陽気なおにぃさん
並んでみると客があまりいないのが手伝ってかスルスルと進みもう前の方が案内されていく、…そろそろかな?
するとどこからか、一人の男性店員が現れた(どこから?!)
「大変お待たせいたしました、二名様でよろしいでしょうか?」
「えぇ、でもテイクアウトだから席は結構よ」
「承知致しました、それではカウンター前までご案内させていただきます」
「ありがとう」
俺も言わなくては…!先程から会話にまったく参加出来ていないので、お礼位は言わせてもらいたい
「…ありがとうございます」
「…いえ、わざわざご丁寧に…
こちらこそありがとうございます
では、参りましょうか」
そうにっこりと笑顔で店員さんが案内してくれる…じょ、上級者だぁ!これがコミュニケーションの上級者か…尊敬します…!
内装は南国風味で、店内には明るいサンバのような曲がかかって…店員さんも客も笑顔でとても活気のあるお店だ
今日は運が良かったみたいだ…美味しそうな匂いもするし人気店みたい
「ところで兄様…、あの店員さんって何の神なの?」
「…あら、リーヴァ
ここの店員は全員、食神の遣属精霊よ?…まぁ、あの感じからすると彼、精霊の中でも結構年食ってると思うけどね
ほら、彼の姿をよく見てみて?」
俺達を案内してくれる背中を見てみる…ん?よく見ると僅かに黄色の濃い霧みたいなのが店員さんから出てる?
「黄色の…濃い霧?」
「見えたみたいね、あれは神力よ」
「神力…神のちから?
なんで?だって店員さんは…」
「それは彼がある程度力のある遣属精霊だからよ
遣属精霊って言うのはね…神の神力が増加するとその時の力の飛沫によって生まれるの…そして、その神力は年を重ねるごとに濃くなっていくのよ」
「濃ければ濃いほど力が強いってことなの?」
「そうよ、神力は濃くて大きければ強いとされているの」
いつにもなく真面目な兄様に自然と背筋が伸びる思いだ
「…じゃあ俺は…どんな感じに見える?」
兄様の感想を聞いてみたくなり、ねだってみる
「リーヴァ?そうねぇ…
簡単には言いにくいわねぇ…
んーー…簡単に言うと良い色し過ぎて食べたい位、の大きな神力してるわ」
「(食べたい…?)つまり、凄く良いっこと?」
「そうよ!あ、色はキレイな翡翠色にグラデーションがかかってるわよ!」
「グラデーション…」
神力話に花を咲かせ、周りの客が「食べたい?!」「流したぞ!あいつ大物だ!」「あ、ヤバイヤバイ!ザハルの奴こっち睨んでんぞぉぉ!」など驚き怯えこちらを凝視して騒いでいるのに気付かずにいると(鈍感!てか、逆にスゲーよ!)
いつのまにか店員さんはいなくなっていてカウンターについていて、お礼言いそびれてしまい少しへこむ俺…
しかしカウンターにいたコック服を身に纏った色黒の青年が元気よく、そりゃあ身を乗り出す勢いで笑顔で挨拶してくれたことで気が逸れる
「いらっしゃいませ!
……お!オメさ久しぶりだっぺなぁ、ザハル!近頃、てんっで顔見ねぇからオラ心配してたんだっぺさ!!」
「えぇ、久しぶり
相変わらず厚っ苦しいわねイグレット」
兄様が煙を払うような手で扇ぐ仕草をし、俺を後ろへ…だがそれも遅く
「んん??…おぉ!美人さんだっぺなぁ!オラ、イグレットつって食神やらせてもらってんだ食べもんのことなら何でも任せてけろ!」
兄様の嫌みをもののみごとにスルーした大物な青年のオレンジの瞳が兄様から俺へと移り好奇心に光る…神見知りなのでお手柔らかにお願いしますマジで
「…どうも、油神をしている
リーヴァ、です」
俺がそう言うと何故かイグレット、さんの目が光った…てかきらめく
「油神ってリーヴァオメェ末っ子け?!…おおおお!かっわえぇはなぁ!
!そうだ、今日はオラのおごりにすっぺ!」
太陽の如く眩しい笑顔が降り注がれる…優しい方だな
この【神創国】ではお金という概念がないらしくはじめてパパから聞いたときは流石神の国…と感心し驚いたものだ、その代わりに後払いでも良いが自らの創り出したモノを物々交換することにより、売り買いが成立する
ので前回、兄様にもただで貰った俺は今のところ正式な売り買いをしていない…あれ?もしかして俺、ヒモ?ヒモなの?
けれどはじめて会ったのに悪いという気持ちと情けない気持ちがもたげ、兄様のシャツの端を掴みながらイグレットさんに尋ねる
「…良いんですか?」
「ええだ!ええだ!遠慮すんな!子どもはなぁ我が儘くれぇ言わなきゃだめだぁ!…それにせっかく可愛い顔してんだからオラにも見してけれ?」
リクエスト通りに兄様の背中から顔を覗かせ、何気無しに兄様を伺う…ん?めっちゃ良い笑顔なんだけど、怒らせるとこあった?なんかしたっけ?
誰かそこの俺の脳内リモコン取ってくれ!リプレイするから!!
「奢るって言ってるんだから奢らしちゃいなさいな
…取り敢えず、ステーキ串100本で」
にっこりと後押ししてくれた、というか無茶ぶりをした兄様
「はっはっはっ!相変わらずおもしれーなぁ!ザハルはぁ!
…ぷプッ!流石にオラの店が終わっちまうだよ、それは…ブフっ!
せめて、10本で勘弁してけれ!」
「あはははー…
こっちはあんまり色々と面白くねーから言ったんだかな?
まぁ、それでいいわ…頼んだ」
「んー?そぉか?
オメェさのツボが分からねーな!
よし!じゃあ、ちゃちゃっと焼いやっからな!」
本当に何でだろうね
周りの客に謝りたくなってきたよ…この天然VSヤーさんの戦いは意味が通じてんのか通じて無いのかわかんねーわ…わかりたくないけどね!
恐ろしくなり視界を水面のごとく揺らしながら斜め横へと現実逃避してジュワー!という音と美味しそうな匂いに酔いしれていた俺は
(イグレット…オレのリーヴァに手ぇ出すんじゃねーぞ?ああ"ん?)
なんて兄様がイグレットさんに目で
(ん?…そんなに睨んで…睨むほど腹へってんのけ、ザハル?)
と意味の通じること無い語り合いが開催されているなんて露とも気が付くことが出来なかった
ーー陽気なおにぃさん(VS兄様)ーー
(あれ?…ザハル?…リーヴァ?!)
(…二人とも、いったいどこへ行ったんですかぁあ?!)
(さけばないでくれ!アリアルア恥ずかしい!!)
訛りがあまり分からない…!!orz
それなのに冒険してしまう作者は愚かなのでしょうか?(´・ω・`)ショボーン