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第四十七話 フェルス王国の結界

ダルシオンさんが張ってくれた防御魔法の中に私とかなこがいる。魔石を目の前に置いて。

「じゃあ海…行くよ?」

私は頷いた。


1時間前、私とかなこはダルシオンさんに呼ばれて魔法室に来た。

「色々あって遅くなりましたが、魔石に防御魔法をかけます。以前にもお伝えしましたが、ナコ殿と海殿2人でやってもらいます。海殿…懸念があるなら言ってください。」

ダルシオンさんは以前私がかなこの光魔法を模倣した時に違和感を感じてその場ですぐやろうとしなかったのを気にしているのだろう。

「懸念というか…光魔法を使うとゾワゾワするんです。」

「「ゾワゾワ?」」

かなことダルシオンさんがハモった。

「はい。でもその後チャミとジョンに話して解決しました。闇魔法の弱点である光魔法を使った時にゾワゾワするんです。島にもそういう人がいたらしくてそれと同じかな…と。」

ダルシオンさんは顎に手を当てて1人納得したようにブツブツ言っている。

「2属性…しかも弱点となる属性が影響してるのか…興味深いな…。」

ダルシオンさんの研究心に火をつけてしまった気がしてかなこを見ると、かなこも同じことを考えていたのか嫌そうな顔でダルシオンさんを見ている。

「あ、あの…。」

「あぁ。これは失礼。ゾワゾワするのは分かりました。けどそれでもやってください。使えないわけじゃないなら我慢してください。」

「はい。」

そういうと思った。

「念の為防御魔法を張っておきます。その中でやってください。心配はいらないとは思いますが、海殿はナコ殿と共感している必要があるので集中してください。ナコ殿は…とりあえず精度高めにやってください。」

「え…私だけ適当過ぎない?」

私はかなこの肩に手を置いて頷いた。ドンマイ…の意を込めて。


そして今に至る。

「じゃあ海…行くよ?」

私は頷いてかなこの心の中に集中する。

そして2人同時に魔石に光魔法の防御魔法をかけると、青空色の魔石はどんどん光を放っていく。

私はより一層集中した。共感できなくなったら魔法が使えなくなってしまう。途中で途切れたらまたやり直し。だがそんな心配はいらないようだ。かなこの事は手に取るように分かる。なんと言っても親友だ。心を読まなくても考えが分かる。不思議なものだ。

魔石はこれでもかと光を放っていき、そしてだんだん光が弱くなったと思ったらキラキラと輝きだした。

私とかなこはその場にへたり込んだ。

疲れた…物凄く疲れた。

そんな私たちの間をぬってダルシオンさんが魔石を見つめた。

「完成です。かなり強力な防御魔法です。」

私とかなこは息をついてその場に大の字に倒れた。

「「良かった〜」」

ダルシオンさんがニヤリと笑って言った。

「台詞まで一緒ですか。」





フェルス王国城の1番高い塔。ここには鐘がある。城下に知らせるための鐘。この鐘は敵襲や天昇の儀など、特別な時に鳴らされるものだ。

その鐘の側に私は来ている。カルロさんと共に。

「あの、カルロさん?」

「なんだいナコさん?」

「ここに魔石を設置して国全体に防御魔法を張るんですよね?」

「そうだね。」

「しかも今それを発動させるんですよね?」

「そうだね。」

「なんでそんな大事な時にカルロさんだけなんですか?」

「あーそうか…えっと…」

カルロさんは困ったように頭をかいている。

「ダルシオンさんは?国王様は?海は?」

「その…3人は今…大事な話し合いというか…」

「話し合い?」

「海さんの今後について話すみたい。竜探しのこととか。」

え?そんな大事な話し合いなの?私は?カルロさんは?え?

「……そこに私たちは…不要…。」

「う、うん。僕とナコさんはさっさと魔石設置してこいってことらしい…。ぼ、僕もね!抗議したんだよ?聞いといた方がいいんじゃないかって!でも……サントスもダルシオンも…お前はいらない…って…。」

カルロさんは光を失ったような目で虚空を見つめている。

「カルロさん…余り物同士…頑張りましょう!」

もうヤケだ。私たちは不要だと?後で困っても知らないんだからな!

「そ、そうだね…。頑張ろう!上手くいく可能性低いからね!」

え?今なんて言った?

「カルロさん。今なんと?」

「え?あぁ。ここまで苦労して魔石作ったから言いずらかったんだけど…この魔石を使った防御魔法ってちょっと不安要素があるんだ。なんというか……範囲足りるかな?っていう…。」

「えっ?!ここまで来て?!まさかの足りないかもしれないってこと?!あんなに苦労したのに?!」

「ご、ごめん…。」

カルロさんはまたも困ったように頭をかいている。

「ちなみに足りなかったら……」

「一からやり直しだね。」

私は光を失った目で虚空を見つめた。

あの苦労は…なんだったのか…。





王の間では、私以外に国王様、サントスさん、ダルシオンさんがいる。

「海さん。竜探しもそうなのだが、あなたの記憶の欠落についても気になっている。あれから進行しているだろうか?」

国王様が心配そうに聞いてくる。

「いいえ。多分…あれから忘れてしまったことはないと思うんですけど…。」

正直忘れてるかどうかってどうしたら判別つくのだろう?家族の名前はもう思い出せない。でもその他のことは覚えてるし忘れてないと思う。

そんな私の気持ちを代弁するかのようにサントスさんが口を開く。

「記憶というものはその時その場でふと思い出すものです。忘れているかどうかを判断するのは難しいでしょう。」

そう!それが言いたかったんです!

「できるだけナコ殿と昔の話でもして記憶を保ってください。今のところ対処法はそれだけです。」

ダルシオンさんのその冷たい言い方はマスター譲りなの?なんかこうもっと優しい言い方ってあるでしょ。

「…分かりました…。」

とりあえず返事だけはしますけど…。

サントスさんが私の気持ちを読んでくれればいいが、彼にそんな芸当は出来ないだろう。空気を読むとか相手を気遣うとかそういうこととはかけ離れた人だ。私のことなど気にもせず違う話題を話し出した。

「では次に竜探しについて話しましょうか。今現在、竜の目撃情報はありません。生きているのかさえ分かりません。」

私はあの夜のマスターとの会話を言うべきか悩んでいる。マスターが私の部屋に来た、しかも魔族とも決別してしまったと、この人達に言うべきか迷っている。信じていいのか?この人達を…。

そこでふと自分がいつの間にかマスターを守りたいと思っていることに気づいた。

フェルス王国の人達、マスター、どちらに自分はついているのだろう?そもそもどちらかを選ばないといけないの?なんで敵対しているんだっけ?

それに気になることがもう1つ。魔族はマスターが白竜だとなぜ知った?

「あの…マスターが白竜だと知ったのはいつですか?」

「竜探しに関係ありますか?」

ズバリとサントスさんに聞かれてドキッとした。

「あ、えっと…関係あるかは分からないですけど…いつかな〜って…。」

できるだけ私の思惑を知られないように笑顔で答える。サントスさんは私を見つめた後答えてくれた。

「魔族から同盟継続の条件についての文書が届いた時です。」

やはりこの国の人達より先に魔族が気づいたってこと?

「ダルシオンさんもその時に知ったんですか?」

「えぇ。まぁその前から気にはなってましたが…証拠がないので…。」

証拠がないならダルシオンさんは他言しないはず。だとしたらやっぱり魔族が先…。

私はこの人達とマスターの話が真実なのかを確かめたくなった。何も知らない振りをして質問するしかないかな…。

「竜について私よく知らないんですけど…何匹もいるんですか?」

とぼけたように聞くとダルシオンさんが答えてくれた。

「竜は魔法の属性と同じで7匹います。黒竜(こくりゅう)白竜(はくりゅう)赤竜(せきりゅう)青竜(せいりゅう)緑竜(りょくりゅう)橙竜(とうりゅう)黄竜(こうりゅう)。」

マスターが言ってたのと同じだ。

一番情報があるのは赤竜と橙竜。確か火山地帯にいると言っていた。

国王様が縋るように私に聞いてきた。

「何か心当たりがあるのか?」

この国王様を見る限り、黒竜やマスターを殺そうと考えていたとは到底思えないだろう。それくらい人が良さそうな顔をしている。

「……いいえ…なにも知りません。すみません…私が竜を探したいって言い出したのになんの情報もなくて…。」

やはりマスターの事は言えない。この人達を信じきれない。嘘をついてるとは思えないが、人の良さそうなこの顔の裏であんな恐ろしいことを考えていたと思うと…。

「気にしないでくれ海さん。竜など我々だって知らないことだらけだ。まずは各自調べてみてくれ。頼んだぞ。」

国王様がそう言うと、サントスさんと国王様は何か話している。私もかなこ達の所に行こうと扉に向かおうとしたらダルシオンさんが近づいてきて声を潜めて聞いてきた。

「数日前の夜、一瞬ですがマスターの魔力を感知しました。気づきましたか?」

「えっ?!えっと…気づかなかったです…。」

この人は常に魔力感知をしているんだった。マスターがいつ使ったか分からないが魔法を使ったその一瞬を感じ取ったのだろう。

「そうですか…まさかとは思いますが…何か俺に隠し事してませんよね?全て共有しろと言ったはずですが…?」

「してませんしてません!そんなことできません!」

「ならいいですけど…。」

ダルシオンさんは疑うような視線を向けてくる。

まずい。早くこの場を離れないと。

と思った矢先、突然扉を勢いよく開けながらシルビアさんが入ってきた。

「おい!お前ら何やらかした?!魔石完成したんか?!」

「シルビア?!どうしたのだ?!」

国王様が驚いたようにシルビアさんに返答する。

「どうもこうも空にオーロラみたいのかかってんぞ?!まさかあれが、防御魔法なのか?!」

魔法の使えないシルビアさんにまで見えるほどの防御魔法ってこと?それって…なんかマズくない?

私たちは急いで外に出た。





「ナ、ナコさん…。」

「カ、カルロさん…。」

私とカルロさんは空を見上げて呆然としてしまった。

「私たちやらかしちゃいました?」

「いや、成功だと思うんだけど…ちょっと…その…強すぎたのかな?」

カルロさんが簡単な攻撃魔法を空の防御魔法に向けて打っている。

「さっきから魔法を放ってるんだけど…完全に無効化されてるね。これだと外側からの魔法を防ぐことはできるけど内側からも魔法を外に放てない。」

ということは…。

「つまり…魔族襲来は防げるけど、こっちから撃退はできない…ということですか?」

「うん。」

私はまた空を見上げて呆然と立ちすくむ。

すると待ち人がやってきた。口も機嫌も悪い待ち人が。

「何がどうなってるんですか?お前ら何した。」

「あ!ダルシオンさん!」

「ダルシオン…その…ごめん。」

私もカルロさんも待ち人に喜んだのも束の間、いたずらがバレた子どもみたいにシュンとしてしまう。

「説明してください。魔石だけでこれ程の強さは発揮できないのでは?」

大変ご機嫌麗しくないようだ。視線が怖い。

「それが…魔石だけだと範囲が小さくなるかもって話しただろ?それを補う為にナコさんに発動時に光魔法を少し込めて貰ったんだ。そしたら…範囲が広がるのではなく、強固になっちゃった…というか…。」

不機嫌な鬼畜魔導師に慣れているのか、カルロさんが説明していく。

「ナコ殿の込め方の問題ですかね?」

「私また…やらかしました?」

「なんとも言えません。」

またやらかしたのか?これはやはり私か?久しぶりにやらかしちゃったか?

すると今度は私の味方がやってきた。

「かなこ!大丈夫?!」

「あ、海。私またやっちゃったかも…」

「…おぅ…やっちまったか…」

私の一言で全てを察したのか、隣に立って空を見ながらポツリと独り言のように言った。

「あちゃ〜。こりゃシルビアさんもびっくりするわけだわ。」

なるほど…シルビアさんにも見えるほど…それはヤバい。海さんや…どうしよう…。

この責任をどう取ろうか周りの人達の顔色を窺っていると、思いついたようにカルロさんが手をポンっと叩いた。

「あ!そうだ!海さんに闇魔法放ってもらったらどうだろう?」

「耐久性のテストってことですか。まぁそれはやっておくに越したことはないですね。ちなみに国境付近に待機させている騎士団から連絡は来ました?」

「来ましたよ。つい先程。」

ダルシオンさんの疑問に答えるようにサントスさんが現れた。死にそうな顔してハァハァしながら。

「サントス。よくここまで登ってこれたね。」

「…えぇ。息も絶え絶えです。」

そう言うとサントスさんは手紙をカルロさんに手渡した。

この人ここまで登ってくるだけでこんななの?さすが病弱。他の人に任せればよかったのに…。

サントスさんを眺めながらそんなことを考えていると、海が私に耳打ちしてきた。

「サントスさんこの塔に登ってみたかったんだって。いつも周りに止められるから。」

「なるほどね…きっともう二度と登らないね。顔死んでるもん。」

海にそう答えると2人で苦笑いしてしまった。

そんなことをしてる間にカルロさんが手紙を開いて読み始めた。

「国境より1キロほど内側に張られてるみたいだ。人が通る分には問題ないけど、魔道具なんかは阻まれて外に持ち出せないみたい。」

すかさずダルシオンさんが言う。

「商人は怒るでしょうね。」

「まずいな…」

カルロさんも頭を抱えている。サントスさんは……ちょっと放置しよう。今声かけられる状態じゃない。

「海どうしよう。私のせいだよねこれ?」

「いやー。あの雰囲気からすると元々そうなるかもって顔してない?もしそうならダルシオンさんが既に射殺すような視線を送ってくるはず。」

確かに私のせいなら始めから私を睨んで嫌味を言ってくるはず。なのに今回はそれもない。ということは…お咎めなし?

「…それより海。闇魔法でテストするとか言ってたけど闇魔法使えるの?」

私はさっきの話で気になってたことを聞いてみた。

「いやそれがさー。使ったことないんだよね。そういうの以外を練習してたから。あと怖くて使えない。もしもの事考えたら…破壊と消滅だよ?」

「確かに…。」

闇魔法は一歩間違えたら国まるごと吹っ飛ぶかもしれない。小規模でも危険だ。城壁壊すなんてレベルじゃない。

「とりあえず海殿。テストしますので空に向かって闇魔法放ってください。」

そんなことお構い無しにダルシオンさんが海に言う。それに反論したのはカルロさんだ。

「あ!ダルシオン…その…闇魔法の訓練はしてないんだ…。」

「はぁ?まだやってなかったんですか?」

「その…もしもの対処ができなくて…。」

しょんぼりアライグマの登場。カルロさん、頑張って鬼畜魔術師をなんとか説き伏せて!

「ナコ殿、俺とカルロ殿と3人で海殿に防御魔法を張ります。海殿その中で闇魔法を放ってください。」

私の願いは届かなかった。使えないアライグマを睨みつけるとしょんぼり増し増しだった。

「えっ?!でも私使ったこと…」

「やれ。」

「はい。」

抗議の言葉も虚しく問答無用でやれと言われた海は素直に返事をした。死んだ魚のような目をして…。


暫くすると、塔の上から下を見ていたダルシオンさんが言った。

「下から合図が来ました。国王の許可も取りました。やっていいです。」

私は不安を取り除こうと慌てて聞く。

「あの!中の海は大丈夫なんですよね?」

返事をしてくれたのはカルロさんだった。

「海さんは大丈夫だよ。闇魔法を放つ海さん自信が闇魔法の驚異に晒されることはない。」

「それより闇魔法ができるかの方が心配です。」

ダルシオンさん言い方…。いやまぁそうなんだけど…。

私は防御魔法の中で不安そうに空を見上げてる海を見つめた。

「海!ファイト!」

「だ、大丈夫かな?顔色悪そうだけど…。」

「緊張でもしてるのでは?」

カルロさんとダルシオンさんの言葉に私も不安が募る。そしてもう一度よく見ると、海の様子がおかしい。緊張や不安というより…怯えてる?

「…海?」





ヤバい。なんか嫌な予感がする。

私はさっきから感じる違和感の正体を探っている。自分の中に何か黒い物がふつふつと湧き上がってくる。なんだろうこの感じ。

怒り?恐怖?

とりあえず何か嫌なものであることは間違いない。

「海さん!さっき言ったイメージでね!」

カルロさんが声をかけてくれるのに頷いて答える。

許可が降りるのを待っている間、カルロさんは闇魔法を使うイメージを教えてくれた。いつもの魔法の練習の時のように。一発勝負だけど…。

私は掌に闇魔法を出してみる。黒い光の玉のような塊が現れてきてパチパチと掌の肌を突き刺してくる。そしてこれを上に向かって投げるイメージ。

よし!と意気込んでこの光の玉を投げようとしたら、その光の玉が大きく弾けた。

バチッ!

そして私の周りに飛び散った。

防御魔法に当たったから、かなこ達に被害はないけど、足元の石床が少しエグれている。

「海!大丈夫?!」

かなこが声をかけてくれているがそれどころじゃない。

なんだ?今投げる瞬間黒竜が出てきて止めた気がする。やめろってこと?

私はもう一度やってみた。光の玉を出して…空に向けて投げる!

バチバチっ!!

「うわっ!」

さっきより大きく弾けた。私の周りに張ってある防御魔法にぶつかって跳ね返って足元に落ちた。

え?何?なんで止めようとしてるの?

「海殿。無理ならやめます。どうしますか?」

ダルシオンさんが眉間に皺を寄せて見ている。私は首を横に振った。

「もう1回だけやらせてください!」

そう言って私は深呼吸をした。

黒竜。なんで止めるの?私じゃダメ?

答えをくれない黒竜に問いかける。

これが出来なきゃ私は何の役にも立たないんだよ。お願いだから…邪魔しないで。大丈夫。白竜を殺すために使うんじゃない。大丈夫だから。

すると最初に感じていた湧き上がるような黒いものが消えていったように感じた。

私はもう一度やってみた。

そして空に向かって黒い光の玉を投げた。

黒い光の玉は真っ黒な光になって真っ直ぐ空に伸びていき、オーロラのような防御魔法を突き破って空高く飛んでいった。黒い光は空高くで霧散した。そしてオーロラの穴はすぐに修復して元に戻った。


テストが終わり、私とかなこは魔法室で結果を待っていた。

「海?大丈夫?」

机に突っ伏している私に声をかけるかなこは心配そうだ。

そりゃそうだ。テストが上手くいったとは言えないから。突き破ってしまった。すぐに修復したけど怪しい。ダルシオンさんもカルロさんも微妙な顔してた。

「かなこ…失敗かな…。私が放った闇魔法が強すぎたのかな…。私やっぱり危険だよね…。」

「でもすぐ穴塞がったよね?大丈夫じゃない?」

かなこが私を励まそうとしてくれてるのがわかる。でも私の気持ちは沈んだまま。

こういう時…どうやって立ち直ってたんだっけ?かなこの励ましだけじゃなくて自分でも何かしてたはず。思い出せない…まさか記憶の欠落ってやつ?

「…はぁ…」

ため息をついてかなこに愚痴る。

「闇魔法なんて誰が考えたんだろうね。そもそも魔法ってもっと楽しいものだと思ってた。ふわふわ物浮かせたりさ、花咲かせるとかさ…。せっかく魔法使えるようになったのに危険な闇魔法なんて…こんなことになるなら黒竜になる前の方が役に立ててた気がするよ…。」

するとかなこが少し考えてから口を開いた。

「そうかな?あの時より今の方がステータス高いし動けてない?あの時はなんにもないとこで転んだりしてたじゃん。ちょっと面白かったけど…。」

「面白がってたのかい?酷いねー君はー。」

「はいはい。ごめんって。でもさ…海は黒竜なんでしょ?黒竜の使命っていうか…この世界の浄化もできないってことはさ…何するの?黒竜はなんで海のところに来たの?」

そういえば黒竜はなんで私のところに来たんだろう?エンパスがあるから話せると思った?でも結局話せなかったから私じゃなくても良かったんじゃ?

「そうだよね…黒竜なにしたいんだろうね。さっきも闇魔法使おうとしたら邪魔されたし…。」

「やっぱり!なんか様子変だなって思ってた!」

かなこは机に乗り出してきた。私は机に(ひたい)をグリグリしながら続けた。

「これが出来なきゃ私なんの役にも立たないんだよ〜、白竜殺すわけじゃないよ〜って言ったら大人しくなった。」

「ふーん。…黒竜ってなんか海に似てるよね。自分は役に立たないんだって思ってるところが。」

そうかな?私そんなこと…思ってたか…。黒竜も自分は世界の浄化の役に立たないって思ってるみたい。それを否定してくれたのが白竜。確かにそういう所だけ見れば似てるか。

「役に立たないのは事実だよ。国王様たちも私を危険視してるし。この国にも居ずらくなってきたよ…。なんか肩身が狭いというか…。」

ネガティブ思考な私が出てきたのを自覚する。かなこの前ではどうしても情けない部分が出てきてしまう。

「海は私の側に居てくれるだけでいいんだよ!じゃないと私…またやらかしちゃう。」

私は、ふふっと笑ってしまった。

「感覚派の天才魔術師は一歩間違うとへっぽこ魔術師だもんね〜」

揶揄うように言うと、かなこは

「ソウデース。」

と口を尖らせて言った。

「そういえば黒竜って白竜に恩があるんだよね?他の竜から役たたずって言われてたところを助けてもらったとか…。そもそもこの世界の浄化をする竜って何?浄化って何?竜について分からないことだらけだよ…。海なんか知らないの?黒竜なんか言ってなかった?竜探しって本当にみんな手伝ってくれるんかな?」

かなこの質問攻めにちょっと面倒くさくなってきた。マスターから聞いた話をするわけにもいかないし、私もそこまでは分からない。竜探しもこの国の人と一緒にできるだろうか…。わだかまり…というかお互い信じきれてない関係なのに…。ヘタしたらどさくさに紛れて殺されるかもしれない。

またネガティブ思考が出てきてしまい、だんだん全てが面倒くさくなってきて投げやりになってきた。私はなんの気なしに呟いた。

「一人で竜探しに行こうかな…なんか色々面倒くさい…。」

するとかなこが黙った。気になって顔をあげるとそこには私を見つめるかなこがいた。

「え?かなこさん?どした?」

予想外の反応に戸惑って聞いてみると、やっとかなこが口を開いた。

「海。探しに行こう。2人で。」





俺は魔法室に向かいながらこれからどう説明しようか悩んでいる。

防御魔法…結界と呼んでもいいだろうアレはかなり強固だ。だが海殿の闇魔法は突き破った。それはつまり、海殿の放った闇魔法が強力過ぎるということ。

それを踏まえて国王達が出した結論は、俺の意に背くものだった。反論はした。だが揺らがなかった。

「海さん…いや、黒竜は危険だ。マスター同様、強すぎる力は災いしかもたらさない。強固な魔法の(おり)に入れて監視しよう。すまないとは思う。だがこれは国を守るための措置だ。他国に漏れることすら危険なのだ。分かってくれ…。」

俺の後ろには騎士団が数名ついてきている。力ずくで捕らえると言っていたのを、俺が説き伏せると言ってこの形に収めた。

魔法室の扉が見えてきて、俺は後ろの騎士団達に伝えた。

「まず俺が入って話します。扉を明けるまで待機していてください。突然あなた方が入っていったらそれこそ構えてしまいます。いいですね?」

最後は圧力をかけながら言った。そのおかげか、騎士団達は顔を見合せて頷いた。

よし。これでとりあえず落ち着いて話はできるだろう。

俺は魔法室の扉を開こうとしてピタリと止まった。後ろの騎士団に気づかれないほどの一瞬だ。

2人が…いない?

魔力感知を広げても城の中から2人の魔力が感じられない。

そのまま扉をゆっくり開いていく。俺はその時、不思議と口が弧を描いていた。そして心の中で思った。

あの小娘共め…よくやった…と。


最後までお読みくださりありがとうございます。


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