。


「皆、少し黙ってくれ」

 カカシが低い声を出す。

「ドロシーなら誰かを犠牲にするとか、自分だけ助かろうとか、そういうことは言わない。

 全員助かることを望む」


 ヘンリーはカカシをたしなめる。

「カカシよ、理想論でどうこうなる状況ではないということはわかるだろう。

 苦しい決断をしなければならないときなのだ」


 しかしカカシは動じることなく自身の頭を指差す。

「理想を叶えるのがこのオズの脳みそ。

 大江山の戦いと今のラジオ放送の中にヒントがあった」


 一同はカカシの発言に首をかしげるばかり。

はたして、カカシはいかなる策を用いて、この危機を切り抜けるのか。

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