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茨を伝って





その頃リーヴァのいる室では…



そこにはもうアリアルアの見た影は無く、代わりにカーペット

一部分が変色して濡れ、側面のガラスを深緑の茨が彩っていた



グラッ…ビシィ!…ガッシャァアン!!




「…ん?なんだこれ」



この時やっとリーヴァは思考からプカリと浮かび上がった

もうちょい沈んでいれば怖い思いはしなかったのだが…




「え、え?…なに?怪奇現象?!」


正確には花神ザハル現象である



ガシッ!!



「手?!」



リーヴァは自動で開いた扉の敷居口に食いつくように出てきた手を見た


もしここでリーヴァが落ち着いていたならザハルの手だと気付いただろうが…

今、彼は所謂パニックに陥っていた



「あ、…兄様助けっ!」


涙目で逃げ腰になる、けれど何故か目を逸らせない状況に兄を呼ぶ…そして(なんというホラー)


「…リィイイーヴァァァア!!大丈夫か?!大丈夫か?!ケガは?!なにもされてない?!怖かったよな?!」



「兄様ァア!!怖かった!!来てくれてありがとう!!」



恐怖の原因である兄にお礼を言い抱きついてしまうほど



そうしてザハルは難なくリーヴァを受けとめさっきまでの恐怖で震え喋れそうもない弟の体を誰も邪魔できないであろう空中で停止した室の中まさぐっていた(だっ誰か止めろぉおお!!)


「…っ?!」


「はいそのままよ~確認するだけだからね~?」


ん~…なんて滑らかな肌~(はぁと)と内心鼻を伸ばしているなんて思えないほど真剣な顔で手を動かす…プロである(何のだよ!)



「はい、異常ないわ!ふふふふぅ~!」


「…ぅん…」


「あら…?リーヴァもしかして眠い?」


コク…リと緩慢に頷く様はまさに幼子である、色々あり疲れが溜まっていたのであろう


「眠いのね~!可愛いわぁ!!よちよち…オレが部屋までだっこしてやるからな~?しっかり掴まってろよ?」


後半から狼に変貌したザハルだが、今は室からの脱出を優先するようで事を起こそうとはしなかった(ホッ)


そうして眠たげなリーヴァに首に腕を回させると両腕で至極大切そうにプリンセスホールドで持ち上げ…茨の階段で降りようとすると停止した



「ん…?これは…」



室のカーペットの隅が変色しているのを見たザハルが試しに足で踏んでみる


するとビチャッと液体で湿っているのを確認できた



「ウォレス…?」


「…んぅ…」


「あ、ごめんなさいね…眠いわよね?さぁお部屋に戻りましょうね~?」


幼児ことばであやすとリーヴァは眠いなかなんとか返事を返した…早く寝たい、寝て良いよね?もう寝るよ?!…うん寝る


「…んぅむ!…」


「可愛っ!流石オレのリーヴァ!犯罪レベルで可愛い…!」



階段を降りて行くと先に降りていたアリアルアとプロクスがいて、眠るリーヴァを見てアリアルアが飛びついた


「リーヴァ?!

…何かあったんですか?!」


「あるわけないでしょ!

私がさせないわよそんなこと!寝てるだけだから安心なさい」


「そうですか…良かった」


「リーヴァが無事だったのは…アリアルア、貴方のお陰よ

ありがとう」


「そ、そんなことは…僕は何も…」


「私がリーヴァの危機に気付けたのは貴方の強い神力が警告してくれたからよ?本当に感謝してる、リーヴァもきっとそうよ」


ザハルは腕の中眠るまだ幼い己の最愛に目線をやる


「そうだぜ?

アリアルアの神力はキラキラしてて目立つし、今回のは特別強かったから直ぐに駆けつけられたんだよなー」


「…結局、ザハルが守ったんですから変わりませんよ」


「んなことねぇわ!すげーじゃん!ザハルが来れたのはお前が教えたからなんだぞ?

しかも俺より兄貴としてリーヴァを守ってよ、ちゃんと兄貴しちまってるし…

…あーこれから俺も兄貴もしてちゃんとリーヴァを守ってるけどな?」


「フッ!…これからも僕が守りますから結構ですよ堕犬」


「突き返された!しかも要らねぇオマケ付き!」



そんな三人は今度こそ部屋へと足を進めたのであった…



部屋に着くと、ザハルがそっとリーヴァを大柄なプロクスが三人寝ても大丈夫そうな大きなベットへ寝かせた


「んむぅ…」


ころんっという効果音が一番似合うであろう弟に一同はほんわか顔を緩ませて、近くの向い合わせのソファに腰を掛けた



切り出したのはアリアルアだった


「僕は残念ながら、観賞植物の影からちらりとしか見えてませんが恐らく…」


「…ウォレスの所のヤツでしょ?」


「はい…神力の歪みで正確な色は確認できませんでしたが、間違いありません…」


「私も、室のカーペットの隅が濡れていたのを確認したわ…あれはウォレスよ」


「おいおい…!

なんだってアイツん所のヤツがリーヴァに手を出さなきゃなんねぇんだよ?!」


「僕だって分かりませんよ!けれど…!あんな悪意に歪んだ神力は、初めてです…!!」




思い出したのか、震えを抑えられずに腕を掴むアリアルア


そんな彼の前に、カチャンと何かを置いた音が聞こえた…テーブルを見ると湯気のたった紅茶が三人分置かれていたフラードだ


「御二人とも落ち着きください、私は部屋に先におりましゆえ何も解りかねますがこのまま大きな声で話されてますとリーヴァ様が起きられてしますことは解りますよ?」


リーヴァに毛布を掛けて、こちらをニコリと見るが何故だろう…目が笑っていない為か「リーヴァ様が起きちまうだろがぁ!あ"ん?!」と聞こえた幻聴にしておくことにしよう



「そうね、焦ったって何にも解決しやしないわ…だから落ち着きましょ?」


この神あってあの精霊である目が同じだ


いつのまに移動したのか真っ正面にいたはずのザハルはリーヴァの眠るベットに腰掛けていた


その振動で軽く揺れるベットの中ぐずる様に唸る


「ん~…むぅ…にゅん」



疲れたのだろう随分と深い眠りに入っているようで兄の変態的な手付きにも起きる気配がない


「癒されますね…」


「俺には大物にも見えるが…癒される」



主人公不在の(抹殺)会議にほんわかとした空気が流れた



「主、それでどうなさいますか?」


「あ?…おま、そりゃどういう…」


「どうもこうも無いわよ…リーヴァに手ぇ出したんだからなぁ…証拠が出しだい殺るぞ」


「…あの濡れていたカーペットは証拠にならないんですか?」


「あれじゃ…状況証拠扱いで責めきれないわ、それに今あるかどうか…殺るなら徹底的に、それこそ動かぬ証拠を獲ってきてやるわ…!!」


「狩るのか?ウォレスを狩るのか?それだと流血沙汰になるぞ?!」


「私ははりつけなど好ましいと思います」


「好ましくねぇよ!」


さらりと流血沙汰を推す意見を会議にて提案するフラード

このまま混沌とした会議がさらに悪化するのは目に見えていた



「…んーむぅ…」


それを知らぬのは眠るリーヴァのみ





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