第三十三話 魔石
黒竜守り隊が結成されてから数日、俺はこの獣人2人に防御魔法を叩きこんでいる。
赤いのは感覚派。つまりナコ殿と同じだからひたすら魔法を投げつけてればいい。おかげで5割くらいはできるようになってきた。
問題はグレーのだ。恐らくこっちは俺と同じ。頭で理解して魔法を使うタイプ。このタイプは1回できれば問題ない。だがその1回が難しい。
「あっつ!」
「くっ!」
火魔法を投げると2人は失敗して火を慌てて掃っている。
「赤いの。さっきからできてない。集中しろ。グレーの。いい加減できるようになれ。」
俺が言うと2人は息を上がらせながら顔を顰める。
「くっそ…なんかできなくなってきた。」
「……。」
2人にもだいぶ疲労が見えてきた。
俺はため息をついて言った。
「では今日はこれで終わりです。また明日続きやりますので各自練習するように。」
2人はブツブツ言いながら魔法室を出ていった。
さて。これで面倒ごとは一旦終わり。ナコ殿と例の物について話し合わなければ。
ナコ殿を呼ぼうとしたら奥から騒がしい声が聞こえた。
「ちょっと!待って!大人しくしててよ!」
本が落ちる音、パタパタという翼の音。
俺はまたも大きなため息を吐いた。ここ数日でため息を何度ついているだろうか。もう逃げる幸せも残ってないだろう。
「ナコ殿。」
「あ!はーい!」
返事は聞こえるが姿を現す気配がない。仕方なく騒ぎの方へ向かう。
するとそこには散らばった本と黒竜をやっと捕まえたナコ殿がいた。
「すみません!やっと捕まえました。なんですか?」
疲れた顔のナコ殿が黒竜の翼に叩かれながら振り向く。
「お忙しいところ申し訳ないですが、例の物について話し合いますよ。」
「あれですね…どうするんです?あんな大きな宝石…あ、魔石か。」
その言葉に俺はまたもため息をついて呟く。
「どうもこうも…やるしかないでしょう…。」
数日前。俺とナコ殿は王の間に呼ばれた。
「ダルシオン、ナコさん。突然ですまないがサントスの話を聞いてやってくれ。」
と、国王は困ったような顔で話をきりだした。
すると隣の宰相がいつものいけ好かない笑顔で話し始めた。
「お2人にプレゼントです。国を覆う防御魔法作りに役立てていただければと。」
そして目の前に出てきた巨大な宝石。直径30センチはあるだろう黄金色に輝く宝石だ。
「こんな大きな宝石どうしたんですか?相当な値打ちものでしょう?まさか…予算ギリギリの状況なのに買ったんですか…?」
俺は珍しく思った事そのまま口にしてしまった。
フェルス王国は魔属領とのいさかいが絶えない軍事国家だ。それに北国ということもあり、作物も育ちにくく、交易にも力を入れずらい。つまり貧乏国だ。毎年予算ギリギリで乗り切っている。騎士団の一部を出稼ぎに行かせることも少なくない。そんな貧乏国がこんな大きさの純度も高い宝石を買えるわけない。
宰相はニコニコしたまま答える。
「まさか、こんな物買ったら我が国は滅びます。作りました。」
「宝石を…作る…?」
ナコ殿が不思議そうな顔で疑問を口にする。
「ええ。宝石職人と言ったらドワーフです。彼らの技術は素晴らしい。国だけでなく大陸中から集めてきて作ってもらいました。もちろん報酬はちゃんと払いましたよ?我が国で安全に暮らせる場所も提供しました。最初は断られていましたが、しつこくお願いしたら承諾してくれました。」
宰相の言葉にドワーフ達に同情した。この男にどれだけしつこくお願いされたのか。かわいそうに…。
「はぁ…えっと…この宝石を私たちにくれるのはわかったんですけど…どうしたらいいんですか?」
俺と同じくドワーフに同情したのか、苦笑いのナコ殿が聞く。
あぁそうか。ナコ殿は知らないのか。
「ナコ殿。これは魔石に使います。魔石というのはそもそもこのような宝石に魔力を込めることで魔石になるのです。つまりこれに我々の魔力をありったけ注いで強力な魔石にします。そしてその魔石を使って、国を覆う防御魔法を張ってみたらどうだ、ということです。」
俺の説明に、なるほど~、と頷いているナコ殿。
「そういう事です。天才魔術師が2人もいるのになかなか出来上がらないので私がお手伝いさせていただきました。ナタリーにもずいぶんと苦労を掛けてしまいましたし…よもや断るなんてことないですよね?」
「ええもちろん。お気遣いいただきありがとうございます。」
皮肉交じりの宰相の言葉に笑顔で答える。
俺と宰相の間に火花が散っているのを感じたのか国王がアワアワしている。
そんなこともお構いなしに、ナコ殿は宝石を眺めながら
「これ売ったらいくらになるんだろう…。」
などと呟いている。
そして今に至る。
「ダルシオンさん。これを魔石にするには相当魔力が必要ってことでしたけど…実際どのくらい必要なんですか?」
黒竜を抱いて例の宝石をツンツンしているナコ殿に答える。
「ナコ殿の全魔力を注いでも足りないくらいです。そうですね…ナコ殿30人分くらいでしょうか。」
口をポカンとあけた間抜け面で俺を見てくる。
「…そ、そんなの…絶対魔石にできないじゃないですか…。」
「そうです。だから困ってるんです。あのクソ宰相わかっててこれ準備したんですよ。ちっ!」
俺はあの男の顔を思い出して舌打ちをした。
魔石用の宝石を眺めながら魔導書のページを捲る。ここ数日、魔力を一瞬でも大幅アップできる方法はないかと探しているのだが、いまだにそんな方法を見つけられていない。
「はぁー…」
私はため息をつきながら机に伏せた。
私の魔力は相当高い。ステータス確認した時に魔力の高さにみんな驚いていた。ダルシオンさんもかなり高い方らしいが私はそれ以上だ。もはや大魔術師を名乗ってもいいくらいらしい。だがコントロールが酷いのでそれは名乗れない。
それが30人分ってどんだけだよ…。
チラッと机の上の黒い塊に目を向ける。
海は今お昼寝中。さっきまで棚の本をどさどさと落としていた。何がしたいのか分からないが毎日毎日本を漁っている。子どもだからいたずら盛りかな?
「海さんや。そろそろ私と会話しませんか?」
ポツリと呟くように話しかける。
だが反応はない。
大きな机のど真ん中でスヤスヤと眠っている。しかもダルシオンさん愛用のクッションの上。海に取られたのを怒って取り戻そうとしたが、海が闇魔法を放とうとしたのを見て彼は諦めたらしい。
さすがにダルシオンさんがかわいそうだなと思って新しいクッションを用意してもらった。少し硬いとかブツブツ言ってたけど使ってるから結構気に入ってるのだろう。
あれから海の声は聞こえない。ペーター君が亡くなる時のが最後。意思疎通もできてる気がしない。本当に黒竜の子どもを世話してる感じだ。
私はまたため息をついて魔導書に戻ろうと大きく伸びをした。
するとノックが聞こえて獣人2人が入ってきた。
「ちーす…あれ?先生は?」
「ナコさんだけ?」
チャミ君とジョン君がダルシオンさんを訪ねてきたようだ。
「どっか行ったよ。2人は防御魔法の訓練?」
そう聞くと
「いやぁ…自主練…みたいな?先生いたらついでに訓練してもらおうかな〜って…ははは。」
と、チャミ君が苦笑いしながら答えた。
「僕はまだできてないから…何かアドバイス貰おうかと…。」
ジョン君は少し凹んでそうな雰囲気だ。
すると、そんなジョン君を励ますかのようにチャミ君がジョン君の肩を叩く。
「先生いないなら2人で撃ち合おうぜ!ジョン!」
「え…チャミ加減できるの?」
「できるよ!多分…」
そんなやり取りを見ていると、海が私の魔法のコントロール練習を手伝ってくれてた時を思い出す。
こんな風に笑いながらやってたな…。
昔のことを思い出しながら、2人がやるやらないの問答を繰り広げているのを見ていて、ふと疑問が浮かび上がった。
「ねぇ2人はさ。複数属性使えるけど魔力は高いの?」
私のいきなりの質問に目をぱちくりさせている。
「まぁ多分。ナコさん達のような魔術師に比べたら低いとは思うけど…」
と、ジョン君が答えてくれた。
「魔力がどうしたんだ?」
チャミ君の質問に、うーん、と悩んで答えた。
「この魔石に魔力込めないといけないんだけど、魔力が私の30人分くらい必要なんだって。だから2人も合わせたらいけないかな〜って思って。」
すると2人も考えてくれてるのか黙り込んだ。
そして突然閃いたのかチャミ君がポンっと手を叩いた。
「黒竜の魔力使えばいいんじゃね?」
「え?チャミ何言ってんの。黒竜はまだ魔法のコントロールだってできないんだよ?危ないよ。」
「あ、そうか…うーん…。」
チャミ君の発案に鋭い指摘をするジョン君。
そうか。黒竜なら魔力は高い。魔族も黒竜の魔力から魔石を作るとか言ってたっけ?
するとまたチャミ君が手をポンっと叩いた。
「じゃああれだ!島の住民全員でやったら結構な魔力量じゃね?」
私は頭にハテナを浮かべた。島?住民?
するとそんな疑問を解決してくれるようにジョン君が聞いてくれた。
「チャミ。島って…もしかして僕らの育った島のこと?」
「そうそう!」
黒竜の魔力を使う案もいいと思ったが、獣人の島の人達の事は目からウロコだった。
「ありがとう!2人とも!ちょっと海みてて!」
私はガタンと立ち上がって部屋を飛び出した。
城中を探し回ってやっとダルシオンさんを見つけた。カルロさんと話しているようだ。
「なので全員で魔力を込めれば何とかなるかも…という話です。」
「でも魔法使える人を国中から集めてくるって相当大変じゃないかな?」
魔力集めの話をしているようでダルシオンさんもカルロさんも悩んでいるようだ。
「2人とも!聞いてください!」
駆け寄りながら2人に声をかける。
「どうしたんだい?ナコさん。」
「私、魔石作りの方法を思いつきました!」
カルロさんの問いに走ってきた勢いのまま答える。
「黒竜の魔力なら使いませんよ。」
ダルシオンさんが私の考えを察したかのように先に返答してきた。私はピタリと止まってダルシオンさんを見る。
この人エスパー?
「黒竜の魔力は不安定過ぎます。危険です。意思疎通ができるならまだしも、まだ海殿の声すら聞こえてないんですよね?」
私はそのまま黙り込む。
いい案だと思ったがこの人はもうそれを視野に入れていたか、という残念さと、いまだに海と話もできないもどかしさが私の口を閉ざす。
「ダルシオン、言い方ってものがあるだろ?ナコさん、すまない。」
カルロさんが私に申し訳なさそうに謝ってくる。私は首を振ってカルロさんに大丈夫だと伝える。
「じゃあもう1つ。チャミ君とジョン君の案なんですが、獣人の島の人達の魔力を使うのはどうですか?」
私がもう1つの案を伝えると2人は、ふむ、と考え込んだ。
「獣人なら魔力も高い…。人数にもよるかもしれないけど…いい案だと思うな。ダルシオンどう思う?」
「えぇ。俺も現実的な案だと思います。」
私は2人を交互に見ながら返事を待つ。
するとダルシオンさんがパッと顔を上げて言った。
「獣人2人に詳しく聞いてみましょう。」
魔法室に戻ってきて机の上で寝ていた海が居ないことに気づいた。視線を横にずらすとチャミ君とジョン君と遊んでいるようだ。
「よし!今度はこっちに飛んでこい!」
チャミ君の言葉に海がパタパタとジョン君の腕の中から飛んでいく。チャミ君が受け止めるとキュイキュイと楽しそうな声を出している。
「…え…何してるの…」
そう声をかけるとチャミ君が振り向いて言った。
「ナコちゃん!何って見りゃわかんじゃん。こいつと遊んでんの!」
「ナコさんが居ない間に黒竜が起きたんだよ。そしたらキョロキョロして寂しそうにしてたからチャミが遊ぼうって言い出して…。」
ジョン君の言葉に驚いてしまった。
海が寂しそうにしてた…?
「寂しそうって…わかったの…?」
2人は顔を見合せて頷く。そして心にグサッと刺さることを言った。
「「気づかなかったの?」」
私は返す言葉もなかった。
あんなに毎日一緒にいたのに全然気づかなかった。いや、気付こうとしてなかったのかもしれない。
今までこの小さな黒竜は海だと主張してきた。実際言葉がわかった時があったからだ。でもそれから海らしい仕草もなく、意思疎通もできてなかった。だから自分でも分からなくなっていた。この黒竜は海だと口では言ってても、心の中では違うのではないか…ただの黒竜ではないか…そう思ってしまっていたのだ。ただ目の前にいる黒い塊を大人しくさせる事しか頭になかった。私は黒竜とも海ともちゃんと向き合ってなかったのだ。
すると一緒に来ていたカルロさんが咳払いをして声をかけてきた。
「ゴホン…えっと…ちょっといいかな?君たちに確認したいことがあるんだ。」
私はハッと我に返り、2人に言った。
「チャミ君とジョン君の島の人達に協力してもらうって案を話したの。それで詳しく聞きに来たんだけどいいかな?」
チャミ君とジョン君はポカンとしている。
「え?マジで?適当に言ったんだけど…。」
まさかのチャミ君の言葉に私が驚いた。
するとジョン君が申し訳なさそうに続けた。
「ごめんなさい。こいつ考えなしな所があって…。」
あの話適当だったの?!本気にしちゃった私バカじゃん!凄いいい案だ!とか思っちゃった。
自分が先走ってしまったことを悔やみながら窺うようにカルロさんを見て、
「えっと…その…」
と、どう切り出そうかと言葉を探す。
「そうなのかい?結構いい案だと思ったんだけどな。今ダルシオンが国王に話に行ってるんだ。その間に詳しく聞いておこうと思ってね。とりあえず話を聞かせてくれ。」
カルロさんは気にした様子もなく話を進める。
あぁ良かった。あまり気にしてなさそう。
ほっと胸を撫で下ろす。
「じゃあまず、島の住民は何人くらいなのかな?」
「子どもも含めて大体…50人くらいは居るかと思います。」
ジョン君が質問に答える。
「なるほど。君たちは魔力が高い方なのかい?」
「いや、俺らはみんなと同じくらいだぜ。俺らより魔力高い奴なんていっぱいいるよなジョン!」
チャミ君の言葉にジョン君が頷く。
「僕らは魔力扱うのが上手いってくらいです。特別高くはないです。」
「この2人を平均値として…それが50人…いや、子どもを外して40人と考えれば……足りるかもしれないな…。」
と、カルロさんは顎に手を添えたままブツブツ言っている。
チャミ君はそんなカルロさんを放置して海とまた遊び始めた。海が遊びたそうにキュイキュイ鳴き始めたからだ。ジョン君もあやす様に一緒に遊んでいる。
そんな様子を見ながらカルロさんに聞いてみる。
「カルロさん。どうですか?」
「うん。試す価値はあると思う。ただそれには色々準備も必要だ。島に行って協力を得て、それからどこでどうやるか…とかね。」
カルロさんはそう言うと、
「この話をダルシオン達にしてくるよ。ナコさんありがとう。」
と、部屋を出ていった。
残された私は遊んでいる2人と1匹を見つめた。そしてさっきのことを思い出す。
海とも黒竜とも向き合ってなかった自分。1番近くにいたのに何をしていたんだろう。
自己嫌悪に陥っているとパタパタという音が聞こえた。顔をあげると海が目の前に飛んできてそのまま私の腕の中におさまった。キュイキュイと鳴き私を見つめてくる。
するとチャミ君とジョン君が
「ナコちゃんのとこが落ち着くんだなきっと!」
「うん。僕らとは反応が違うよ。」
と、言った。
私は自然と口元が緩んだ。2人にお礼を言おうと口を開きかけた時、突然後ろから声が聞こえてビクリとした。
「楽しそうだな。」
振り向くとそこには顰めっ面をしたシルビアさんがいた。
「シルビアさん?!」
「シルビア?!ど、どうしてここに?!」
私ではなくジョン君とチャミ君が驚いた声をあげた。
「騎士団全体の鍛錬には来いって言ったのに全然顔出さねぇ奴らがいてさ。赤い猫とグレーの猫だ。わざわざ迎えに来てやったんだよ。」
シルビアさんはいつも通りの口調でニコニコしてるが目は怒っている。怖い…。
チャミ君とジョン君はヤバいと思ったのか目が泳いでいる。
「す、すみません…あの…黒竜を見ていたもので…」
ジョン君が恐る恐る答えると、シルビアさんは腕を組んで頷きながら
「楽しそうに遊んでたもんな。それが仕事だもんな。」
と言った。
そして続けて
「で?もう終わったのか?」
と2人に向かって言った。
2人はビシッと姿勢を正している。緊張感、威圧感が部屋を包み込む。
私は静かに、できるだけ静かに海を抱えたまま後ずさりして部屋を出た。恐ろしいあの場所から逃げ出すために…。
王の間に行くと、国王、サントス、ダルシオンが話していた。
「なるほど獣人の島か。以前海さんを迎えに行った時の報告をルークから聞いているが、協力的であったそうだ。」
「ですが国王。そのためには色々と準備が必要になりますし、その間の隙を狙って魔族が来るとも考えられます。」
国王の言葉にサントスが答える。
「実際獣人がどのくらいの魔力を持っているのかもその場に行かなければ分かりません。賭けのようなものですが、俺はこの状況を打破できるならいい案だと思います。」
ダルシオンの言う通りだ。黒竜の魔力を頼るより断然現実的な案だと僕も思う。
僕はダルシオンに援護射撃するようにさっき聞いてきた話をした。
「獣人2人に話を聞いてみました。2人と同じくらいの魔力持ちが大体40人くらい確保できるみたいです。それとナコさん、僕、ダルシオンの力が合わさればそれなりの魔力量です。」
僕が突然話し始めたことに驚いた…というより僕が来てることすら気づいてなかったようで3人の視線が集まる。
「カルロ!」
「あの2人が40人ですか…。」
「ご苦労さまです。聞いてきて貰って助かりました。」
国王、サントス、ダルシオンが僕に気づいて各々反応を示す。
「あの2人が40人程度、そしてナコ殿、俺とカルロ殿。少し足りないかもしれませんね…。」
ダルシオンは悩んでいるようだが、僕はここへ来る間に考えていたことを伝える。
「その少し足りない分を黒竜の魔力で補うってのはどうかな?魔力封じを使って。」
サントスが驚いた顔で僕に聞いてくる。
「カルロ。魔力封じというのは体の一部に魔力を溜め込んでおくという方法。人の腕や足に施しているのは見たことがありますが、黒竜にも施せるのですか?」
「黒竜にも施せると思う。けど今回は首にかけてある魔石を使うんだ。防御魔法用で常に身につけているから黒竜の魔力を少なからず蓄えている…と…思う。」
自信なさげにダルシオンを見ながら答えると国王の心配そうな顔が目に入った。サントスも悩んでいるようだ。
黒竜を使うことにまだ抵抗があるのは知ってる。でも今はそれくらいしか頼るものがない。危険を承知で発案したのだ。
ダルシオン…援護してくれ…。
僕の気持ちが伝わったのかダルシオンは考え込みながらも続けて言葉を発してくれた。
「確かにあの首の魔石には魔力が蓄積されています。この間も怒って放った闇魔法を微量ですが吸収しているように見えました。」
ダルシオン…多分クッションの事件の事を言ってるんだろう。あれはかなり怒ってたからな…。ダルシオンも黒竜も…。譲れない戦いって感じだったとナコさんが言ってたっけ。
「ふむ。ではその案で話を進めてみよう。島民とも話さなければならないだろうし、結構大がかりになりそうだ。まずは計画を立ててみてくれ。」
国王の言葉に僕たち3人は返事をして王の間を出た。
王の間を出て3人で廊下を歩きながら話している。
「まさか国王が承諾すると思いませんでした。カルロ…さすがですね。」
「いや、そんな…僕は…。」
「自信持てって言ってるでしょう。あなたのそういう所、見ててイライラしますよ。それにいい案だと思います。」
サントスに褒められて僕がそんなことないと言おうとしたら、ダルシオンに怒られた…いや、褒められた?
「まずは計画を立てましょう。島へ直接転移は出来ないのでまた騎士団に行ってもらうことになるでしょうね。向こうの方々をこちらに連れてくるのも大変ですし…どうしたものか…。」
敏腕宰相も頭を抱える案件。僕は今更になって自分が物凄いことを言ってしまったと後悔している。
「そもそも魔石作れって言い出したのはあなたなんですから。その無駄に働く頭で考えてください。」
ダルシオンがサントスに言う。
「まぁそうですね。あれが実際魔石になるのか分からずに作ってましたしね。あはは。私も少しは責任感じてるんですよ〜」
サントスのこういう所が彼の長所であり短所だ。腹の中に別の考えを持っているのではないかと勘ぐってしまうが、このおちゃらけた雰囲気がそれを隠してしまっている。つくづく面倒な宰相だ。
「責任感じてくれてるなら魔石にする方法も考えてからにしてくださいよ。ほんっとにムカつきますね。」
ダルシオンが怒り始めた。こうなると2人は口喧嘩のように問答をし出す。
こうなると面倒だ。僕は2人から逃げるように
「じゃあ僕はナコさん達にこのことを伝えてくるよ。君たち2人は先に計画考えていてくれ。」
と言って2人から離れた。
後ろの方で予想通りの問答が聞こえてきて苦笑いを抑えられなかった。
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