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第五十話 神話

私とかなこは遅めの朝食を済ませた後、エステル様に連れられて屋敷内を案内してもらっている。そんなことしてもらってる場合ではないのでは?っと言ったがエステル様は笑ってサラッと言った。

「せっかく新しい土地に来たのに、何も見ず、何も知らずに過ごすなんてもったいないわ!人生楽しんだもん勝ちよ!」

私とかなこはその勢いに呑まれてそのまま着いてきてしまった。

屋敷内は思っていたより広く、部屋がいくつもあって迷子になりそうだった。フェルス王国の城も広かったけど、私たちが過ごしていたのはほんの一部だったからそこまで気にしていなかった。

私たちの客間、領主様達それぞれの部屋、食堂、図書室、そして執事長をはじめ使用人達も同じ屋敷で過ごしているらしくその人達それぞれの部屋もある。それに今朝の中庭みたいな所の東屋(あずまや)はやはりお墓らしい。先祖代々が眠っている神聖な場所。庭木の手入れもそのお墓もライネル様が管理しているらしい。聖職者としての務めだそうだ。

説明をしてくれるエステル様に私は聞いてみた。

「エステル様。聖職者って…なんですか?」

この世界に来てから初めて聞いた役職だ。かなこも知らないようだった。

「聖職者っていうのは…主に治癒魔法を使って病気や怪我を癒す役職の人。それにこの世界の創造神様に仕える存在で、創造神様に代わって悩みや相談を聞いたりすることもあるわね。この帝国には聖都があって、立派な聖職者達が集まって色んな研究とかしてるのよ。その聖都で認められないと聖職者とは名乗れないの。だからライネルは聖都に行って色々勉強してきたみたい!凄い子よね〜。」

エステル様はライネル様を誇らしげに褒めている。お父様が亡くなってから聖職者になったと聞いた…つまりそれから色々勉強したということか。相当苦労したのだろうな。

今度はかなこがエステル様に聞く。

「ライネル様は魔術師でもありますよね?ハーフエルフだからやっぱり魔法が得意なんですか?」

「そうね。エルフはもちろんハーフエルフも魔法は得意よ。5属性使える者は多いわ。それに長命だから魔法の研究に費やす時間も長い。必然的に魔術師になるわよね。ちなみにあたしも魔術師よ!昔は人間と暮らすこと自体難しかったから森でひっそり暮らしてたわ。でも今はハーフエルフであることを隠さなくても出歩けるし、魔法も使い放題!だから好き勝手遊び歩いてるわ〜。」

エステル様の言葉に引っかかるところがあった。

長命…?森でひっそり…?

同じことを思ったらしくかなこが聞いた。

「ハーフエルフの寿命ってどのくらいなんですか?森で暮らしてたっていうのは奴隷制度があったからですか?」

エステル様は目をぱちくりさせて言った。

「あんた達…エルフのことほとんど知らない?」

私とかなこは顔を見合せてから頷いた。するとエステル様はニコリとして図書室に連れてきてくれた。そして私たちに1冊の本を渡してきた。

「創造神様がどうやってこの世界を作ったのかっていう神話を子供向けに書いた本よ。読んでみなさい。エルフのことも分かるわ。」

受け取った私たちはニコニコしたエステル様に言われるがままその本を開いた。





むかしむかし、人間のいないむかし。創造神様は土、水、風、火、雷の5つの自然とエルフとドワーフの2つの命を創りました。5つの自然は混ざり合い、大きな大陸と海を生み出し、森の木からエルフが生まれ、石からドワーフが生まれました。

エルフは自然の力を利用して魔法を生み出しました。ですが、ドワーフはその魔法を好きになれませんでした。魔法に頼り、世界にある全てのものに敬意を表さずに暮らしているのが気に食わなかったのです。

そのうちエルフとドワーフは喧嘩をし始めてしまいました。たくさんのエルフとドワーフが憎しみや悲しみに包まれました。するとその憎しみや悲しみが黒い霧になって新しい命になりました。人間です。

人間は木や石から生まれません。そしてなんでも欲しがりました。エルフの魔法、周りにあるものを利用するドワーフの暮らし方を手に入れ、どんどん数が増えて広がっていきました。人間の生き方を見て、エルフとドワーフの喧嘩はなくなりました。お互いを認めあったのです。

創造神様はそれを喜び、人間にご褒美をあげようとしました。どんなものでも一つだけあげようと言うと、人間は言いました。

「欲しいものを手に入れる力が欲しいです。」

創造神様は人間に知恵という力を与えました。

人間はそのご褒美を存分に発揮し、村、街、国…と、どんどん大きな集団を生み出していきました。そして大きな集団があちこちにできると、今度は自分の集団を大きくしようと隣の集団から奪うようになったのです。人間同士で争うようになってしまいました。

それを見たエルフとドワーフは人間の争いを止めようとしましたが、人間はとても強く、止めるどころか巻き込まれてしまいました。

創造神様はとても悲しみました。争いが当たり前のような世界になってしまったからです。

エルフ、ドワーフ、人間の亡骸が山のようになってしまうと、今度はその亡骸の山から黒い霧が出てきて新しい命が生まれました。魔物です。

魔物は他の命とは違い、言葉も感情もありません。目の前の生き物を食べ、寝て、また食べ、寝ます。人間は自分たちが食べられる前にその魔物を食べてみました。なんととても美味しかったのです。食べ物に困らなくなった人間は争いをやめました。争いがなくなったことでエルフは森に、ドワーフは山に帰りました。

暫くすると、魔物を食べた人間が黒い霧になっていきました。言葉も感情も肉体もないただの黒い霧です。その霧が集まり、また新たな命が生まれました。黒竜です。

黒竜は周りのものを破壊して消滅させてしまいます。黒竜はそんな自分が嫌いになり、創造神様にお願いしました。

「私を殺してください。」

創造神様は黒竜を殺すのではなく、5つの自然の力を持つ橙竜、青竜、緑竜、赤竜、黄竜。そして創造と再生の力を持つ白竜の6匹の仲間を生み出しました。

創造神様は7匹の竜に言いました。

「この世界を綺麗にしなさい。」

7匹の竜は汚れてしまったこの世界を綺麗にする為に働きました。そして今でも働き続けているのです。





「海…?どうしたの?」

かなこに声をかけられて私はなんの事か分からなかった。するとエステル様がハンカチを渡してきた。

「これで拭きなさい。その涙を。」

頬に手を添えると濡れていて、ようやく自分が涙を流していることに気づいた。エステル様のハンカチを受け取って涙を拭って言った。

「私じゃなくて黒竜が泣いてるみたいです。」

「この本の内容に悲しんでるってこと?」

かなこの問いに私は頷いた。

するとエステル様が話し出した。

「エルフは森に帰った後、竜が生まれたことを知らないの。もちろんドワーフもね。人間と関わることを辞めたのよ。また巻き込まれるのを恐れて…。でも人間は竜のことを知ってて後世に残してくれた。知恵という力を使ってね。人間の全てが悪いんじゃないの。力の使い方を間違ってしまっただけなのよ。あたしはそう思ってる…。エルフもドワーフも長命なのは本に書いてあった通り、木や石から生まれるからよ。1000年くらいは生きるわ。あたしも200年くらい生きてるかな〜?」

私とかなこは固まった。

「「200年?!」」

声を揃えて言ってしまい、エステル様に爆笑された。

「あんた達本当に息ぴったりね!200年なんてエルフからしたらまだまだ若いのよ?」

と、言うことは…エステル様は自分の子供達に先に逝かれてしまうということ…。

私はエステル様に聞いた。

「人間との時間の差を感じて後悔したことはないんですか?きっとエステル様はお子様達を…。」

続きが言えずにモゴモゴ言ってると、エステル様が優しい笑顔で答えた。

「悲しくないと言えば嘘になる。でも後悔はしてないのよ。大切な時間って長さじゃないと思うの。今まで出会ってきた人間のことは忘れない。どんな人でどんなことが好きでどんな笑顔だったか…。あたしはハーフエルフ。半分人間だからなのかな…人間が好きなのよ。さっきも言ったでしょ?力の使い方次第なのよ。人間のお陰で私も変われたし救われたわ。だから限りあるこの時間をめいっぱい楽しむの!あの子達のこともそう!ウザがられるくらい愛してあげてるつもりよ!」

力の使い方次第…。人間が好き…。

エステル様の言葉を聞いて私はふとマスターを思い出した。そして自分がなぜ黒竜に助けを求められたのかがわかった気がした。

黒竜は自分を役立たずだと思っているのに白竜を救いたい気持ちでいっぱいだ。私もそう。黒竜になる前、私は役立たずだと思っていた。それでもかなこを手伝いたい、救いたい気持ちが私を突き動かしていた。その気持ちが共感して黒竜は私に助けを求めてきたんだ。

そして黒竜と私が1つになった今。闇魔法を危険なものだと決めつけている私と黒竜には足りないものがあった。何のために力を使うのか。使い方次第でこの強すぎる力は役に立つのだと気づくべきだった。

それを教えてくれたのがマスターだ。あの人は白竜という強い力を使いこなしている。使い道とそれに見合った使い方を知っている。

あの人はその事に気づかせてくれようとしていたんじゃないだろうか…。

私は悶々と思案に耽りそうになっていた。それを打ち破るかのようにエステル様が声をかけてきた。

「じゃあ次は街に行ってみましょうか!」

エステル様の提案に私もかなこも頷いた。そして歩きながらかなこが小声で話しかけてきた。

「海。なんか考え事?さっきから難しい顔してる。」

「え、そう?まぁそうかな?でも大丈夫。今はエステル様と街を楽しむつもりだよ。エステル様の言う通り、この時間を楽しまないと!」

そう言うとかなこは面食らったような顔して笑った。

「そうだね!楽しもう!」





街に着くと夜の時とは違った活気があった。海の幸や山の幸、どこから仕入れてきたのか見たこともない食べ物も並んでいる。その先に行くと今度は服や布、食器や小物などが並んだ店がある。

そしてどの店も人が集まり、威勢のいい声が響き渡っている。

「ここは貿易の中心とも言えるほど人が集まってくるの。だからいつもこんな感じで賑わってるわ。海路もそうだけど運河を使って物資を運んでくる事も多いから珍しい物も多いわ。あんた達も時間ある時にゆっくり見ていくといいわ。楽しいわよ!」

確かにこれは見ていて飽きない。私はこういう場所好きだけど海はそうでもないはず…。人混みは苦手なほうだ。

私は少し心配になって海を見てみた。

案の定、海は少し不安そうな顔でエステル様の後を歩いている。

やっぱキツそうだな。

「エステル様!街の外には何があるんですか?」

私はエステル様に聞いた。

「ん?何って…住宅地かな?あとは港とか桟橋とか…。山に行くには門を出ないといけないから面倒臭いわよ?」

なるほど。ここがこの街の中心部ってことか。ここを出ると人は少なくなるだろうけど見るものはなさそうだな。

「なら屋敷に戻りませんか?竜探しのことも気になりますし!」

私の言葉にエステル様は

「そうね!そろそろあの子達の話し合いも終わってるだろうし…そうしましょうか!」

と言って、屋敷に戻る道を進み始めた。

すると隣から

「かなこ、ありがと。」

と、海が申し訳なさそうな笑顔で言ってきた。

私は海にデコピンを食らわせて言った。

「買い物するお金持ってないでしょ!欲しくなるだけツラいじゃん?」

海は額を押さえながら、ヘヘッと笑った。


屋敷に戻ってくるとグスタフさんが待ち構えていた。

「お戻りですか?旦那様がお待ちですよ。」

「あら、ピッタリね!んじゃ後はグスタフに任せるわ!2人ともまたね〜!」

エステル様はそう言うとあっという間に屋敷の外に出て行った。

私はグスタフさんに聞いた。

「エステル様…どこに行ったんですか?」

隣の海も不思議そうな顔をしている。てっきりエステル様も話に入ってくるのかと思っていたからだ。

「エステル様はこの屋敷に留まることはほとんどありませんよ。気ままにあっちへフラフラこっちへフラフラ。大旦那様が亡くなってご子息のジェド様が領主になられて落ち着いた頃からあのようにどこかへお出かけしてます。楽しそうですし、ジェド様も許してますからね。」

だから昨日の夜、森にエステル様いたんだ。お陰で助かったけど…領主の母親がフラフラしてて不安にならないのかな?

「エステル様一人で大丈夫なんですか?その…護衛とか…。」

グスタフさんは私の言葉に豪快に笑った。

「はっはっはっ!大丈夫ですよ。エステル様はお強いです。その辺のチンピラになんて負けません。むしろ説教してますよ!」

私も海もチンピラに説教してるエステル様が想像できて笑ってしまった。

「「確かに!」」


グスタフさんに連れてきてもらって部屋に入ると、ジェド様とライネル様がいた。

「おぉ!来たか!街はどうだった?」

ジェド様は私たちにも気さくに話しかけてくれる。

「とても活気がありました!買い物1日じゃ終わりませんね!ね?海!」

私が海に聞くと、海はハッとして答えた。

「えっ?!あ、うん!ほんとその通りです!」

海…なんか考え事してた?

「店も多いからな!まぁゆっくりしていくといいぜ!」

ジェド様は気にすることもなくそう答えた。すると隣にいるライネル様が話を切り出した。

「兄上。話をしませんと…。」

「お?あぁそうだったな…。」

ジェド様は咳払いをして真面目な顔で話し出した。

「まず先に言っておく。俺たちは竜を探してる。神話は聞いたことあるか?ライネルが聖職者になって聖都で勉強してきたんだけどよ。その神話の研究してる偉いやつらが言うには、このテオドルセン帝国に竜が居るって話らしい。しかも東側…つまり俺らの領地の近くだ。」

私と海は顔を見合せて驚いた。

まさか早速竜の手がかりを掴めるとは思っていなかった。しかもこの領地の近くに。

ライネル様が続けるように話し出した。

「ここから南に少し行った所に火山地帯がある。ほとんど活動していなくて噴火した記録は何百年も昔だ。そこに赤竜がいるという。赤竜は火の竜。火山地帯にいるというのも納得できる。それで私は聖都から戻ってきてから兄上に相談して探させてもらっている。」

すると海が2人に聞いた。

「あの…なぜ竜をさがしているんですか?」

ジェド様とライネル様は少し間を置いて話し出した。

「竜の血が万能薬になるからだ。別に殺そうとかじゃねぇ。もし神話の竜なら話が通じるはず。だから少しだけ分けてくれと頼むつもりだ。」

「この地には昔から不治の病がある。病というより呪いだ。ある日突然深い眠りに入るんだ。そして1年後、目を覚ますことなく息を引き取る…。聖職者である私も未だに解明できていない…。聖都でも調べてみたが分からなかった。だから私はこの呪いに対抗する術を得たいんだ!万能薬でもなんでもいい!片っ端から試す覚悟だ!」

呪い…。確かダルシオンさんが言ってたな…。


『呪いとは、解明されていない病を指します。原因、きっかけ、場所など、ありとあらゆるものが分からない…手の尽くしようがない病です。ですがたまに魔族が呪いをかけてくることもあります。魔族と言っても限られた魔族…魔王です。』


私はダルシオンさんが言ってたことを思い出した。そして海をチラッと見てから2人に聞いた。

「海は黒竜ですけど…海の血ではダメなんですか?」

3人の視線が集まる。

そして口を開いたのはジェド様だ。

「黒竜は破壊と消滅。万能薬ではなく猛毒になっちまう。薬は時に毒にもなる。黒竜の血では強すぎてダメなんだ…。」

「そう…なんですか…。」

海は黙っている。というより考え込んでいる。さっきから変だ。

私はジェド様とライネル様に言った。

「あの!少しだけ時間をくれませんか?ちょっと海と2人で話がしたいんです。」

3人は突然のお願いに驚き、不思議そうな顔をした。

「構わねぇぞ。」

「急ぎではないから2人で話してくれ。」

「え?どうしたの?」

ジェド様とライネル様にお礼を言って私は海の手を取って部屋を出た。そしてそのままお墓のある中庭まで来た。日を浴びたステンドグラスが私たちにカラフルな影を落としている。

「かなこ?どうしたの?」

海が不思議そうに聞いてきたから、私は海を真っ直ぐ見つめて言った。

「海。さっきから変だよ。何考えてるの?」

するとドキッとした様子の海が目を泳がせた。私は海が話し出すまで見つめる。するとようやく観念したのか口を開いた。

「ごめん…。実はマスターから竜のこと聞いてたの。赤竜と橙竜は火山地帯にいるんだって。青竜は海にいて、黄竜は行方不明らしい。それと…緑竜は…西大陸の魔族に食べられちゃったらしい…。竜を食べたせいで感情のない魔族になってしまった…とか。」

私は思わぬ返事に固まってしまった。

なんで黙ってたの?とか…竜を食べたらおかしくなるの?とか…火山地帯には2匹もいるの?とか…聞きたいことがどんどん浮かび上がってくる。

黙っている私を見て、海は続けて話し出した。

「万能薬に血が必要って言ってたけど…竜を食べるのとは違うのかな?もしそれで魔族みたいになっちゃったら…。」

なるほど。それで考え込んでたのか。確かに食べて起こる現象と血を使った万能薬で起こる現象が同じとは言えないし、違うとも言えない。もしその万能薬のせいでその人達がおかしくなったら…。

私は海の肩に手を置いて説き伏せるように言った。

「海。その事2人に言おう。もしかしたら何か知ってるかもしれない。ライネル様は聖都で色々勉強してきてるみたいだし、竜のことも詳しく知ってるかも。ね?」

海はこの話をするのを躊躇している。そんな様子の海を見て、私はずっと気になってることを聞いた。

「なんで言いたくないの?どうしたの海。いつもならズバッと話して解決しようとするじゃん。なんで今回はそんなに躊躇してるの?」

そう。いつもならこういう事は話してさっさと解決するはず。海がこんなに躊躇してるのが不思議なのだ。

「……信じていいのかな…。」

小さな声で呟いた海は不安そうな顔だ。

まさか…と思い、聞いてみる。

「フェルス王国でのこと気にしてる?」

そう聞くと海は目を逸らした。

あぁそうか。やっとわかった。海がなんでこんな風になってるのか。

海は私と違って島に召喚されてそこからわけも分からずフェルス王国に来た。ジョン君やチャミ君という行き当たりばったりの人達に助けられながら。そしてフェルス王国に来てようやく私という知り合いに会えた。つまり海は心の中で戸惑いつつも流れに身を任せてきたんだ。そしてその後フェルス王国から逃げてきた。私や王妃様に言われるがまま、流れに任せて。

そう…自分がどうしたいか、ではなく、どうすべきかを考えていた。だから今、いざ自由になるとどうしたらいいのか分からないのだ。

「海はどうしたい?本当に竜を探したい?この先海はどうしたい?」

私の質問に海は苦しそうな顔をしながら震える声で呟いた。

「どうしたらいいか分からない…。」

その言葉を聞いて私は海を連れて部屋に戻った。そして海を置いてジェド様とライネル様の所へ行き、竜探しについてもう少し時間をください、と伝えた。2人は心配そうに色々聞いてきたけど、なんとか上手く躱して待ってもらうことになった。

海は悩んでる。この世界での海の立場が最初とあまりにも変わってしまったから。今まで上手くいってたのが不思議なくらいトントン拍子に事が進んでいる。悩む間もなく。

私は海の待つ部屋に戻りながらあの時のことを思い出していた。フェルス王国が海を殺そうと考え始めていた時に誓った言葉を。


『海を殺させはしない。絶対に守る。例え世界がどうなろうとも。海の側に最後までいるのは私だ。』


最後までお読みくださりありがとうございます。


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