表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

Poetic Fairy tail

-birth-

作者: 栗栖ひよ子

 愛と憎しみ 喜びと悲しみ 希望と絶望 幸福と不幸

 すべてに境はありません

 すべては 鏡なのです


「鏡なのよ」

 ころころと鈴を転がすような笑い声がふたつ、暗闇に響く。

「そう、境なんてないのよ」

 暗闇だと思っていると、空間にいくつもの炎がぼうっと灯った。

 天井もない。壁もない。床もない。橙色の炎だけがいくつも浮遊するその空間に、ふたりの少女が座っていた。

 瓜二つの少女はその瞳の色だけが違う。黄金の瞳と緋色の瞳は、橙色の炎を移すと見分けがつかなくなる。

 ぽーん、ぽーん。手から手へと楽しげに跳ねる、瞳と同じ色の赤いお手玉と黄色いお手玉。

 ぽーん、ぽーん。跳ねるたびに色があいまいになる。どちらが赤で、どちらが黄色だったか。

「わたしはあなた」

「あなたはわたし」

 ここは世界の隙間。すべてが終わる場所で生まれる場所。

「あ、また誰かが落ちたわ」

「鏡の隙間に落ちたわ」

 ぱりーん、と鏡の割れるような音が、無音の空間に響く。

「戻れるかしら」

「戻れないかしら」

 ここは境界が見えなくなった人間の肉体が落ちる場所。隙間の見えるようになった人間の魂が堕ちる場所。


 善と悪 光と闇 生と死 正気と狂気

 すべてに境はありません

 すべては 鏡なのです


「今日のお客様は、だぁれ?」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 活報にもあった通り、とても詩的な趣のある作品だと思いました。一つ一つのフレーズがイメージを呼び起こさせて、会話の不思議な趣や、鏡を利用した世界観はどこか恐ろしくもあり、ミステリアスでもあり…
2011/07/11 16:42 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ