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道化(仮)2

作者: 花澤文化

これは道化(仮)の続きです。


さきにそちらをご覧ください。

「うわぁ・・・・・・・・」

 テントのなかに入るとさらにこのサーカス団の人気さがわかった。

 野球のスタジアムの中、サッカーのスタジアムの中よりもすごい熱気ですごい人数だった。

「本当にこれ『幻想サーカス』なのか?見間違いの可能性とか・・・」

 そこまで思考を巡らせた瞬間、バッとテント内の電気が消え、薄暗くなる。

 そしてサーカスが行われるでかいステージの中に1人の人間が立った。

 人間?

 いや、あれは・・・。

「人間が発光してる・・・!?」

 青白く人間が発光していた。

 いや、もうそれは人間なんかじゃないのかもしれない。

 そんな僕の不安や驚きとは裏腹にまわりの観客がかなり盛り上がっている。

 驚いてはいるのかもしれないが、それよりもこれが見たかったとばかりに叫び倒していた。

「みなさん、ごきげんよう。『びっくりボックス』へようこそ。私は宇宙人です、以後お見知りおきを。さて、今日は楽しんでいってくださいね」

 うわぁあああああああ!!!とまた観客が盛り上がる。

 なんか場違いなんじゃないかという気がしてきた。

 なんというかみんなが見ているテレビを見忘れて翌日みんなの話についていけなくなってしまったような感じ。

 そして宇宙人と名乗った女の子は小さくお辞儀をする。

 というかあれ、どうみても中学生じゃないか?

 そもそも宇宙人ってなんだよ・・・。

 自称宇宙人の女の子がステージから降りる。

 するとその後に出てきたのは。

「ペガサス・・・」

 羽が生え、角のついた馬がそこにいた。

 白馬。

 ペガサス。

 それは作り物の感じがしない、完璧なペガサスそのものだった。

「発光人間といい、ペガサスといいどういう仕掛けなんだ・・・?」

「ん、なんだ、兄ちゃん。このサーカス団は初めてかい?」

 と混乱している僕に話しかけてきたのはおじさん・・・ではなくおじさん口調の小さな女の子だった。

「・・・・・・・お嬢ちゃん、これは15歳以上じゃないと見れないんだよ。こわいこわいなものがたくさんあるんだから」

「ちっ、これだから嫌なんだ、ここに来るのは。あたしはなぁ、こんな身なりでも15歳こえてんだよ」

「え・・・?」

 どうみても小学生だろう。

 そんな考えを読み取ったのかすごく嫌な顔をしながら免許証を見せてくる。

「うわ・・・23歳・・・」

「うわってどういう意味だ、兄ちゃん」

 僕よりも年上だった。

「あたしの年齢はどうでもいい。たとえ毎回、係員にここはお嬢ちゃん入れないんだよーって優しく言われようがあたしはかまわない」

 僕が泣きそうだ。

「でも、君可愛いし、その肩ぐらいまでの髪も似合ってる」

「一丁前にナンパかい?まぁ、あたしは悪い気しないがはたから見ればただのロリコンだぜ」

「君がそれを言ったらおしまいな気がするよ」

 で、と僕は相手に話を促す。

「あぁ、そうだったな。お前『びっくりボックス』は初めてかい?」

「えぇ、と・・・うん」

「ここはな種も仕掛けもない、びっくり人間どもの巣窟だ。宇宙人やらペガサス、神様がいることなんて日常茶飯事なんだよ」

「はぁ・・・」

「信じてねぇな。まぁ、いいさ。お前はこのサーカスを楽しめばそれでいい」

「楽しむ・・・か」

「ん?」

「実は僕、ピエロなんだ」

 そう言いながら僕はカバンをあさり、ピエロライセンスを見せる。

「・・・・・・ほぉ。兄ちゃん、ピエロだったのか」

「まぁ。だから楽しむというより職探しの方に傾いちゃうかなぁ・・・やっぱり」

「・・・・・」

「でもここのサーカスほんとすごいね」

 さっきのペガサスが空中に浮かんだ火の輪を空を飛びながらくぐっている。

 そしてその羽の動きで通った後の火の輪を消し、小さな火の粉を纏いながら飛んでいる。

 その光景はまさに幻想。

 幻想サーカスたる所以だった。

 先ほどの宇宙人とよばれた発光少女は光ながらジャグリングをしている。

 僕もピエロのはしくれ。さすがにジャグリングぐらいでは驚かないが・・・。

「ジャグリングしているボールの方も発光してる・・・」

 よく考えればそちらの方は中に何かを仕込むことによって可能なことではあるが、もうそれもすべて種も仕掛けもないような気がしてきた。

 これが幻想サーカス。

 これがびっくりボックス。

 そして後ろの方からこそこそと出てくる人物。

 僕と同い年ぐらいの子だろうか。

 その女の子の姿は。

「ピエロ・・・!!」

 道化。

 ピエロだった。

 しかし観客は。

「神様ぁあああああああ!!!」

 と叫んでいる。

 神様・・・?

 ・・・・・・急に宗教めいてきたなぁ・・・・・。

「これはどういうこと?このサーカスではピエロは神様扱いなのか?」

「いいや、違うよ。ただあいつは神なだけだ。あたしから言わせればただのガキなんだがな」

 神様とガキ呼ばわりする女の子っていうのもなんだかシュールだなぁ。

 と、そんなことよりも。

 僕が見るべきなのはあの女の子。同じピエロとして注目しないわけにはいかない。

 その女の子がまずしたことは玉乗りだ。

 これはピエロライセンスをとるにあたって最低限度、すなわちピエロライセンスをとるための試験に参加できるかどうかを決める程度の技。

 すなわちピエロなら誰でもできることだ。

 そして次にしたことはジャグリングである。

 お手玉のような玉を4つ取り出して次々と回していくその様はなるほど確かに綺麗ではあるが神様などという名前がつくのは少し大仰、大袈裟ではなかろうか。

「兄ちゃん、不思議そうな顔をしているな。玉乗りやジャグリングは誰でもできるみたいな顔をしているが、ここからだぜ。あいつのすごいところは」

 と小さい23歳が言ったところで気付く。

 いや、本当はもっと前に気付けてなければおかしかった事実に。

 彼女は・・・20個の玉をジャグリングしている。それも大小様々な玉を。

 手がいっぱいに見えるとか、そんなレベルじゃない。速すぎて玉が一個の輪になったかのような錯覚を覚える。

「20個の・・・ジャグリング・・・!?」

「へぇ、兄ちゃん。目がいいな。普通この距離だとあいつが持っている玉の数すら分からないはずなんだがな。同族というか同属というか同職ならではっていうことか」

「これが・・・神様」

 人間技じゃないことを軽々とやってのけるその姿はまさに神様。

 まわりの発光人間やペガサスの火の粉と相まってさらに幻想らしさが際立っている。

 サーカスとは1人ではできないものという教訓めいたことを改めて教えられる光景である。

 そう、たぶん彼女は神様なんじゃない。まわりの人間に神様にさせられているのだ。

 それは本当に宗教のようで、でも目を離せない。

「すごい・・・すごいよ、このサーカス」

「ほう・・・気に入ったかい?」

「気に入ったもなにも楽しそう」

「楽しそう?」

「自分がこの中に入ったらっていうことだよ。絶対楽しいんだろうなぁ・・・」

 観客より何よりサーカス団員が楽しんでいる。

 理想の職場だ。

「そうか・・・サーカス途中だがな興味があるなら今からテントの裏に来い」

「え?」

「兄ちゃん、入りたいんだろ」

「いや、だって君は・・・なんなの?」

「あたしは23歳。このサーカス『びっくりボックス』の団長だ。お前に入団のチャンスをやる。だからついて来い」

「え?えぇええええええええええええ!?」

 こうして僕はこのサーカス団の入団試験を受けることになったのだった。

本当は1話だけの予定だったのですが、時間稼ぎもとい、考えの変更によって2話も投稿しました。


ただでさえなのに余計混乱させてしまいました、申し訳ありません。


一応これはお試し企画みたいなものなので短編小説かといわれると少し違うのですが読んでいただけたら幸いです。


ではまた。

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