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波濤を越えて (21) 船出 (最終回)
焼け焦げた姿で波止場に現れた少年を、オルムスは驚きながらも受け入れた。
「わかった。船長には俺が話をつけてやる。早く乗り込め」
背中を押すと、『いたた』とティンラッドは悲鳴を上げた。
「お前、これ、ひどい火傷だぞ」
「服が燃えていたらしいからなあ」
「他人事みたいに言うな。ああもう、仕方ねえな。出港したら神官に治療してもらえ」
オルムスはため息をついた。
頭上高くに輝く白い月を、少年は見上げる。その顔を改めて眺めたオルムスは、
「何だ。ティンラッド、泣いたのか。ひどい顔をしているぞ」
とたずねた。
「うん。ちょっと泣いた」
「女に振られでもしたのか」
「そうだな。そんな感じだ。一緒に旅に出ようと言ったら断られた」
少年は笑おうとしたが、ため息になった。
「女のひとは難しいな。すぐに言うことが変わるし、俺にはよくわからない」
「わかったようなことを。まあ、仕事の当ても金もないガキに簡単についてくる女なんかいないってことだな」
オルムスは笑った。
「さ、行くぞ。もう潮がだいぶ上がって来た」
「うん」
生まれて育った町の景色を目に焼き付けるように、もう一度眺める。
そして、少年は初めて船に乗った。
(終)




