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義経異聞伝~ZINGI~  異世界行ったら弁慶でした  作者: 柴崎 猫
源平合戦 開戦編
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第38話 てんとう虫

昨日の夜あげたかったのですが、寝ちゃった。

○ありし日の鞍馬山


 寺の一室で後の維盛これもりこと蝶丸ちょうまると後の義経こと牛若丸がいた。牛若丸は蝶丸の出した、グロテスクな虫をいくつか手に持ち、興味深そうにそれを見ていた。


「すごいなあ。足の数とか、体の作りとか……全部違って、全部正確だ……。蝶丸様! 次はムカデ! ムカデを出してください。本当に足が百本あるか数えてみます。」


 蝶丸は黙ったままだったが、しばらくすると、天井から1匹のムカデが落ちてきた。

牛若それを喜んで手に取った。


「お前、本当に変わってるな…。なんで、その系統の虫、素手で触れるんだよ。」


「可愛いじゃないですか? 」


「そう思うのはお前だけだ。実際、一度、この能力を見た奴は二度と俺に近づこうとしねえ」


 実際、蝶丸が人から嫌われたくて顕現させた能力だ。


「はあ、なるほど」


「?」


「私は、ひねた性格をしているから、虫が好きだし、こうして蝶丸様と遊んでいられるのです」


「け。ひねてる自覚はあるのかよ。っていうか、そりゃあ俺が皆から嫌われているって遠回しにに言ってるのか? 」


「はい! 私は蝶丸様が好きだと言いました」


 笑顔で牛若は答え、蝶丸は顔を赤くする。


「冗談はさておき、虫にも色々な虫がいます。人に好かれる虫だって……ほら、蝶丸様の蝶々……あと、てんとう虫なんか可愛くて人気あるじゃないですか。出せないんですか? てんとう虫」


 蝶丸は無言のまま、指を一本自分の前で立てる。指先に一匹のてんとう虫が顕現される。それは指先で羽を広げるとぱっととび、義経の方へ飛ぶ。義経が掌を出すと、その上に降り立った。


「すごいなー。本当に虫なら何でも出せるんだ。これですよ。こういう系統の虫も出す事を目指しましょう。」


「目指さねーよ!! 別に俺は嫌われ者上等だよ!! 」


 蝶丸は憮然として…照れ隠しに部屋を出ていき、牛若はその後ろ姿をクスクス笑いながら見送った。


○再び現在 富士川合戦場


「ちょっと、あの能力、何なのよ。弁慶。わからないの? 」


「瞬間移動だろ? 」


 日立の電話からの声に慶次郎は答える。


「それは、見ればわかるわ。なんで、あんなにデタラメな速さで出来るのって事。」


ーーそう言われてもなあ…。


 忠信への伝令、及び大庭景親の元へ虎徹で連れて行った後、慶次郎は義経と維盛これもりが戦っている所まで戻ってきた。義経になんらかのサポートをするつもりだったのだが……。


 新しく繰り出した維盛の神器『陰陽蟲おんみょうこ』の技に義経は防戦一方であった。確かにただのテレポーテーションにしては性能が高すぎる。瞬時に自在に義経の死角に現れる。相手を吹っ飛ばした先に先回りして、そこでまた攻撃……みたいな人間離れした事が出来るのか? よほど明晰な頭脳なら出来そうな事ではあるが……。そもそも蟲だ。あの能力には蟲が絡んでいない。義経は、死角に急に現れる攻撃に慣れて来たのか、なんとか間一髪で攻撃を防いでいる。しかし、あのままでは長くもたない……。


 あれなら、一人卓球、本気版が出来る……と、慶次郎はどうでもいい事を考える。そして、数珠丸を顕現する。そして、義経の周辺の索敵を開始する。


ーーん? あれは…。


 慶次郎は、義経の周りに何か、小さな虫が飛んでいる気配を数珠丸で察知する。小さすぎて何が飛んでいるのか、慶次郎にはわからない。しかし、同じような虫がもっと広範囲。そう、この戦場全体に散布されているのが、数珠丸で探知できた。


ーー虫って事はあれが……。


 慶次郎は一応、三日月で身を隠し虎徹をもって、義経と維盛が戦っているところから少し離れたその虫の所まで走っていく。触らないように注意して、それを見る。それは、一匹のてんとう虫だ。飛んでいる。別に昆虫に詳しくはないが普通のてんとう虫はこんなに長時間一か所に留まって飛んでいる事は出来ないはずだ。と、慶次郎は思う。これが顕現した虫なのか?

 慶次郎はその虫から離れ、さらに戦いを分析する。消えた、維盛は瞬時で義経の後ろに現れ、攻撃を仕掛ける。義経が反撃しようとしたら、すぐに消えて……。


「そうか!! 」


 慶次郎は電話を使い、義経に叫ぶ。


「義経! お前のまわりに、てんとう虫が飛んでいるだろ? 維盛は、それと自分を瞬時に入れ替える事が出来るんだ。それが能力の式だ。」


「馬鹿者。そんな事は、とっくにわかっている…」


 義経は、攻撃を防ぎながらかろうじて慶次郎に返す。ハンズフリーで話せるよう日立が改造した電話だ。


ーーそうか…


 慶次郎は心のなかで思う。そうだ。気付いた所でどうしようもない。てんとう虫は、見ている限り潰してもいくらでも増やせる。あくまで移動先の座標にすぎない。どこに現れ、どんな攻撃をするかは、あくまで維盛のセンスによるものだ。あれは……。


ーー対処のしようがない…。

 

 慶次郎は、思わず固唾を飲んだ。


「この能力でお前と戦えるのが嬉しいぜ。今日が晴れてて良かったな。義経! 」


 維盛は楽しそうに言った。

天道無親っていう言葉から、天道無心という名を考えました。少し、アレですが、ゾロのネーミングセンスっぽくてちょっと好きです。

※読んで頂いてありがとうございます。よろしかったら、ブックマーク感想他、何か残して言って頂いたら嬉しいです。

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