第40話 新国王の治世が明るい件
こうして一応、僕の治世が始まった。
一応と書いたのは、ほとんど全てを大臣たちが実行してくれるお陰で僕は聞くこと、頷くことくらいしかやることがないからだ。
こんなんでいいんだろうか? と思ってしまうくらいだけど、無事に王都は復興して行ってるし、国内に目立った問題はない。
たとえ問題が発生してもクラム様をはじめとする貴族の方々が『私が対処してきます』と言って率先して行動してくださり、問題を解決してくれています。
この前クラム様は『良い流れが作れたからそろそろ自分が前に出るのはやめる。これ以上やるとやっかまれるから』と仰っていた。
本当に彼には感謝しても感謝しきれない。
そして、エフィ様については申し訳ないけど諦めてほしいと言われた。
なにせ大臣のトップがエルダーウィズ公爵であり、僕を支えてくれる貴族の急先鋒がクラム様だ。
この上、王妃がエフィ様だと、完全にエルダーウィズ公爵家が囲っているようにしか見えないと。
とても残念な気持ちになったが、理由は理解できるものだった。
それでも諦めきれない想いはある。実は一度だけお目にかかったアリア様もお美しく……。
一方で、神妙な顔つきのクラム様から、私的な理由でもやめてほしいんだと言われた。
なんとエフィ様はエルダーウィズ公爵の実の娘ではなく、クラム様にとっては義妹だということだった。
だから、エフィ様はクラム様と結婚予定なんだとか。
焦った。
そしてエルダーウィズ公爵から聞かれたときにエフィ様と答えなくて良かったと思った。
もしそんなことをして公爵をはじめとする大臣の方々が僕とエフィ様を結婚させていたらクラム様の心を離すかもしれなかった。
いや、この話をしてくれるクラム様の顔を見ればわかる。
クラム様はエフィ様が好きなのだ。
僕は知らなかったこととはいえ、危ない橋を渡ったことを反省し、クラム様に謝ったところ、彼からも謝られた。
実は僕がエルダーウィズ公爵に返答しそうになった時に力づくで止めていたと言われ、良かった……という気持ちと、いつでも殺されるという恐怖を感じた。
だが、クラム様は優しいから、こうやって会話をしておけば大丈夫な気はする。
今後絶対に危うい話は先にしておこうと誓った。
そうして国は安定した。
国民は前より明るくなったように感じるし、王城を訪れる商人たちは僕を讃えてくれた。
もちろんその言葉を鵜呑みにすることはできないし、気を抜くわけにもいかない。
以前は王族も貴族も不正が多かったと聞いている。
そんな人たちの多くが魔狼の腹に収まってくれたおかげで、僕は即位したし、王国の未来を憂いていた人たちが政権や王城での職に就いてくれている。
とても心強い。
さらに叔母であるヴェルト教授と、その助手となったエフィ様が次々に新しい魔道具を発表している。
食べ物を一定の温度に保つとか、部屋を涼しく保ってくれるとか、遠くの人と会話できるとか、誰もが読める文字で報告書を書いてくれるとか、書類のチェックをしてくれるとか、浮気をチェックしてくれるとか、本当に次々に生み出される道具にびっくりする。
僕もあのまま国王にならなかったらこの研究を手伝えていたのかなと思うと惜しい気もするけど、2人からは僕が国を安定させてくれたから研究が続けられているんだと言われて嬉しい気持ちになったよ。
浮気チェックだけは多くの貴族たちが使用を拒んだのも面白かった。
側室を設けることもあるから、誰かを一途に思っているかどうかを判定するわけではなく、伴侶に秘密の恋をしていないかチェックするとかどうやってるんだろう。
そしてそれを向けられたクラム様が面白かった。
エフィ様にどうかそれだけは、と言ってしまったため位に、エフィ様が『お兄様は誰か良い方がいらっしゃるのですか?』と笑っていない眼で迫っていたから。
そしてそわそわしながらそれを見ている叔母……。いや、反応を見る限りクラム様は望みはないと思うんだよね。
結果、エフィ様はクラム様に魔道具を当てることに成功していた。
逃げ回るクラム様に対して『お兄様なんて嫌いです!』と涙を流されて崩れ落ちられてはクラム様も放ってはおけず、その隙に……。エフィ様、やりますね……。
結果は〇。クラム様は浮気なんかしておらず、一心にエフィ様を想っているとのことで、エフィ様は大満足しておられました。
「なぜ魔道具を避けたのですか? 本気で心配したのです」
と可愛らしく不満を伝えるエフィ様。
「なんかほら、恥ずかしかったからさ。俺は君だけを見ているよ。それに、あれ……」
クラム様は誠実に答えつつ、さっきまで叔母さんが立っていた方を指さします。
「あぁ……」
それを見てエフィ様は申し訳なさそうな顔になりました。
そう、叔母さんが崩れ落ちていました。
誰も支えませんでした。
こんな楽しい日々が来るとは予想外でした。
国王になると宣言した時には、もっとドロドロした大人達の汚い世界で、心を削りながら一生働くものと思っていた。
もちろん、気を抜けばそんなことになりかねない。
そうならないために、気を引き締め、一つ一つのことに間違わないように進んでいく必要がある。




