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エレナから私にイジメの標的が変わると、エレナへの被害は無くなったけど、私への被害がどんどんひどくなってくる……。


あ、メイド服破られてる。


あ、掃除道具、私の分だけない。


あ、ご飯の中に虫が入ってる。


あ、階段から水の入ったバケツが降ってきた。


あ、前からハサミが飛んで……、ソォイッ!!!?


危なッ!?刃物は洒落にならないよ!?


こんな感じで身に危険が迫るほどにまでいじめがエスカレートしてきた。


私そのうち死ぬんじゃないかな?少なくとも心は折れそうだよ……。


ゲームのステラはエレナが学園に通う時、彼女について行くって設定だったけど、あと3年我慢しないといけないの?3年持つかなぁ……?


そうこうしているうちに、ついに事件が起きた。


それはご主人様たちの夕飯の支度をしている最中のこと。お盆にフォークとかナイフとかお皿とかを運んでテーブルと厨房の間を行き来してる最中に、リルアに足を引っ掛けられた。


ドンガラガッシャンッ!!!


盛大にお皿が割れる音がした。


ああ。こりゃ私、怒られるな。


でも問題はそのあとだった。


転倒の際にそのまま割れた皿の上に頭から突っ込んでしまい……。


ごめんなさいご主人様。床が私の血で汚れてしまいました。


「早く医務室へ運べ!」


私は厨房にいたシェフに抱えられて屋敷の中にある医務室へと連行された。このときリルアたちがどんな表情をしてたかわからない。頭の痛さと自分の血を見たパニックで周りを見る余裕がなかったから。


「頭ぱっくりやっちゃってるね……」


医務室にいるお屋敷お抱えの医者に言われてその場で縫合。え?麻酔ないの?え?どうしてシェフも執事さんも私の体押さえ込むの?


ちょちょちょタンマタンマタ……。


私の盛大な悲鳴と共に手術が終わった。


せめて異世界だったら麻酔の魔法とかかけてよ……。あ、この世界、魔法設定とかないんだった。


頭に包帯をぐるぐる巻きにしながら医務室のベッドで放心しているとバンッて扉が開いた。見るとエレナが憔悴(しょうすい)しきった表情で立っていた。


「あ、お嬢様〜」


間延びした声でそういうと、エレナは途端に顔を(ゆが)ませて私のところに駆け寄る。


「ごめんなさい!ごめんなさい!」


え?え?


謝られるようなことあった?


私がキョトンとしてると後ろから公爵が来た。公爵!?エレナのお父さん!!!?なんでここにいるの!?!?!?


「大丈夫かい、ステラ君」


「え、あ、はい」


シャキッとしない感じで返事をすると「頭を切ったようだね」と返される。


「大丈夫ですよ!怪我なんてそのうち治りますから!」


私がにこやかにいうと公爵はなんともいえない表情を浮かべて「そうか」とだけ言った。


え?何その意味深な顔。怖いよ?


「エレナから聞いた。エレナを(かば)ったせいでリルアたちからイジメを受けたんだってね。我々の方が家格が上とはいえ、私は君の父君から君を預かっている身だ。にも関わらずこちらの不注意で君の大事な顔に怪我を負わせてしまった。大変申し訳ない」


頭こそ下げなかったけれども、公爵はとても心配そうな声を出しながら私に声をかけた。


(かたわ)らではいまだにエレナが「ごめんなさい」を言い続けてる。


「謝られるようなことは特にされてませんよ?」


そう答えるも「私がちゃんとしっかりしてたら、お父様にもっと早く相談してたら」と言い続ける。大したことないってのに。


それからしばらく安静にするよう言われた。それと落ち着いたら私の実家から両親を呼ぶことを告げられた。なんかご挨拶というか謝るためらしい。大したことないってのに。


それからしばらくお仕事はお休みにさせてもらった。走り回っちゃダメとは言われたけど、医務室のベッドにずっといるのも退屈なので時々外に散歩しに行く。散歩の時たまにエレナがついて来てくれた。それとやることがなさすぎて時々勉強してる。元の世界では考えられない!ちなみに勉強する時もエレナがつきっきりで面倒を見てくれた。


「私、今、ステラのお姉ちゃんやってる!」


公爵様からお手伝いさんに至るまで、誇らしげに言って回ってる。私は元の世界で17年も人生積んでるんだから精神的には私の方がお姉さんなんだけども、まあ、そんな野暮なことは言わない。ゲームでは考えられないほどの満面の笑みだ。じっくり堪能しておこう。


時々公爵様が私のところに顔を出しに来てくれて「君のおかげでエレナが明るくなった。ありがとう」ってわざわざ言ってくれる。へへん!もっと褒めてくれてもいいのよ!


そういえばリルアたちを最近見なくなったなぁ。みんな何してるんだろ?近くにいたお手伝いさんに聞いてみると、みんなが揃って笑みを浮かべながら「気にすることじゃありませんよ」って言ってる。逆に気になるんだけど……。


それからひと月が経ち、抜糸をし……。え?抜糸も麻酔なし?ちょちょちょ、押さえつけないで!どうしてゲームの製作陣は魔法設定加えなかったのよバカァ!!!?


ば、抜糸を終えてもうしばらく様子見。


ふむふむ。


傷痕が消えないね。


え?嘘ぉん。


ゲーム通りならエレナについたはずの額の傷痕は私の方に乗り移っちゃったみたい。


嘘ぉん。


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