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第三十六話 魔石組の出発

晴れた空にキンと冷えた朝の空気。みんなの口からは白い息が出ている。

「それじゃあ皆さん出発します!」

カルロさんの声に全員が気を引きしめる。私もまだ寝ている海を抱えている。起きた時に黒竜か海か分かるだろう。ちょっと不安だ。

「皆、気をつけてくれ。シルビア、ダルシオン、カルロ…くれぐれも頼んだぞ。」

国王様が見送りに出てきてくれている。それも心底心配そうな顔で。

「私が不在の間ヘマやらかすなよ?同盟もちゃんと組めよ?帰ってきたら国滅亡してましたとか勘弁な。」

シルビアさんがいつも通りの口調で国王様に言う。国王様にあんな口調で話すのは彼女くらいだろう。

「あぁ。こちらは任せてくれシルビア。」

国王様も普通に返事するんだよなぁ。他の国なら罪に問われるレベルらしいんだよなぁ。

「シルビア。口の利き方!国王なんだよ?」

カルロさんが慌ててシルビアさんに言うが、はぁ?と関係なさそうな反応をしている。

「漫才してないで出発しますよ。」

呆れた様子のダルシオンさんが2人に声をかけて歩き出す。不機嫌そうなのは多分朝早いっていうのと寒いのが原因だろう。鬼畜魔術師は根っからのインドア派だから暑さや寒さに大変弱い。

「国王様。行ってきます。」

私は丁寧に挨拶をしてダルシオンさんの後を追う。

「行ってらっしゃい。」

国王様は私たちが見えなくなるまで見送ってくれていた。いい人なんだよなぁ国王様。


ザクザクと雪を踏みしめながら転移術の場所まで来た。皆は雪に埋もれた陣を掘り出そうとしていたがカルロさんがそれを止めて、雪の上に陣を描くと言って指示を出している。

それを眺めているとシルビアさんが隣に来た。

「ナコ。そいつどうだ?海か?」

手元の海を指さしながら聞いてきた。

「まだ寝てるみたいで…」

「いい気なもんだよな〜。私も黒竜になって楽してぇわ。」

と腰に手を当てて笑いながら言った。

「ですね。私もそう思います。」

2人で笑いながら話しているとモゾモゾと海が動いた。

「海?起きた?おはよー。」

海は起きたばかりのショボショボした目でポケーっと周りを見つめ、ブルっと身震いした。

「さっむ!」

海の声だ。

「シルビアさん。海です。起きて寒いって言ってます。」

通訳するとシルビアさんは

「寝坊助おはよー。フェルス王国の冬の朝はバナナで釘が打てるぞー。」

と言って笑っている。

海は毛布に潜り込んで

「そんなバナナ!」

と言っている。

私は笑ってしまい毛布をパタパタして冷気を入れてあげた。

「かなこーやめてー死ぬー」

と言ってる海は元気そうだ。

そうこうしてる間に陣が描けたようでカルロさんがみんなを呼んでいる。

「陣の中に入ってくれ!一気に全員転移させるよ。」

ゾロゾロとみんな陣の中に入る。

そしてカルロさんとダルシオンさんが呪文を唱えると光の柱が現れた。そしてピカっと光って次に見えた景色は雪景色ではなくなっていた。

「さすが大陸の南。あったけー!」

誰かがそう言うと温かい空気に包まれていることに気づいた。ここも冬なのだろうが雪もなくこんな厚着をしていられないほどだ。

私はマフラーと手袋を取って鞄に詰め込んだ。海は見えないように毛布でつつみこんだ。

「海。暑いかもしれないけど船まではこれで我慢して。見られるとまずいから。」

「うぃー。あっついからはやくしてー。」

今にも溶けそうな声が返ってきて頬が緩んだ。


街に入ると視線が刺さる。そりゃそうだ。武装したフェルス王国の騎士団達が少人数とはいえゾロゾロ歩いているのだから。

「船まで黒竜見えないようにしといてください。」

ダルシオンさんの言葉に頷いてしっかり毛布を巻き直した。海は静かにしてくれている。街に入る前、

「私は石…私は石…」

と呪文のように言ってた。

周りを見渡すと色んな人がいる。私はフェルス王国から出たことなかったから新鮮だ。冒険者、獣人、商人、海沿いということもあって漁師もいる。

物珍しくてキョロキョロしながら歩いていたら人にぶつかってしまった。

「うわ!」

キュイ!

当たった衝撃で海も驚いたのか声が出てしまった。

「あぁ?今なんか変な音しなかったか?」

イカつい冒険者にぶつかってしまい、海の声を聞かれてしまった。

「い、いえ。あのすみません!」

「俺はいいけどよ…その包みなんだ?」

まずい。海に興味を持たれてしまった。

「おーっと!うちの連れが悪ぃな!おっさん冒険者か?いやー俺らここ来たばっかで道わかんなくてよ!海ってどっちの方だ?」

突然後ろから現れたチャミ君がぶつかった冒険者と話をしだした。

「ナコさん。こっち。」

するとジョン君が腕を引っ張って私を後ろに下がらせてくれた。気づくとチャミ君は冒険者と仲良さそうに話しながら手を振っている。

「いやー危ねぇ危ねぇ。ナコちゃん大丈夫だったか?」

「うんありがとう。危なかった…。海大丈夫?」

海に聞いてみると小さい声で

「私は石…私は石…」

とまた言っている。

「海も大丈夫そう。」

2人にそう言うと、2人ともホッとした様子だ。

「僕らの側から離れないで。」

「俺ら黒竜守り隊なんだからな!」

「チャミ。黒竜って言わないで。」

「そういうジョンだって今いったじゃん。」

2人の会話につい笑ってしまう。

「2人は久しぶりに帰るから嬉しそうだね。」

すると2人とも笑顔で、そりゃもちろん!と言った。

「おーい。案内役しっかり案内しろー!」

というシルビアさんの声が聞こえて慌てて3人で走っていった。





移動用の船について俺もジョンも口をあんぐり開けた。俺らがここに来た時の船の数十倍もあるデカさだったからだ。

「…ジョン。これ…乗るのか?」

「ま、まぁそうなんじゃない?僕こんな大きい船操れる自信ないけど…。」

俺もジョンと同じことを思っていた。

向こうから歩いてきたダルシオン先生をとっ捕まえて2人で聞いてみた。

「はぁ?そんなの騎士団に任せておけばいいんですよ。方向だけちゃんと指示してくれればOKです。」

と言われて、俺もジョンも安心した。肩の荷がおりたって感じだ。

まじで良かった。ヒヤヒヤしたわ。

俺はそのままさっきから気になってたことを先生に聞いてみた。

「なぁ先生。顔色悪くね?大丈夫?」

先生はバツの悪そうな顔をして目を逸らした。

ん?なんだ?

もう一度聞こうと口を開きかけたら

「先生…もしかして船苦手?」

どジョンが聞いた。

先生はギクッとしてボソリと言った。

「船酔い……」

「…………ぷ!だはははは!」

俺はそれを聞いて爆笑した。腹を抱えてめちゃくちゃ笑った。隣のジョンも肩が震えてる。

先生は耳まで赤くなって

「うるさいですよ!慣れてないんです!」

と怒っている。

俺は涙を拭きながら先生の肩にポンっと手を置いて

「船酔いは慣れっすよ!吐くだけ吐けばいいんす!」

と言ってあげた。

「波と一体になれば大丈夫です。」

ジョンもコツを教えたが

「一体になるとか意味わからん。波は波です。」

と先生は口を尖らせてボソッと言った。

まさか先生が船酔い体質だったとはな。船に関しては俺たちの方が先生だな。

だなんて思ってちょっと胸を張ってしまったのは秘密だ。


船にはもう荷物が積み込まれてあってすぐに出港できるようだ。俺とジョンは地図を広げながら方角を確かめて船長であるシルビアに教える。副船長であるカルロ先生にも方角の見方を教える。

「へぇー。お前らマジで海の男って感じだな。航海術が独特でおもしれぇ。」

「うん。本当にそう思うよ。そういう見方があるとはね。」

シルビアもカルロ先生も俺たちを見直したとか言ってる。見直されるほど俺たち評価低かったんか?

4人で話し合ってまずはシルビアとジョンが舵を取ることになった。

俺は暇だから船の中を散策しようとあちこち見て回る。するとダルシオン先生とナコちゃんが話してるのを見つけた。

「島についても黒竜はすぐに出さないでください。獣人2人が村長とかいうのに話を通してからです。そもそも俺たちが島に降り立つことすらできるかどうか…。」

先生は少し不安げだ。というより警戒している?

「分かりました。あと…もうひとつ…」

ナコちゃんが言いにくそうに先生をチラチラ見ている。

「なんです?ハッキリ言ってください。」

先生…言い方ってもんがあるじゃん。つっけんどんな言い方なんだよなぁ。根はいい人っぽいのに…。

「その…海が…黒竜になっちゃいました…。」

「はぁ?!」

「えっ?!」

先生と同時に俺もつい声を出してしまった。それに気づいて先生とナコちゃんがこっちを見る。

「チャミ君?いたんだ。」

「いたなら声掛けてください。」

2人に言われておずおずと出ていく。

「いやなんか話してるから出てったらあれかな〜とか思って…へへ。」

笑ってやり過ごそうとしたが先生の鋭い視線にやり過ごすのは無理だと確信した。

「赤いのならまぁいいでしょう。で?ナコ殿。黒竜はどこです?」

「部屋で寝てます。鍵かけたので逃げることはないと思いますが…。」

先生…いい加減俺の事『赤いの』って呼ぶのやめてくんねぇかなぁ。というか黒竜に戻っちゃったってことはヤバくねぇか?島に着くまでに戻ってればいいけど…。

「島までは2日くらいあるからその間になんとかなるんじゃね?」

と俺はポジティブなことを言う。

「だといいんだけど…」

ナコちゃんは不安そうだ。先生も何か考え込んでいるようで黙っている。

微妙な空気を変えるために俺は違う話題を出してみた。

「それより先生。もう船動いてるけど船酔い平気か?」

「えっ?!もう出港したんですか?!」

と先生は血相変えて船のヘリに走っていく。そして船が動いて陸が遠くに見えるのを確認するとそのままヘナヘナと座り込んで

「あぁ…もう海の上だ…死ぬ…」

と力無さげに呟いた。

これは船酔いが苦手というより海の上が苦手って感じだな。もしかして…

「先生ってもしかして泳げない?」

先生は黙り込み、ナコちゃんはえっ!と声をあげる。

そして先生はゆっくりと振り向いて俺らを睨みながら言った。

「誰かに言ったら呪い殺す」





僕はシルビアさんと船の方向を確認しながら舵を取っている。

「そういやこの辺の海域って魔物出るんだろ?お前らよく大陸まで来たよな。」

シルビアさんが暇なのか話しかけてきた。

「はい。クラーケンとかアスピドケロンとか遭遇しました。あともう少し小さめのとかも。今考えると、海さんが魔物引き寄せてたんですよね。」

「あーそうだったな。海のスキルってやつだろ?また出るかな?」

シルビアさんは魔物が出て欲しいようだ。ニヤニヤしながら海を眺めている。

「シルビアさんって戦うの好きですか?」

と聞いたら驚いた顔で見られた。

え?何か変なこと聞いたかな?

シルビアさんは暫く海を見つめてから答えた。

「好きだよ。強いやつと戦うとワクワク…ドキドキ…なんていうのかな…こう…生きてるなぁって実感出来るじゃん?」

「生きてることを実感…ですか…。」

僕が分かったような分からないような顔で答えたから、うーんと言いながら話を続けてくれた。

「私はさ、孤児院で育ったんだよ。親の顔も知らねぇし孤児院の大人も結構適当だった。だから大人になっても楽しくないんだろうなって思ってた。けどいざ剣を握って生きるか死ぬかの状況になるとさ、心臓がバクバクすんの。そんで心の底から死にたくねぇ!って思うんだよ。不思議だろ?生きてたって仕方ねぇって考えてるのに生きたいって強く思うんだ。私はその感じがクセになったんだ。だから強いやつとの戦いは好きだよ。」

僕はこの人の言ってることが理解できなかった。僕は基本戦いは嫌いだ。だけどチャミが同じようなことを言ってた。強いやつとの戦いが好きだと。その時も信じられないと言った気がする。

「シルビアさん…早死にしますよ。」

素っ気なく僕が言うとシルビアさんは豪快に笑った。

「あっはっはっはっ!死んだらそれまでってことさ!私が弱かったってだけの事さ!」

僕はやっぱり理解できなかった。でもそれと同時に羨ましくもなった。僕はそんな風に割り切れないし、死にたくない。防御魔法だってあれから凄い練習してチャミより上手くできるようになった。黒竜を守るって名目で始めたけど途中からは自分を守ることを意識してた。防御魔法を張りながら戦えば危なくないかもって考えてた。

「ジョン。お前は戦い嫌いだろ?」

突然言われて一瞬言葉が詰まった。

「え、あ、はい。そうですね。できれば戦わずに穏便に終わらせたいです。」

「それでいいんだ。怖かったら逃げればいい。わざわざ死にに行かなくていい。好きなやつに任せとけばいいんだよ。そんでそいつが死んだらそいつにバカだなって言って花でも添えときゃいいんだよ。」

シルビアさんはどこか寂しそうな顔で言った。

やっぱり僕はこの人が理解できないと思った。


海の上を進んで約1日。日が傾きかけた頃。事件が起こった。船底から突き上げるようにドンという音がした。船は大きく揺れ、みんなよろめいた。舵を取っていたカルロさんはすぐに察したのか大きな声で騎士団に指示を出した。

「船の下に何かいる!気をつけて対処してくれ!」

シルビアさんを始め騎士団は全員戦闘態勢になり船の下を注視した。僕も目を凝らして船底を見る。すると大きな影が現れてきた。影はどんどん大きくなる。そして水柱を纏って海上に姿を確認して思い出した。

初めて島から大陸に向かう途中出くわした大きな魚。アスピドケロンだ。背びれの辺りに切り傷があるのが見えたからあの時の奴だ。チャミに斬られたときの傷だろう。

「おひょー!こりゃでけぇわ!」

シルビアさんが楽しそうな声をあげる。

僕は舵を取ってるカルロさんのそばに行き、船が転覆しないよう一緒に舵を手にした。

「チャミ!真っ二つにしろ!他のやつは魚の気を引け!」

シルビアさんがそう指示を出すと自分はアスピドケロンに飛びかかった。そして剣を振り下ろした。

ザシュ!

音と共に真っ赤な血が吹き出した。魔法も付与してないのにあの硬い鱗を斬ったのだ。

「すごい…」

僕はつい声に出していた。

すると他の騎士団たちも次々に襲いかかってザクザクと斬っていく。アスピドケロンが堪らず船に体当たりしようとした瞬間、雷の音がした。

バリバリバリ!

そしてそのままアスピドケロンは動かなくなり、チャミが船に降り立った。するとアスピドケロンは真っ二つになってズルズルと海に沈んでいった。

「よし!チャミよくやった!雷魔法の付与も完璧だ!」

「よっしゃ!」

シルビアさんとチャミは嬉しそうにハイタッチしてお互いを称えあっている。ほかの騎士団もチャミをバシバシ叩いて声をかけている。

僕は呆然とその様子を見ていた。まるで映画のワンシーンでも見ているかのように遠くの出来事に感じた。

「チャミ君。舵手伝ってくれて助かったよ。ありがとう。」

カルロさんの言葉にハッと我に返り、

「い、いえ。大したことは…」

と答えた。

「咄嗟に船が転覆しないように舵を手伝った君の判断は正しいよ。僕一人の力じゃ耐えられなかった。君はよく周りを見て動けるんだね。」

僕はカルロさんの言葉が妙にしっくりきたのを感じた。そしてさっきシルビアさんの言った事が理解できたような気がした。

戦いは好きなやつに任せておけばいい…か。

「僕じゃ大した戦力にはならないですから。こっちに回った方が役に立てると思っただけです。」

とカルロさんに言ってチャミのところに向かった。

「チャミ!」

「お!ジョン!今の見てたか?ズバッとやったぜ!」

ニカッと笑って言ってくるチャミの頭をスパンと引っぱたいて言ってやった。

「バカ。力みすぎだよ。踏み込む時に船揺れた。」

叩かれた頭を撫でながら口を尖らせて

「なんだよー。仕方ねぇじゃん力入るだろあれは。」

と不貞腐れている。

「あんなのに力入れるなんてまだまだだね。」

ニヤリと笑ってそう言うと、チャミは笑って、そうだなーなんて言ってる。

全く。ほんとチャミはバカだな。





船が大きく揺れて体制を崩し床に叩きつけられた。ベッドで寝ていた黒竜もびっくりして飛び回っている。

「あーほらこっちだよ!」

呼び寄せて腕に抱くと落ち着いたのか翼をバタバタさせて擦り寄ってくる。

何事かと思って外に出ようとしたが、騎士団の人たちが走ってくのを見て部屋を出るのをやめた。

魔物でも出たのだろうか。行ったら邪魔になるかも。

少し様子を見ていると遠くで歓声が聞こえた。そして船も穏やかに進んでいる。

多分討伐できたのだろう。

ふぅと息を吐いて倒れた椅子を戻して魔導書を拾った。

「えっと…どこまで読んだかな…。」

ペラペラとページを捲っていると黒竜が魔導書に顔を覗かせてあるページをペシペシ叩いた。

「え?なに?ここ読むの?」

黒竜はペシペシしながら私を見つめてくる。

仕方なくそのページを読むことにした。

「えっと…白竜の失踪と大陸の分断…。えっ?!白竜の失踪?!」

想像以上に気になる内容で驚いた。続きを読んでいくと色々と驚くことが書いてあった。


『この世の希望ともいえる白竜が失踪したことで、各国は総出で捜索を始めた。だが見つかることはなく、卵さえも見つからない。その後、光魔法を使える者は世に現れず、光魔法は滅亡したと言っても過言ではない。創造と再生を司る白竜が消え、他の竜族も消えた。行方の分からぬ偉大な力を持つ竜族を巡って大陸は分断し、多くの血が流れた。その血を求めて魔物が集まり瘴気を放ち、転化する者が増えた。国は滅び、森は枯れ、海は荒れた。竜族こそ、この世界の破滅の原因であったのだ。』


「白竜って…いなくなっちゃったの?ほかの竜も?でも黒竜は西大陸に居たって…。どういうこと?」

聞いたところで黒竜は答えてくれない。

私は魔導書と黒竜を抱えて部屋を出た。ダルシオンさんの部屋に向かうために。


コンコン

「ダルシオンさんいますかー?」

部屋の扉をノックして声をかけたが返事がない。

「いないのかな?」

別の場所を探そうと足を踏み出したら扉の開く音がした。

「あ!やっぱりいたん…です…ね……って…大丈夫ですか?」

いつも以上に眉間に皺を寄せ真っ青な顔で虚ろな目をしたダルシオンさんがそこにいた。

「…なんですか…」

声もいつもの半分も出てない。死にかけてる人って感じだ。

「えっと…魔導書を読んでて…気になるところが…」

そう言うとダルシオンさんは中に入れと手でジェスチャーしてよろよろと部屋に入っていった。

大人しく言う通りに中に入るとダルシオンさんはベッドに腰かけ椅子を私に勧めた。

「あの、大丈夫ですか?」

聞いてみるとギロリと睨んでボソリと言った。

「船は嫌いです。土に足をつけておきたいんです。で?どこですか?」

あぁ。さっさと用事を済ませて出ていけってことですね。はい。分かりました。

私は急いでページを開いてダルシオンさんに渡した。

「この白竜の失踪なんですけど、ほかの竜も消えてしまったと書かれてます。でも黒竜は西大陸で見つかってますよね?ほかの竜もどこかでみつかってるんですか?」

ダルシオンさんは黙って魔導書を見つめている。

「あのー…」

声をかけたが返事がない。

やっぱり体調が優れないのだろうか?後にした方がいいかな?

そう思って出直そうと腰を上げかけた時、

「この本をどこで手に入れました?」

と聞かれた。

「え?私の部屋の机に置いてありました。ダルシオンさんが読めってことで置いたのでは?」

そう。この魔導書は私の船室に置いてあったのだ。ダルシオンさんが読めと言って本をよく渡してくるから今回もそういう流れかと思っていた。

「こんな魔導書初めて見ました。俺も読んだことないですし、国にもありません。それにかなり古いものですこれ。」

「じゃあ誰がこれを…?」

ダルシオンさんと私は顔を見合せてしまった。腕の中の黒竜がキュイキュイと鳴いている。

いったいこの魔導書は誰がいつ置いたのか。この魔導書はどこから出てきたのか。

私は背筋に冷たいものが流れるのを感じた。


最後までお読みくださりありがとうございます。


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