NAM DEGNAH EHT
「ただいま」と同時に食欲をそそる香りが鼻腔を掠める。
満面の笑みと一緒に「おかえり」がやって来る。
二人の時間を過ごすうちに、疲れた君は寝てしまう。
君の寝顔を見ながら「お疲れ様」ってそっと頭を撫でる。
君が寝てしまうと妙な静けさに包まれて、ちょっと寂しくなったりして。
起こさないように眠ってしまった君の手を握って一緒に眠る。
朝、僕が起きると「ねぇ、また怖くなっちゃったの?」って微笑む君を見てホッとする。
こんな幸せがずっと続いたらいいのにな、って思う僕は君に上手く笑い返せていたかな?
今はもう眠ってしまった君の手を握ることもできない。
君がいないととても寂しくて、気付けばいつも泣いている。
君の笑顔を見ながら「お疲れ様」ってそっと手を合わせる。
眠ってしまった君との時間は目を閉じる一瞬の間だけだ。
君に「おかえり」が言えることがあればどんなに嬉しいか。
「ただいま」と言った後に鼻腔を掠めるのは線香の香りだけ。
「君のところに行ってもいいかな」って呟く僕はきっとひどく歪んだ笑顔だ。