第四十三話 一方的なご褒美
私は今、黒竜になる前まで過ごしていた部屋にいる。黒竜になってからはかなこから離れないようにかなこの部屋で過ごしていたから、ここに来るのは久しぶりだ。
そしてこの部屋には私1人ではない。
「うーん。やっぱりスカートの方が良くない?」
「でも海本人がスカートよりパンツの方が良いって。」
「そうですね。私もパンツの方が動きやすいと思います。騎士団長としての意見はどうです?」
「あーまぁ。戦う時はそうかな。でも動きやすさって言うと寝巻きみたいのが一番かな。」
「シルビア。あなたそれじゃあ海に寝巻きで出歩けって言うの?」
「そういうわけじゃないけどさ…。」
レイチェル様、かなこ、ナタリーさん、そして島から帰ってきたシルビアさん、そして人間の姿に戻った私がいる。
今は私の服をどうするかを話し合っているところだ。というか私は最初に意見を言っただけでそれから口を開いてない。されるがまま、着せ替え人形と化している。
時は遡り1時間前。
魔法室でかなこにローブを投げつけられた後、その騒ぎを聞きつけたシルビアさんとカルロさんが部屋に飛び込んできた。
「おい!どうした?!」
「今悲鳴のような声が聞こえたよ?!」
「あ、シルビアさん、カルロさん。おかえりなさい。」
私は至極まともな返しをした…はずだったのに…。
「海…お前また生まれ変わったのか?」
シルビアさんが目をぱちくりさせながら言った。そしてそのままカルロさんに声をかける。
「なぁカルロ、どう思…う…って何やってんだ?」
カルロさんは首を痛めそうな程顔を後ろにグリンと回している。
「い、いや…その…ぼ、ぼ、僕は見てないよ!ローブ着てたからね!」
あぁそういう事か、と思ってカルロさんに、大丈夫だと伝えようとしたら、
「カルロさん!出てってください!」
とかなこが大声で言った。
「ご、ごめん!」
そう言うやカルロさんは音速を超える勢いで部屋から出ていった。
僅かな沈黙の後、シルビアさんが手をポンっと叩いて言った。
「あぁそうか、カルロって男だったわ。」
その言葉に私とかなこはカルロさんに同情した。
その後シルビアさんがレイチェル様とナタリーさんを連れてきて今に至る。
そもそも何故、服1枚にこんなにみんなでワイワイやっているかと言うと、私は人間の姿になったけど体を上手く動かせないからだ。本当は黒竜なのに人間という器に無理やり詰め込んだ状態。イメージ的には、サイズの小さいパツパツの宇宙服を着ているような感じだ。歩こうとしても足がもつれて転ぶ。何か持とうとすると落とす。挙句の果てには常に体が締め付けられるような痛みがあり、息をするのも難しい。
つまり、最悪だ。こうなるなら黒竜のままの方が良かった。
マスターの一方的なご褒美は私にとっては苦痛だ。あの人の嫌がらせなのではないかと思うほどだ。いや、あれはきっと嫌がらせだ。怒らせてしまったから。イケオジと言ってウハウハしていた自分を殴ってやりたい。
「海。どっちがいい?」
かなこにパッと目の前に差し出されたのは、寝巻きのワンピースとふわふわフリフリのワンピースドレス。
「えっと…どちらも却下です。転ぶのでスカートは邪魔かな…と。」
そう言うと、椅子に反対向きに座って背もたれに頬杖をついてるシルビアさんが
「ほらな。やっぱそのチョイスはダメだろ?いっそ騎士団の服にするか?」
と言った。それにすかさずレイチェル様が反論。
「ダメよ!騎士団と間違われちゃうわ!騎士団がこんなヘロヘロでヨロヨロだなんてイメージついたらどうするのよ。」
レイチェル様の素直な言葉がグサッと心に刺さった。それに気づいたのかナタリーさんが
「レイチェル様。海さんはそのうち普通に動けるようになると思いますよ。ですからそれまでの間を凌げる服を考えましょう。」
と言って私の方をチラッと見て微笑んでくれた。
ナタリーさん…ありがとうございます。あなたは私の女神様です。
「そうね。じゃあやっぱりこのドレスを…」
「王妃。お前なんもわかってねぇだろ。ドレスなんか動きづらい服の代名詞じゃねぇか。」
「わ、私も海の希望通りパンツスタイルがいいかなと…。」
シルビアさんとかなこがレイチェル様の暴走を止めてくれている。
それから1時間。やっと決まった。
私がこの国に来た時に貰った服に似たもの。それの夏服バージョン。そう今は真冬。北国の真冬。極寒の中夏服で出歩くなど私だけだろう。だが問題ない。寒さを感じないのだ。黒竜の時でさえ寒さを感じていたのに人間の姿になったら感じないのだ。どういう原理かはわからないが寒くないなら軽さを重視して夏服にしようということになった。
「海。どう?」
と、かなこが聞いてきたから、親指をグッと立てて笑顔で返す。指先は力が入らずプルプルしてるけど。
「よし!じゃあこのまま国王達のとこ行ってこい。病弱もカルロも国王も待ちくたびれてるぜきっと!」
「あ、そうですね。皆さんありがとうございました。じゃあ行ってきます。」
シルビアさんの言葉の後に私はお礼を言って歩き出した。
ビターン!
そして盛大に転んだ。
「「「はぁ…。」」」
レイチェル様、かなこ、シルビアさんのため息が聞こえた。
「シルビアさん。海さんを運んで差し上げたらどうでしょう?」
私の女神様ナタリーさんが優しく提案してくれた。
「…そのほうが早そうだな。」
「ご迷惑をおかけします。シルビアさん。」
王の間に来て中に入ると国王様、宰相さん、カルロさん、そして今は会いたくないダルシオンさんがいた。
「海連れて来たぞ。」
「シルビア…その…ありがとう。」
国王様の困った顔が脳裏に浮かぶ。
「シルビア殿。海殿はあなたと同じ人間の女性ですよ?」
「はぁ?わかってるよ。見りゃわかるじゃん。」
宰相さんの言いたいこともよくわかる。
「シルビア…その…。担ぎ方が…ちょっと…。」
カルロさんありがとうございます。同情します。損な役回りばかりでかわいそう。
「担ぎ方?」
「…イノシシ団長。その担ぎ方だと海殿の尻しか見えません。もう下ろしてください。倒れようが座ろうが何でもいいので。」
ダルシオンさんの言い方はムカつくがその通りだ。
私は今シルビアさんの肩に担がれている。皆様に尻を向けて。私の視界にはシルビアさんの腰しか見えない。
「あぁそういうことか。最初からそう言えよな。海下ろすぞ。」
そう言ってシルビアさんは私を下ろして座らせてくれた。そして真後ろに立って膝で私の背もたれ役になってくれた。ちょっと痛いけど倒れずに済みそうだ。
こういう気遣いができるのになぜこの人はあらゆる場面で雑なのだろう?不思議だ。
「えっと…お待たせして申し訳ございません。」
とりあえず謝っておこう。2時間も待たせたのだから。
「海さん。事情はナコさんから聞いたよ。我々とも話せるようにマスターが気を使って人間の姿にしてくれたそうだね。」
国王様、違うんです。これはただの一方的なご褒美なんです。私は黒竜のままの方が良かったんです。
とは言えるはずもなく、
「あー…はい。そうです。アリガタイデスヨネ。」
と答えた。
ダルシオンさんは疑ってるような顔をしている。多分この人も分かってるんだ。嫌がらせだと。
「色々と不便もあるでしょうが、そのうち馴染んでくるだろうとカルロもダルシオン殿も言ってます。それまではゆっくり過ごしてください。」
宰相さんなんか雰囲気が柔らかくなった?同盟組めたからかな?
「一人だと不便も多いだろうからナタリーさんを側につけておくことになったよ。ね?サントス。」
「えぇ。ナタリーが自分から言ってきましたので気になさらずしっかり甘えてください。」
カルロさんさっきから視線を合わせてくれないな。魔法室でのことが気になってるのかな?別にローブを羽織ってたから見えなかったと思うんだけどな。むしろマスターの方が…ガッツリ見られてたと思うと…。
「ありがとうございます。お言葉に甘えてそうします。」
そう言って立ち上がろうとしたらまたシルビアさんに担がれた。
「部屋行くぞー。」
ずんずんと進んでいくシルビアさん。今度は尻じゃないから顔を上げて皆さんに
「失礼しまーす」
と挨拶して出てきた。
部屋に運ばれてベッドに下ろされる。
「じゃあなんかあったらすぐ言えよ。無理すんなよ。」
そう言ってシルビアさんは部屋から出て行った。
「あ、ありがとうございます!」
聞こえたかはわからないがお礼を言ってそのまま後ろに倒れるようにベッドに寝ころんだ。
そしていつもの悶々タイム。
ダルシオンさんまだ怒ってるんだろうな。勝手に心読んだし、大事な魔法使っちゃったし。マスターもあれ相当怒ってたな。こんな嫌がらせするくらいだもんな。でもあれはマスターが酷い!かなこに全部話そうかな。でもどこまでが真実かわからなくなってきちゃったな。マスター本当のこと言ってくれてたのかな?
コンコン
扉を叩く音で悶々タイム終了。
「はい!どうぞ!」
返事をするとナタリーさんが入ってきた。
「海さん。気分はどうです?」
いつもの優しい顔で聞いてきたナタリーさんに
「気分は最悪です。」
と苦笑いしながら答えた。
ふふっと笑いながらナタリーさんは私の隣に座ってきた。もちろんベッドに座る許可をスマートに取りながら。
「こうして海さんとお話しするのはいつぶりでしょうか。」
「えっと…いつだろう?」
ナタリーさんの問いに記憶を遡らせた。
「黒竜がこの国に来る前ですねきっと。」
悩んでいたらナタリーさんが自分で答えてしまった。
言われてみればそうかもしれない。さっき着替えている時も直接ナタリーさんとは話していなかったかもしれない。なんせあのメンツだ。勢いが凄くて受け答えるのに必死だった。
「そう…ですね!確かに!冬支度の時によく話してましたよね。あ!冬支度間に合ったんですね。途中であんなことになって放り出してすみません。」
黒竜に食べられて、担当していた仕事をほったらかしにすることになってしまったことを今更謝る。
すると突然ナタリーさんが私を包み込むように抱きしめてきた。
「え⁈ナ、ナタリーさん⁈」
声をかけるが黙ったままだ。どうしたのかと手を背中に添えたら、私の肩口で静かに話し始めた。
「あなたに何のお礼も言えなかったことをずっと後悔していました。冬支度は海さんのお陰で順調でした。いなくなってしまった後にようやくあなたの素晴らしい働きぶりに気づきました。本当にありがとうございます。」
ナタリーさんは元に戻って私の肩に手を置いたまま
「やっと言えました。」
と涙を浮かべながら微笑んだ。私はなんて綺麗な涙なのだろうと思った。
「さて!お茶でも入れましょう!ティータイムです!」
口を開こうとしたと同時にナタリーさんはそう言ってあっという間にお茶を入れに行ってしまった。
え?何?さっきまでの空気はどこへ?
私はその場に固まったまま準備されていく様子を眺めていた。
「さあ海さん!できましたよ!」
机の上にはアフタヌーンティーと呼ばれるセットがこれでもかというほどひしめき合っている。
「あの…量が多いような…。」
「問題ありません。好きなだけ食べてください!」
満面の笑顔でそう言うとナタリーさんは美味しそうなお菓子に手を付けた。
「じゃあ…いただきます。」
私も入れてくれた紅茶に口を付けた。カップを落とさないように両手でしっかり持って。
「美味しい!この紅茶美味しいです!何か美味しく入れる秘訣とかあるんですか?」
「実はこの茶葉を使うのはサントス様だけなんです。入れ方はいつもと同じなんですよ。」
「え⁈そんな貴重なもの私の為に使っちゃっていいんですか⁈」
慌ててそう聞くと、ナタリーさんは口に人差し指を当てて
「秘密ですよ?」
といたずらっぽく言った。
私とナタリーさんは悪戯をしているような楽しい気分になって笑ってしまった。
お茶とお菓子を2人で楽しんでいると、突然ナタリーさんが聞いてきた。
「海さん。マスターと色々お話しされたんですか?どうでした?」
私は突然の問いにびっくりして紅茶を吹き出しそうになった。
「えっ⁈何ですか急に?」
ナタリーさんは黙ったままだ。
「そう…ですね…。色々話しました。でもなかなかうまく話せない…というかペースに乗せられてしまうというか…。よくわからない人です。私の中では…。」
そう答えるとナタリーさんも同じことを思っていたのか
「ですよね。何考えているのか分からないですよね。」
と言い、
「少し私の話をしてもよろしいですか?」
と聞いてきたので、もちろん、と促した。
「私は昔から物を作るのが好きでした。分解して中身の構造を知って元に戻す。こういう机や棚なんかも作りました。でも周りはそれをよく思わなかったようで…女がそんなもの作るな、いつか怪我でもしたら嫁げなくなる、と言われていました。そんな時、マスターに出会ったのです。彼は私の話も聞かずに全てを知っているかのように接しました。そしてこの才を活かしてみないかと言われたんです。そしてサントス様に紹介してくださいました。サントス様はそのころ次期宰相として認められるかどうかという大事な時期でした。私はサントス様の身の回りの世話をする役目を与えられました。実際その役目がどれだけ大変なのかすぐに理解できました。実はサントス様は片付けが苦手なんです。その辺にすぐ山積みにします。でもどれがどこにあるのか把握しているのですぐ欲しい物を見つけられます。ただ、それを取り出すときに横にずらすこともなく山の中から引っ張り出すんです。察しの通り、山は崩れ…より一層散らかります。しかもそれを片づけようとすると、触らないでくれ、散らかされると困る、と言うんです。私はなんて身勝手で冷たい人間なのだろうと思いました。こっちは好きでやっているのではないのだ、と、はらわたが煮えくり返るようなときもありました。そしてある日、思いついたんです。サントス様が不在の間に片づけてしまおうと。」
ナタリーさんは紅茶を一口飲み、にやりとして聞いてきた。
「どうなったと思います?」
私は全く想像もつかなくて首を横に振った。
「棚を作り、本を規則正しくわかりやすいように並べました。散らかったペンや紙も分別してしまう場所を作りました。大事な書類は一か所にまとめ、中身をさっと目を通して分類ごとに棚に詰め込みました。そしたら床が見えてきたんです。埃やらインクやらが零れていたのを掃除して、ピカピカに磨き上げました。私は思う存分掃除して片づけました。もう心残りはない!っというほどに。そして帰ってきて片付いた部屋を茫然と眺めているサントス様に言ったんです。明日から私は来ません、今までありがとうございました、と。荷物をまとめて彼の元を去り、ずっと寝泊まりしていた宿を出て故郷に帰ろうと考えながら宿に向かっていたら、後ろから声をかけられました。なんとサントス様だったのです。」
「え⁈追いかけてきたんですか⁈」
私はつい聞いてしまった。
「そうなんです。しかも、走ってきたのか息を弾ませながら。今思うとなんて危ないことを…と思います。今やったら倒れます絶対。」
確かに病弱とシルビアさんに言われるほど体が弱いらしい。多分今そんなことしたら翌日カルロさんが一人忙しそうに走り回っているのを見かけるだろう。
「あ、すみません。続きをどうぞ。」
「はい、そうですね。」
話をさえぎってしまったことを謝って先を促す。ナタリーさんは優しそうな顔をしながら続きを話してくれた。
「彼は言いました。あなたにあのような才能があるとは思いませんでした…とても過ごしやすい部屋になりました、どうやったのですか、っと。私はやったことをすべて話しました。するとサントス様は曇った顔で、女性であるあなたがあの棚を…と言いました。あぁやはりそのような反応なのだな、と私は悲しいような諦めたような気持ちになりました。するとサントス様は、素晴らしい、私は何故今まであなたを知らなかったのでしょう、ぜひ私の元であの部屋を維持し続けてください、と言ったんです。だから私は言い返しました。片付けくらいご自分でやってください、と。そしたらサントス様は至極真面目な顔で言いました。私はできません、片づける必要がなかったからです、ですがこれからは違います、あなたが共に生活するのですから、と。どういう意味かさっぱり分からずどういうことかと聞き返しました。するとサントス様は不思議そうな顔で言ったんです。妻であるあなたが暮らしやすいようにしてください、と。」
「……えっ⁈プロポーズだったんですか⁈」
ナタリーさんはくすくす笑いながら
「そうなんです。プロポーズだったみたいです。」
「そんなプロポーズ…マジか…。」
「それを聞いて私は笑ってしまいました。それと同時にとても嬉しかったのです。初めて私の好きな事を認めてくださる方に巡り合ったのですから。それから暫く条件付きで同じ屋根の下で過ごしました。条件というのは結婚です。サントス様が宰相になるまでの間に私が彼に対して不満があれば婚約は解消。不満がなければ妻になる、というものです。それからのサントス様は人が変わったようにとても優しく接してくれました。片付けは相変わらずでしたが、私の作るものすべてに本気で興味を持ってくれたんです。そして彼のあの膨大な知識を組み込んでくれるのです。これはなんだ、どう使うんだ、こうしたらいいのではないか、と。2人で作る楽しさを教えてくれました。」
「今こうしてサントスさんの妻ということは…」
「えぇ。同じ屋根の下で暮らし始めて2日目のことです。」
「はやっ!えっ⁈その後2日であの人宰相になって結婚したんですか⁈」
ナタリーさんは私の反応が面白かったのかくすくす笑いながら
「そうです!」
と言った。
「宰相と言っても次期宰相が確定しただけなんですけどね。その時点で私がOKを出しました。……きっとあの時追いかけてきてくださった時にもう私の気持ちは決まっていたのかもしれません。そのことに気づいていたからサントス様もプロポーズしてくださったのかも…と今なら思えます。」
カップに紅茶を注ぎながらナタリーさんは
「とても優しくて頭のいい方ですから…。」
と、ポツリと言った。
そして紅茶を飲むと私に言った。
「海さん。私がこうしてサントス様と出会えたのはマスターのおかげなんです。」
「え?あぁ確かにそうですね。マスターが紹介してくれたんですもんね。」
ナタリーさんはニコニコしながら私を見てくる。私は何故だか居心地が悪くなって紅茶を口に運んだ。
そして先に口を開いたのはナタリーさんだった。
「海さん。マスターもサントス様も同じなんだと思います。頭が良すぎて、多くの知識がありすぎて、人の心が読めてしまう。きっと人付き合いが面倒になってしまうでしょう。心を閉ざしてしまうのも無理はありません。ですがサントス様には私がいます。全てを理解することはできませんが彼の隣にいることは出来ます。それが私のサントス様へのご褒美なのです。私もサントス様からご褒美を貰っています。私を受け入れてくださり、喜びや楽しさをいただいています。」
きっとナタリーさんの言葉は私の心に響いたのだろう。言葉が出てこなかった。
私はスキルで人の考えを読める。でもそれでダルシオンさんを傷つけてしまった。何とかしたいという身勝手な理由で。そしてその失敗をした憂さ晴らしをマスターにぶつけてしまった。
一方的なご褒美ではなく、お互いに与え、与えられる関係を構築しているサントスさんとナタリーさん。私にもそれができるだろうか。ナタリーさんのようにうまくできるだろうか。マスターの心にはまだ感情があるのだろうか。サントスさんより何十倍、何百倍も長い年月を生きてるあの人の心を動かせるだけのご褒美を与えられるだろうか。
私は俯いていた顔を上げてナタリーさんを見つめた。
「ナタリーさん。ありがとうございます。」
そういうといつもの優しい笑顔で微笑んでくれた。
最後までお読みくださりありがとうございます。
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