ボクの幸せ
ボクは今、ある女の子に片思い中。
その子は花が似合って長めの髪はいつもキラキラしてて。ボクのボサボサの髪とは全然違う。
彼女は時々、ボクがよくいる所の近くの木陰で休んでいて。
今も彼女の姿に心臓がドクンドクンってしてる。
――よし。今日こそ話しかけるんだ!
「こ、こんにちは」
距離を取りながら声をかけると、彼女の瞳がゆっくりと開いて顔を向けてくれた。
ボクとは違う色の目が宝石みたい。
「今日もいい天気ですね」
「……そうね」
やった! 声が聞けた! 鈴の音みたいな声がとっても素敵です!
跳びはねたい気持ちを我慢して近づいて行く。
風が運ぶ甘い香りを感じながらボクは幸せを噛みしめた。
「何かご用かしら」
「え、あ、あの……っ」
目を細めて体を動かす様子にボクは体を忙しなく動かすけれど、上手く言葉が見つからない。
どうしよう……!
「ふふ、変なの」
彼女が体を揺らす度にアクセサリーが涼しそうな音を鳴らして、ボクはその音を聞きながらうつむいてしまう。
土の上で立ち止まる虫達が見上げて来るけど、話しかける余裕はないや。
せっかく話せたのに格好悪いな……。
「――明日もきっと晴れるわ」
「え……?」
恐る恐る顔を上げると、彼女は顔を上に向けて青い空を見ているようだった。
さわりさわりと風がボク達を撫でて通り過ぎて行く。
彼女は顔をまたボクに向けて、目を弓なりにして。
「だから、また会いましょう?」
「う、うん……!」
「それじゃあ」
綺麗な背中が見えなくなるまでボクはじっと見つめた。
明日も会える……!
「やったー!」
今度こそ跳びはねる。
辺りを跳ねまわっていると聞き慣れた足音が近くに聞こえて駆け寄った。
「いなくなったと思ったらここにいたのか」
体をボクの高さに合わせてくれて、大きな手がボクの頭をグリグリと撫でてくれる。
ボクは頭をすり寄せた。
少しかさかさしてるけど、大切で大好きな人のあったかい手。
「丁度白い毛並みのコとすれ違ったけど仲いいのか?」
笑顔で聞いてくる顔にもすり寄ってボクは答える。
また明日も会うんだよって。
「そうかそうか。よかったな」
ご主人様はすごい。
ボクが嬉しい時も悲しい時も察してくれる。
「にゃあ、にゃあー!」
「でも、どうして体に泥がついてるんだ?」
「みゃあ……」
ごめんなさい。
それは跳びはねた上に気分をよくして地面を転がったせいなんだ……。
「ん? 怒ってないからそんな声出すなって。それじゃ、帰ったら綺麗にしてやるからなー」
ご主人様はボクを両手で抱き上げて歩き出す。
まだ眠りそうにないお日様を見上げながらボクは一声。
明日も彼女に会えるし、ご主人様と一緒にいられる。
ボクはすごく幸せです!