第2話 榊姫御子
悩んだ末…早く先に進めたいので、説明回を何回か挟む事にしました。
〇 平家屋敷 中 榊姫御子
彼女の事を説明するには……。まず、我らが特異霊装と呼んでいるそれが何なのか……説明せねばなるまい。
かつて、人と神は共にこの大地で暮らしていた。だが、人と神が交じり、人間の中に自分達に近い力扱う者……即ち「神器使い」が現れ出した事に、神々は恐れを覚た。これ以上人の力が大きくならないよう、自ら高天原へと帰り……2度と人の住む大地に戻らない事を決めた。だが、何人かの心優しい神々は、もしなんらかの外的要因に人が苦しみ…神の力を必要とした時、助けてやれるように、その力の一端を大地に置いていったとされる。それが……
「特異霊装ってわけか……。」
話は大体分かった……と、慶次郎は言う。しかし…
「何が心優しい神々……だよ。趣味が悪い事、この上ないな。人々の争いを煽って楽しみたいのか、人間を自滅させたいのか。」
「さよう。人はその力の存在に気付くと忽ち魅了された……。なんとか、それを自らの手中に収め、なんとか使いこなす方法を探した結果……」
「これより約千年後に……この国は滅亡する。暴走する科学の進歩に特異霊装の乱用が重なってな。文字通り何も無い更地になるそうな」
ーー千年後……? なんで、そんな事を和尚が…? そうか!
「分かったか? ワシでは無いが未来予知出来る能力者がいる。その方の話だ……。即ち手……。」
和尚は試験管の中で目を閉じている姫御子の方に目をやった。
彼女の一族は代々、まじないの能力を持っていてな。中でも、突出した才能が有るものが姫御子として、我々に預言を下さる……。ここにあるのは、全てこの国の未来を覗き見て得た知識で作った物だ。簡単に言うと歳を取らずに肉体を保存出来る装置。次の才有るものが一族に現れるまで必要外、長く生きられるよう有事の際以外眠ったまま動かない。得られるのは大まかな歴史の流れくらいでいつも望む知識が得られる能力ではないがの。
そうやって我々は彼女を中心に、なんとか破滅の歴史を回避する方法を探している。特異霊装を可能な限り監視して、その力が間違って行使されんように。
コールドスリープ……的なものか。と慶次郎1人納得する。
「で、その人と俺が何の因果があって異世界転移なんだよ。」
姫御子様が最後に目を覚ましたのは、10数年前、あの平治の乱の時だ。もう一歩で特異霊装が使われる直前までいったからな。あの時、姫御子様は嘆かれた。もう人が滅びる事を止める手立てはないのかて……と。こういうのは、お前さんの方が詳しいと思うのだが、大規模な歴史改編をするのは危険だ。例えば、そこの清盛のバカを若い内に殺しておけば、多くの人が死なずにすむだろう。しかし……。それは既にある程度決まり積み上がっている時間という大きな塔の根本を破壊するようなもの……。死ぬ筈だった大量の人間……そしてその子孫の信じられん数の人間が何をするか予測もできん。世界規模で危険……というか、爆発して吹き飛ぶような状況に陥る。とされている。しかし……
「そうか。特異霊装の伝説、運命を切り開くって……。」
そうだ。特異霊装を使い未来を改編すれば…姫御子様が見える未来にも変化が起きる事がわかっている…もちろん万能では無いし、いつも望む方向に未来を変える事はできん。だが、姫御子様は平治の乱の時、所持されていた特異霊装を使い何かをなされたのだ。ワシらの知らんうちにな……。そしてまた、眠りにつかれた。彼女がその時、何をしたかは全く分からんかったが……その直後、ワシは偶然にもお主と出会った。慶次郎。
「ちょっと待て! 聞きたいことが山ほどある。」
慶次郎は大きな声を上げた。
「その時、彼女が使った特異霊装って何だ? 平家の天叢雲か? 」
「ふむ。極秘だが、いいだろう。その時使ったのは、第三の特異霊装……『八咫』の鏡だ。」
使用された特異霊装は、所有者が死ぬか、所有権を放棄して手放すと、一度、その存在を消し、次にその力を欲する者の所へ再び現れる……らしい。今『八咫』は行方不明だ。
「とにかく、姫御子様が次に目覚めたら、また詳細を確かめねばならん。なぜ、お主がこの世界に呼ばれ。お主に何をさせたいのか……。」
「その時、転移したのが俺として……。特異霊装使った事で誰か死んだのか? 」
榊姫御子は姫御子として3代目。通常に生きていたら御歳90を超える。そんな彼女に子供の時から寄り添い世話係を務めてきた老神主がその時、犠牲になったらしい。既に死期が近かったらしく、姫御子様の為に命を捧げたそうだ。
「覚悟はしてたが、想像以上に重たい情報ばっかだな。」
「最初、会った時は、お前と姫御子様が結びついてると思わなかった……。清盛もワシからそれを聞き、お主の命を狙う事をやめたそうだ。」
「別に俺が殺せと命じたわけではないのだがな。」
さっきから黙って聞いていた、清盛が口を開いた。
「だが、危ないところだった。お前を手にかけていたら一生姫御子様に口を聞いてもらえんところだった」
言いながら清盛は病気でしんどそうにしながらも、その試験管の中の全裸の少女を愛おしいそうに眺める。
ーーそういやロリコンだって、義経が言ってたな。
慶次郎は呆れる。彼ー清盛の話も聞かないといけない。こんな平和主義の姫御子の組織にあって……彼は一生戦争に明け暮れ、その権力に任せて、暴挙、圧政を望むままに行っていた……筈だ。
「そんな目で見るな。俺が知る限りの事は教えてやる。まだ……時間はある」
清盛はそういうと、ニヤリと笑った。
特異霊装、ドラゴンボー○説…。途中でで異能力の名称が『神器』にかわったんですが、上手いこと理由付けができました…後付けで。
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