プロローグ
静寂な部屋の中、曇った表情の人々が横たわる一人の青年を囲んでいる。
高貴な衣装に身を包む青年の顔色は血の気が引いたように青白く、生気を微塵も感じさせない。
衰弱しきった彼の身体は痩せ細り、風呂にも入っていないのだろうか、美しいはずの金髪は見る影もなく縮れている。
ーハァ…ハァ…ー
青ざめた唇を小刻みに震わせると苦しそうに呼吸をする。
体から水気が抜け切ってしまったのか不思議と汗は出ていない。
悲嘆の声と鼻を啜る音を混じらせながら涙ぐんだ瞳で見据える家臣たちを横目に、青年は心の中で呟いた。
ーあぁ・・・俺はもう直ぐ死ぬんだな・・・・ー
朦朧とした意識の中、俺は18年間という短い人生を走馬灯のように振り返る。
俺には幼い頃から両親がいない。
母上は俺を産んでから直ぐに死んでしまったらしく、先先代の王である父上も俺が幼い頃に突然死んだ。
父上が急死したことで、国中では様々な噂が飛び交った。
暗殺されたと言う者もいれば、神の裁きが下ったなどという者もいたが、結局真相は闇の中。
その後、義母であるネフェルティティ様が父の後を継いで王となったが即位から僅か3年で亡くなり、王族として一人残された俺が僅か9歳でこの国クヌトの王座へと即位することとなった。
王は本来、戦に自ら赴き兵士たちの士気を高めるべき立場にある。
だが、幼い頃から病弱だった俺は、ケーラー病を筆頭に幾つもの病気を患っていた。
年寄りでもないのに杖がなければ一人で立つことすら儘ならず、宮殿外へと外出することもできない。
国を治める王でありながら、
国のために戦へと赴く兵士たちを見送ることしかできない・・・・。
我が国を歩き、民との親交を深めることもできない・・・・。
ー俺は王として失格だ・・・・ー
そんな自責の念に駆られながらも、俺は心の中であるはずもない理想の来世プランを組み立てる。
ー健康で、強くて、逞しい男になりたいー
ー俺みたいな弱い人々を助けたいー
ー偉大な…にな…い…ー