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第四十八話 実家に帰らせていただきます

フェルス王国の南側には大きな帝国がある。テオドルセン帝国。この帝国は東大陸の中央に大きく広がっており、約200年前、異世界人を召喚し、魔族を辺境の地へと追いやったという歴史を持つ。


テオドルセン帝国とフェルス王国の国境付近。

雪明かりでうっすらと見える程度の夜の闇の中、息を潜めて走っている。前を走る背の高い影が後ろを振り向いて声をかけた。

「皆さんついてきてますか!」

私は後ろをチラッと確認して答えた。

「ルーク!ナコと海が遅れ気味よ!雪だから私たちみたいに速く走れないのよ!」

その場に止まり数秒後、ナコと海が息を切らせながら追いついた。

「す、すみません!こういう道慣れてなくて…はぁはぁ…。海大丈夫?」

「…はぁ…はぁ…なんとか…。」

ナコと海はかなり疲れている。それもそのはずだわ。城から抜け出して国境まで転移術を使ったとはいえ、周りを気にしながら進んできたのだから。

「2人とももう少しよ!頑張って!」

私は2人を励ましてルークに先を急ぐように言った。


リチャード様とサントス、カルロ、ダルシオンが国の防御魔法…結界と呼んでいたあのオーロラのような膜について話していた時、海を危険視している事に気づいた。

確かに闇魔法は危険だわ。でも…海なのよ?

私はその場を離れ、シルビアを探した。

「シルビア!」

声をかけると彼女は不思議そうな顔して振り向いた。

「王妃…?どうしたよそんな血相変えて。」

私はそんなシルビアの手を取って止まることなく歩き続けた。そして小声で話した。

「シルビア。力を貸して。海をこの国から逃がすの。あなたはあの子を守る側についたと聞いてるわ。お願い。」

私の言葉に一瞬驚いた顔をしたけどすぐにキリッとした顔つきになったシルビアは心強い言葉を返してくれた。

「わかった。まずは海を探して転移術で国境に送る。多分国境にいるあいつならなんとかしてくれるだろう。私は城に残って邪魔する。王妃は海と行ってくれ。」

シルビアのこういう察しの良さ、私はとても気に入っている。それに何より私と対等に話して私の友人としていつも力になってくれる。

「ありがとうシルビア。」

そう言って歩いていると目の前の廊下を通り過ぎてくナコと海が見えた。

シルビアはパッと走り出してあっという間に2人を捕まえた。そして慌てる2人を落ち着かせるように話して自分たちが味方であることを伝えた。私が追いつく頃には2人とも落ち着いた様子だった。

さすがね。シルビア。

「王妃。この2人も同じこと考えてたみたいだ。だがまだ迷ってるみたいで…。」

そりゃそうよね。悩むと思ったわ。でもそんなこと言ってられないわ。自分の勘を信じるべきよ!

「海、あなたはここにいてはいけないの。危険視されてるってことは気づいてるんでしょ?それにこの先どうなるかも勘づいてるはずよ。なら迷うことないわ!私は王妃だけど…所詮は王妃なの。守りきれる保証はないわ。それに…」

私はそこで一旦言葉を区切り、ナコを見つめた。

「親友であるナコがいるならきっとここを出ても大丈夫。どんな時も2人なら乗り越えられるわ!」

「レイチェル様…」

海が申し訳なさそうな顔して見てくる。ナコも同じだ。

「大丈夫よ!私とシルビアに任せて!」

私がそう言うと2人は

「「ありがとうございます!」」

と、声を揃えて言った。

私もシルビアも2人の仲の良さに笑ってしまった。

「じゃあ転移術でさっさと移動しろ!向こうに着いたら王妃の指示に従ってくれ。王妃。ルークに護衛を頼め。あいつなら力になってくれる。」

私はその言葉に不安になって聞いた。

「ルークはリチャード様たち側でしょ?大丈夫なの?」

シルビアはニヤリとして言った。

「あいつはさ。女の集団に弱いんだ。寄ってたかって懇願しろ。涙なんか見せたら一発だぜ!」

なんて嫌らしい笑みなの!悪巧みの顔…なんだか私まで楽しくなってきちゃった!

私もシルビアと同じくニヤリとして

「わかったわ!ありがとうシルビア!」

と言って、ナコと海を引っ張って転移術の陣のところに向かった。


転移術で国境付近に来てすぐ騎士団を見つけた。

「王妃様?!このようなところになぜ?!」

「ナコ様と海様もいるぞ?」

「なんだ?どうしたんだ?」

周りがザワついてるが気にせずみんなに声をかけながら優雅に進んでいく。

「みんなーご苦労さまー!」

笑みを絶やさずどんどん進んでルークの元へ向かう。私たちの登場にさぞ驚いたのだろう。ルークは珍しく目をぱちくりさせている。

「お、王妃様?どうしてここに?それに後ろのお2人は?」

私は海とナコに目配せしてシルビアの言う通りの作戦を実行した。

「ルーク!お願い!助けて!」

「ルークさん!お願いします!」

「私たちを助けてください!」

3人でルークを囲んで目をウルウルさせて懇願する。

ルークは驚きと焦りが顔に出ている。

「えっ?!な、なんですか?!た、助けろって…何からですか?!」

これはもう一押しね。

「ルーク。私…リチャード様と喧嘩したのよ!とても酷いの!だから言ったの…」

私は目に涙をいっぱい溜めてルークを見つめて言った。

「実家に帰らせていただきます!って!」

するとルークは固まった。そして暫くすると絞り出すように言った。

「…っく!……わ、分かりました…。お連れします…。」

私と海とナコは心の中でガッツポーズをした。

「他の者に気づかれるとまずいので暗くなったら移動しましょう。あと30分もすれば辺りは暗くなります。そしたら行きましょう。」

ルークは心底嫌そうな様子で作戦を練ってくれる。

「ありがとうルーク。すぐ転移術で実家に行くわ。例の秘密の陣でね!」

ウインク付きでルークに言うと、ルークは盛大なため息と共に呟いた。

「…はぁ…また夫婦喧嘩騒動か……。」


国境まで来ると秘密の陣まであと少し。4人で騎士団の野営地から夜の闇の中ひっそり進んで1時間ほど…。

「2人とも!着いたわよ!」

そう言って私は大きな岩の前で後ろの2人に声をかけた。

ナコが息を切らせながら聞いてきた。

「い、岩ですよ?転移術の陣は…?」

海も同じことを聞きたそうな顔をしている。

「ルーク、お願い。」

「はい。」

ルークにお願いすると彼は大きな岩に手をかけて、ズルズルと岩を横に押していく。するとそこに洞穴が現れた。中には小さな空間があり、そこに陣が描かれている。

「凄い…こんな所に…。」

ナコがポカンと口を開けて見ている。

「まさかとは思いますが…レイチェル様ってよくここから実家に帰ってます?秘密で…。」

海が顔を引きつらせながら聞いてきたから

「そうよ!嫌になることあるでしょ?それにここはルークとシルビアしか知らないの!」

と答えた。

ナコと海はルークを見つめて言った。

「「お疲れ様です。」」

ルークはため息をついて呟いた。

「もう…慣れました…。」

なによ。いつもはシルビアに頼んでるからルークは関係ないじゃない。なんでそんな疲れた顔するのよ。

ちょっとムッとしたけど今は優先すべきことが他にある。気を取り直して…。

「さぁ2人とも行くわよ!」

そう言って陣に2人を押し込んだ。そして2人を抱きしめて小声で話した。

「本当にごめんなさい。あなた達には迷惑ばかり、辛い思いばかりさせてしまったわ。2人と(すご)した時間は私にとってとても大切なものよ。忘れないわ。帰ったらリチャード様を引っぱたいてやるんだから!」

パッと離れてとびきりの笑顔で言った。

「また会える日を楽しみにしてるわ!」

私のその言葉を聞いて、私たちの作戦に気づいたルークが、まさか!っと言ったのを横目に転移術を発動させた。

光の中の2人に心から感謝と謝罪を込めて笑顔を向けた。2人も私と同じ顔で笑ってくれた。

光が消えると2人はもういない。隣でルークが陣を見つめている。

「王妃様…気が変わったんですね…。」

「えぇ…やっぱり帰ってリチャード様を引っぱたく方がいいと思ってね…。」

「そうですか…程々にしてください。毎回国王に泣きつかれて困ってるんです。」

「ふふっ!わかったわ!」

私とルークは洞穴を出て岩を戻し、来た道をゆっくり戻っていった。





「だーーかーーらーー!2人がどこに行ったかなんて知らないっつの!こんだけ城中探して居ないんだ。城下町だって部下に探させてるけどわかんないの!」

シルビア殿の声が響き渡る。

「レイチェルもいないのだ!何かあったのではないか?!シルビア!お前ならレイチェルとも仲がいい!何か心当たりがないか?!」

国王は必死にシルビア殿に聞いているが恐らく口を割らないだろう。そもそも、この騒動を起こした犯人は王妃様だ。

「サントス!お前からも言ってくれ!」

国王に懇願されて仕方なく言葉を発する。

「シルビア殿。ナコ殿と海殿はどこですか?顔に書いてあります。知っていると。」

するとシルビア殿はニヤリとして言った。

「宰相であるあんたなら分かるだろ?無駄に脳みそデカくないんだからよ。」

相変わらずの口の利き方だ。

だがその通り予想はついている。王妃様と海殿の親友ナコ殿がいない時点で、海殿を逃がしたのは間違いない。だがこれを罪に問うわけにはいかない。なにしろ証拠もなければ証人もいない。王妃様もシルビア殿同様、口を割らないだろう。

それに…海殿を捕らえることは秘密にするつもりだった。知るのは国王、私、カルロ、ダルシオン殿だけ。わざわざ王妃様が途中退室されてから捕らえる話をした。そのはずなのに知られたのは誤算だった。

女の勘というやつでしょうか…。恐ろしいものだ…。

するとこの場に似つかわしくない声が聞こえた。

「ただいまー!ルーク!護衛ありがとね!」

「レイチェル?!ど、ど、どこにいたのだ!」

国王は王妃様に走りよっていった。それはもうご主人様の帰りを待っていた子犬のように。

「リチャード様ったらどうしたの?ちょっと散歩に行ってたのよ。ね?ルーク?」

「えぇ。突然国境に現れて散歩がしたいと仰せになったものですから。国王。こういうのは困ります。王妃様にもキツく言っておいてください。」

なるほど。ルークを巻き込みましたか。しかもしっかり口止めして。流石ですね王妃様。伊達に何度も夫婦喧嘩してませんね。

「ルーク…すまなかったな…。」

話の流れを完全に持っていかれた。国王も頭の中は王妃様の無事でいっぱい。ナコ殿と海殿のことはすっぽり抜けてしまっている。

そんな状況を眺めていると、シルビア殿が近づいてきて小声で話しかけてきた。

「おい病弱。暴力的な悪巧みってやつはお前には似合わねぇよ。国のことを考えてるのはいいが、人としてのお前は見失うなよ。私はあんたに恩がある。クソみてぇな理由があったとはいえ、それは変わらねぇ。」

「あなたが私を慰めてくれるとは思いませんでした。可愛らしいところもあるのですね。」

微笑みながら言うとシルビア殿は心底嫌そうな顔をして言った。

「気持ちわりぃな。まぁあれだ。今後も頼むぜ。フェルス王国の宰相様よ。」

片手をヒラヒラさせて騒ぎの中心から離れていくシルビア殿は、疲れた顔をしたルーク殿に何か話しかけた後、笑いながら行ってしまった。

私もその場を離れて自室へと戻って行った。


自室の前に行くとカルロがいた。

「どうしました?王妃様は散歩からお帰りになったみたいですよ。」

いつものように話しかけると、カルロはいつもとは違って、全てを見通したかのような顔をして話し始めた。

「サントス。珍しく悔しそうな顔してるね。女性陣にしてやられたのがそんなに悔しかったのかい?僕は元々分かってたよ。この国は女性陣が強いってことをね。君はナタリーさんを妻に迎えているから重々承知かと思ってたけど?」

私は小さく息をついて答えた。

「カルロ。あなたは昔から私に対して厳しいですね。ちょっと歳上だからって調子に乗らないでください。私は宰相。あなたは補佐です。」

カルロは驚いた顔をして笑った。

「なんだ。元気そうだね。慰めてやろうと思ってたけど必要なかったか。じゃあ僕はもう行くよ。魔石の様子も気になるし、その魔石にはりついてるダルシオンも気になる。全く…お守りをする人が多くて困るよ…この国の中枢を(にな)うもの達は。」

そう言うとカルロは廊下の先へ歩いていく。

私は自室の扉に手をかけて開けながら部屋の中にいるであろうナタリーに向かって言った。そして廊下で、えっ?!っと言ってるカルロを無視して扉を閉めた。

「聞いてくださいナタリー!カルロがまた虐めてきました!」





東大陸の北のはずれ。魔族領と呼ばれるこの地は一年のほとんどが雪に覆われ、夏でも冬のような寒さだ。海に面している海岸沿いには断崖絶壁があり、身投げをする者も後を絶たない。魔族と言えど、皆が皆、四天王のように力があり、野心があるわけではないのだ。

四天王の1人である私の役目はただ1つ。魔王様をお守りすること。

「あーーくそ!腕がないと魔法も上手く使えない!あの人間絶対許さない!あたしの腕を切り落としやがって!」

勝手な行動をして片腕を失って帰ってきたナギはずっとこの調子。同じように怪我をしたシュウはもう吹っ切れたのかどこかで剣でも振り回しているのだろう。

「ナギ。もうその人間を殺すことは叶わないよ?なんたってこれからは仲良く同盟組むんだからね。」

涼しい顔をしてナギに優しく話しかけてるのは四天王の頭脳、リクだ。同盟なんか組まないとか言ってたのにあっさり同盟組んで帰ってきた。マスターのお願いなら仕方ないさ〜とか言って責任逃れしている。

「あたしは同盟なんて知らないね!あいつら人間は必ず根絶やしにしてやる!それにマスターだってムカつくやつだよ。200年前、この魔族領にあんな強力な結界なんか張らなければあたしはすぐにここに戻ってこれたんだ!」

200年前、人間との争いで負けた魔族はこの地に追いやられた。もうダメだと覚悟をした時、強力な結界で私たちを守ってくれたのがマスター。守ったと言うよりここに閉じ込めた。外からも中からも誰1人通り抜けられない結界。その間、私たちが外との関わりを持ったのはマスターだけだ。彼を味方と思うものは多い。だがナギのように敵意を向けるものもいるのは事実。実際彼は人間ともつるんでいるからよく分からない。

そして人間が魔族を忘れてきた50年ほど前、突然結界がなくなった。それを機に私たちは反撃をした。魔族領を広げるために。

だが、人間は強かった。200年前とは全く違って異世界人も居ないはずなのに強かった。私たちは自分たちの弱さを痛感した。そして魔王様は…。

「おい!アヤ!あんたもなんか言ったらどうだ!」

突然ナギに話を振られた。

「何?聞いてなかった。」

「だ、か、ら!マスター()り損ねたのどうすんだって話!」

私の返答にイラつきながらナギが言った。

「行方は分からないし、もう二度と姿を現さないよ。諦めるしかない。」

「アヤの言う通りだよナギ。彼には恩がある。例え白竜でもね。殺るのは諦めよう。」

リクが私のフォローをしてくれた。

「ちっ!魔族はどいつもこいつも腑抜けやがったのか?力を示してこその魔族だろうが!」

ナギの言う通り、魔族は好戦的…つまり自分の力を示したがる傾向がある。かくいう私もそう。自分が一番強いとみんながそれぞれ思っている。

「ナギ。君はあれだろ?竜を食べて力を手に入れたいだけだろ。白竜じゃ大した力にはならないと思うけど?」

リクの言葉にナギはニヤリとして言った。

「食ってみなきゃわからないよ。西大陸の魔族はそれで強くなって支配地域を増やしてるんだ。あたしらも見習うべきさ。黒竜が手に入らなかった今、白竜が目の前にいるんだぜ?食わないって選択肢は無いだろうよ!」

ナギは私たちの中でも特に野心が強く、力の誇示に執着している。魔術師としての才能も確かにある。四天王になるのも早かったし…。

「西大陸の魔族は力の代わりに感情を無くしたみたいだよ?それでもいいのかい?」

「構わない。余計な感情が無くなるならそれに超したことはないね。あたしはあたしの力にひれ伏す奴らを笑って見てたいんだ!恐怖に怯える顔は最高だろ?」

リクの質問に答えるナギは私の嫌いなタイプだ。そして魔王様の座を狙ってるのを全面に出してるのも嫌だ。魔王様は魔王様ただ一人だ。ナギみたいな魔王様だったら私が殺してやる。

私はついナギに言葉をかけてしまった。

「ナギ。魔王様が力を半分も失ったのは、結界によって閉じ込められてた間あなたが何もしなかったからだよ。もし人間についてもっと情報があればあんな結果にはならなかった。」

50年前、結界が消えた時にナギのように人間側で暮らしていた魔族達が集まってくれたら、情報もあったし人間に対処することができた。なのにその時、魔族達は誰一人来なかった。しかもその魔族達は揃いも揃って人間と関わってたり、身を隠してビクビクして生きていた。ナギも魔力不足でここに戻ってきたのは20年以上前だ。一体何をしていたのか…。

「あたしのせいだって言うのかい?結界から出てもこれなかったくせによく言うよ。あたしはあたしで必死だったんだよ!魔族だとバレたら即ゲームオーバーだ。アヤ、あんたこそ魔王様を守るのが役目だろ?守れてないじゃないか!」

「はいはい!そこまで!仲間同士で争ってどうするんだい?ナギ、君は一旦落ち着きなよ。君の考えはよくわかったからさ。アヤ、君もだ。ナギを刺激するようなこと言わないでくれ。魔王様の様子でも見てきたらどうだい?」

ナギを殺してやろうかと思っていた矢先にリクに止められた。

「あーくそ!むしゃくしゃする!その辺の魔物でもぶっ殺して食ってくる!」

そう言ってナギがバタンと大きな音を立てながら出て行った扉を睨みつけた。そして私はクルリと反転して魔王様の所に行くことにした。

「アヤ。魔王様に同盟は継続しないと伝えてくれ。きっとフェルス王国もマスターを殺せなかったはずだ。」

後ろから話しかけてきたリクが私を伝書鳩か何かかと勘違いしているようでイライラが募った。

「自分で言いなよ。」

ぶっきらぼうに答えるとリクは、ふっと笑った。

「アヤは魔王様以外、本当に嫌いなんだね。唯一懐いてたのはマスターだ。でも彼が白竜だと知った途端僕らに殺せと言った。魔王様にもそう助言したらしいね。不思議なんだよ…マスターが白竜だと何故わかった?」

私はその場で黙ったまま立っている。

「本人から…そう聞いたの?」

「答えがわかってるなら聞かないで。」

私はそう言って魔王様の元に向かった。


「失礼します。魔王様…お加減はいかがですか?」

私がそう尋ねると魔王様はいつもの美しい姿で振り向いてニコリと微笑んだ。

「あら、アヤ。なんだか不機嫌そうね?どうしたの?話してごらんなさい。」

あぁ美しい。腰まで伸びたさらさらの黒髪。優雅な身のこなし。そしてその澄んだ瞳に私を写してくれてると思うとゾクゾクしてくる。

「……ナギが…。」

俯いて名前を出しただけなのに魔王様は、ふふっと笑って私の前に来て、私の顎をすくい上げた。

「可愛いアヤ。ナギは利用価値があるのよ。あれに皆が注目している間にわたくしたちは色々と準備ができる。そうでしょ?」

私はポーっとしてしまった。魔王様に魅せられてしまって言葉も出ない。

「いい子ね。」

そう言うと魔王様の顔が近づいてきて私の唇に魔王様のそれがそっと触れた。

私は突然のことに身動きが取れず、魔王様の妖艶な瞳に吸い込まれてしまった。

「さぁ。わたくしの想い人を連れてきてちょうだい。あなたにはそれができるはずよ?あなたは私のお気に入りだもの。」

「…はい。必ず連れてまいります。」

私は四天王の一人アヤ。魔王様の側近で魔王様のお気に入り。魔王様の為ならなんだってする。例え私の力を見出して私を魔王様のお気に入りに推薦してくれた恩人であろうとも殺す。魔王様が望むなら…。私は魔王様の為だけに生きる。


最後までお読みくださりありがとうございます。


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