あまあま
目の前で行われたセクハラ現場にヒヤヒヤさせられながらもなんとか事なきを得たウィッキスはポン!と手を叩き今から言う…言うんだ、言わなきゃならん言わなきゃ…「もう良いからさっさと言うんじゃ」(荒業ヤメロォオオオ!!これ地の文!本来見えないから!)
「…よし!とりあえずワシはアルコちゃんと実家に帰ります、やらなきゃダメな仕事が溜まってるし」
この時後ろで控えていたアルコは分かってるならなんで普段からしっかりやらないんだ、このバカは…!!と血圧を上昇させていた、その気迫は若年ながらも鬼気迫るものがあった
「あ、そう
じゃあまた進展があったら連絡するわ」
「随分あっさり!」
突然の帰宅宣言に脇目もふらず、あげく手まで振る兄にとうとうリーヴァもツッコむ
「では私はお留守番ですね…
寂しいです」
明らか欠片も思ってない台詞を吐く精霊に対し、近年稀に見る上機嫌な顔でザハルは流した
「良いのよ良いのよ空気を読んでのことだから許すわ
、ふふ!じゃあ行ってくるわね~」
「…行ってきます、お土産買ってくるから」
「はい、いってらっしゃいませ
期待して待ってますね」
いったい何をお土産にするのか知らないが、先んずは最愛の弟を溺愛しすぎる主と自覚のない幼神が面倒事をテイクアウトしてこないことを祈り、折角自分だけとなったのだからお茶でもしようと早速取りかかるフラードであった
外に出ると、じわりと肌を苛む熱気がやって来た
この前の時と違い今の時間帯は、ゲートから太陽街に霧散するよにサンサンと日の光が降り注ぎ、ここが地下にある街と思えない明るく、常夏の一見避暑地のような街並みにリーヴァの好奇心は疼く
「わぁ…!スゴい活気があるね兄様!」
「そうねぇ…ふふ、楽しい?」
「うん!」
さながらはじめての海外旅行に来た子どもで、念のためはぐれぬように手を繋ぐザハルだが、その心は下心でヌットヌトである
けれど顔には出さず、いかにも微笑ましいといった眼差しを絞り出すザハル、敵ながら天晴れである(敵対してたのかよ)
「あ、兄様あれなに?」
そうリーヴァが指を指したのは大通りから少し先に見える広場で転々と屋台が立ち並ぶ太陽街名物、月に数回開催されるマーケットである
前も含めて目新しいものに、普段より口数も素に近づき増えていく
「あら、今日マーケットの日だったの…ラッキーよ、リーヴァここのマーケットは有名でねぇ…、珍しいものが出てくるし掘り出し物が見つかるって評判なのよぉ、見てきましょう!」
「うん、見たい!行こう兄様、まずあの赤いもの!」
「あー…あれはね…」
まぁ…そうよねぇ、いくら思慮深いリーヴァでも生まれて間もない幼神、はじめての物に興味を示さないわけ無い…気をとられて拐われるかもしれないんだからしっかりオレが護んなきゃな(飛躍し過ぎだろ)
そうはじめてのマーケットの品々と活気つく周りの雰囲気に目を輝かせる可愛い弟の手をやわやわと揉みまだ見ぬ誘拐犯に睨みをきかせる、よし撤回しよう、アルコなんてまだまだ序の口だった、見たこともないヤツによくもそこまで憎悪抱けるものである恐るべしザハル
「へぇー、じゃあこれはっ?」
「ふふっ急がなくても、逃げやしないからゆっくり歩きましょ?転んだら大変」
「…流石に転びはしないよ俺」
ーー 兄心+α ーー
(おい、なんだあそこの空気…)
(知らんが、甘いな空気)
(……ほっとけザハルだぞ)
(そうだな…触らぬザハルに祟りなし、だな)
外出出来たけど、説明できない…!!
いや、次こそ…!!(;´д`)