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確率都市東京編:ある日ある朝突然に。  作者: 中崎実
第4章

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第四章【5】

 その日はなんとなく、ばたばたした気分で始まった。

 相田さんの家のでお世話になった人たちに挨拶して、研究所に移動。

 晴香の移動には、看護師の和田さんが付き添ってくれた。


 晴香はまだ半分くらい放心状態だけど、動かしていいんだろうか。


 斎藤先生は移動に反対してたみたいだけど、研究所で晴香を預かってくれたのは軍医さんではなくて、監視局のお医者さんだと言う女の人だった。

 男の人じゃないので、斎藤先生や和田さんもほっとしていた。


 今の晴香を、男の人に預けるのは無理。女同士のほうがいいから、という配慮でこうなった、とその女医さんは説明してくれた。


「じゃあ、晴香は入院?」

 そう聞いたら、

「彼女の時間で、一ヶ月くらいはね」

 一見すると日本人に見える女医さんは(でも、名前を聞いたらカタカナ名前だった)、そう教えてくれた。

 それからひそひそ声になって、

「ああ、それからね。彼女はこっちで保護して治療するんだけど、他の人に聞かれたら、事情聴取前の処置があるから入院させられた、って言っておいてね」

 と、付け足した。


 それ、本当は被害者として扱ってくれる、って意味だろうか。


「そういう事ね」

 確認してみたら、女医さんはそう言って、にこっと笑った。

「ほら、監視局もお役所でしょ?五月蝿い人もいるから、建前って重要なのよ」

 事情聴取って言う言葉は、建前のためのものだって。


 なんだか面倒くさい話っぽいけど、それって。


「えっと、五月蝿くない人もいて、保護してくれるって事ですか?」

「そんなところね」

 本当は、有無を言わさず事情聴取のあと、記憶抹消処理になる。そう説明してくれた女医さんは、

「それだと後遺症が残ることもあるから、監視局の痕跡抹消のために治療が必要、っていうのが表向きの申請理由よ」

 と言ってから、くすくす笑った。

「なにか、あるんですか?」


 なんかものすごく楽しそうなんですけど。


「担当者の本音は全然別なのよね。気の毒だからなんとか助けてやってくれ、ってところでしょ」

 この件の担当者って、雅之氏と横田さんの二人。

 そのどっちかが頼んだって事になるんだろうか。

「その通りよ」

「雅之氏が頼んでくれたんですね」

 微妙に態度とか冷たかったけど、茜の友達だし、やっぱり気にしてくれたんだ。

 でも、そこまで笑わなくていいと思うんですけど。

 と思ってたら、女医さんは笑顔で首を横に振った。

「……え?って、まさか」


 残る担当者って、一人しかいないですけど??


「そのまさかよ」

「えーうそっ、ありえないしっ」


 あのいっつも怖い顔の横田さんが!?


「みんな、最初はこういう反応するのよねー」

 と女医さんは言ってたけど、しない方がおかしいと思います。

 だって、あの横田さんだし。

 あたしがびっくりしてたら、女医さんは

「サカエをからかいたかったら、絶好のネタだから。覚えておくと良いかもね」

 と、これ以上は無理ってくらい良い笑顔で言った。


 ……なんか微妙に、横田さんが気の毒になったかもしれない。


 気が付いたら、途中からその場に来てたらしい雅之氏が、離れたところで苦笑していた。

「サーラ、少しは手加減してやってくれないかなあ」

「誤解を解いてるだけよ。そういえば、サカエはどこ?」

「君が来ると聞いて、仕事に逃げてたねえ」

「相変わらずヘタレなんだから」

「いじられると判ってて、餌食になりに来るわけないって」


 とりあえず、聞かなかったことにするのが正しいような気がする。


「冗談は置くとして。フィルティサーラ医務官に被疑者一名をお預けします」

「被疑者一名、保護および治療のためお預かりします」

 女医さんと雅之氏が敬礼して、そうお互いに言葉を交わした。


 でもこの言葉って……建前がどっか行っちゃってるんじゃないでしょーか?


 そう言ったら、雅之氏はにやっと笑って

「さて、二人もお帰りの時間だ」

 そう話を逸らした。

「亜紀君は今回も、なかなかスリルにあふれた滞在になったね」


 スリルあり過ぎだったと思うんですけど?


「でも結局、事件とかって解決したんですか?」

 蛇男は逮捕されたって事だったけど、それだけで終わったようにも思えないし。

「難しいところだが、まあ目鼻はついたな」

 説明はそれだけだった。

 たぶん、まだ教えられないんだろう。そんな感じのトボケ方だった。

 だから今はそれ以上、突っ込んだ事は聞かない事にした。

 雅之氏は茜のお兄さんだから、いつでも話聞けるだろうし。

「それじゃ、気をつけて帰ってくださいね」

 和田さんが手を振ってくれ、雅之氏が機械を操作する。



 また落っこちるような感覚がして、あたしは自分のいるべき場所に戻ってきた。

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