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第6話 宿敵

○京都市街…夜


 そろそろか…。鬼三太は立ち止まった。

 最後に忠信が捕まってから、ひたすら逃げ回って随分時間が経つ。さすがに、義経様も動くだろう。鬼三太は走っていた足を止めると後ろを振り向き、その薙刀、神器『大比叡』を構えた。


 「おう、逃げるのは、もう終わりか?」


 すぐ横の民家の上に維盛が現れた。挑発する為にわざと無知を装ったが、こいつの事は実はよく知っている。幼い時から神器を使う才能に長け、鞍馬の寺に預けられていた義経様の所謂、監視役を任されていたのだ。

 

 「おお、今こそ決着をつけようぞ」


 鬼三太が構えると、維盛が刀を抜いて切りかかってくる。


ーー妙だ。鬼三太は考える。比叡が効かない以上、あの虫の神器を使えば俺など瞬殺のはずだ。何故切りかかってくる?


 打ち合う事数回、また維盛は距離をとった


 「死ねよ。でかぶつ」


 維盛が言うと、鬼三太の後ろに例の虫が現れた。うむ。あとは義経様がなんとか…、どうにもならんと思ったら逃げてくれるだろう。あの雑兵の事は心配だが、我ら源氏再興のその日まで義経様を生かし続ける事こそ使命。命は惜しくは無い。

 鬼三太は無駄かと思いつつも、大比叡を虫にふるう。しかし、虫には傷一つつかない…。だめか。


 「鬼三太!虫は虚像だ!お前の影だ!」


 義経様ーーーー。鬼三太は、ほぼ反射的に自分の影に大比叡を突き刺していたー。

 すると、虫は苦しそうにもがきだした。


 「おお、効いた。」


 そして、虫は音もなく消滅した。


 「ちっ」


 と、維盛はつぶやく、その刹那ー 


 「顕現ー神器『鞍馬』」


 維盛の上空に義経が現れる。そして、凄まじいスピードで維盛の頭上に落下する。間一髪、気付いた維盛は「うおおお!」と、慌てた声を出してに横に飛び、回避した。


 「惜しい!」


 義経は叫ぶと自分の刀を抜いて維盛に切りかかる。維盛はそれを刀を抜いて止める。


 「出て来たか、義経。残念だったな。奇襲で俺を落とせなくて」


 「そっちこそ、今あの虫を出したら私をとらえられるんじゃないのか?そんなに長い時間ではないだろうが、間隔をあけなければ使えんのだろ?」


 維盛は黙っている。


 「それに…いざとなれば家の中に逃げ込む手もあるだろ?」


 つばぜり合いの間、維盛は悔しそうな顔をした。


 あの能力は月も虫も飾りみたいなものだ。実体はその者の影。月で出来た影にあると、慶次郎は言っていた。一度に一人にしか使えず、再使用に間隔が必要な能力、さらに必要になるのが「影踏み」だ。気付かれないようにはしいていたが、能力を発動させる為にその都度、対象の影を踏んでいた。だから、どうしても月の影が反対方向に伸びている相手の影を踏むためには刀を抜いて切りかかり、距離を詰める必要があった。


 「ここまで分かれば怖い能力ではない。うかつに近づけない事だけがこちらの脅威だったからな」


 「屋内に逃がすと思うか?こっちは10年この能力と付き合っている、能力がバレようが二人掛かりだろうが…お前をとらえる方法はいくつもある。」


 鬼三太が義経に加勢しようと寄ってくる。義経の神器『鞍馬』は本来敵に接した時点で勝利確定なのだが、さっきあの雑兵に対して「遠あて」を使っている。あれをやってしまうと体のダメージと同時に長時間、「接している相手の重さを操作する力」も使えなくなる。自分の体のみの操作なら使えるのだが…、あの維盛、能力がなくてもかなりの使い手だ。義経の分が悪い…と、鬼三太は予想する。


 「大丈夫だ鬼三太。維盛よ。残念だがな、こっちは…」


 直後、維盛は背後に現れた気配に背筋が凍る。そして心臓に強い一撃を受け、意識が昏倒していくのを感じていた。


 「三人掛かりだ。」


 維盛の背後に現れたのは、当然慶次郎だ。


 「神器『鬼丸「…、あなたの神器、頂戴します。」


 慶次郎の手には、維盛の根珠が握られていた。


 しばらくして…

 虫に捕った3人の家来は、意識を失った維盛の影から出てきた。3人とも出てきた時は意識が無かったが、しばらくすると目を覚ましどうやら他に何も無かったらしい。


「今、京に入るのは危険だと思っていたが、随分気付かれるのが早かったな」


「私の索敵にも何も無かったけど…、何か都の中全体を監視するような能力者が平家にいるのかもしれないわね。」


 鬼三太と日立がそんな話をしている。 


「こいつ…どうしますかい?」


 倒れてる維盛に向かって継信が言う。維盛の体の上には、彼の神器の根珠が置かれている。慶次郎はとりあえず、根珠を義経に渡していた。実際、このまま義経一行が大人しく見逃してくれるとは限らない。今は大人しくしておこうと考えている。このまま慶次郎は少し離れた所で義経達の様子をじっと見ていた。


「この神器…持っていてもあまりいい事無さそうだ。若が吸収してしまいますか?」


「悪いな、継信。その神器、維盛に返してやってくれないか?」


「いいんですかい?」


「ああ…、知ってるかもしれんが、そいつは鞍馬寺に預けられていた私の監視役の任を追っていてな。子供の時からよく会っていた。当時からいけ好かない奴ではあったが…なんというか、私の数少ない幼馴染みたいな存在なのだ。私が無断で京を抜け出した事でかなり肩身の狭い思いをしたのだろう。もちろん平家との戦が始まれば、命の取り合いをする事にためらいはないのだが。ここで借りを返しておきたいのだ。」


「最近…。お父上の平重盛公が亡くなったと聞きました。清盛公も病気で体調を崩しがちだとか…。平家も一枚岩ではありません」


 言ったのは、忠信だ。


「居場所が無くなって、なんとか手柄を立てたくて単独襲ってきたのかもしれんな。こいつのこの能力…徒党を組めば無敵なのに。」


「解りました。若がそう言うなら俺に異存はありませんよ。……ん?」


 継信はそういうと、維盛の体を二度見した。さっきまであった維盛の神器が無くなっている。義経達が見回すと、少し離れた所に慶次郎が立っている。慶次郎の手には神器の根珠が握られている。


「あ!貴様!」


 鬼三太が叫ぶ。


「約束通り…俺はこれで消えさせえて貰う。この根珠は手数料って事で、じゃ、三日月!」


 慶次郎は三日月を発動させて義経一行の前から姿を消した。


「消えた!」


「あの野郎!最低だな!」


「はっはっは。維盛には悪いが逃げられたな。一筋縄ではいかん…が、ますます欲しくなったぞ。あやつ。おい、みんな、そんな顔をするな。とりあえず、今回は諦めて京を離れるさ。」


「結局…骨折り損だったわね。今回は」


 日立はそういうと大きくため息をついた。


 一時程後…、義経一行から充分過ぎる距離をとった慶次郎は神器三日月を解除した。ここまで離れれば、そう簡単には見つからないだろう。少し市街地から離れた古い山寺…いまは無人で慶次郎は京都ではここを中心に行動をしている。予定は狂ったが、良い神器が手に入った。とりあえず、しばらく京を離れるか…。となると、まとまった金が早急に必要だ。この神器は吸収するより売った方がいいのだが…京都中の神器屋に平家と義経一行が網を張ってる可能性があるな。もうここで吸収しておくか…


 慶次郎が神器を胸に近付けた時、持っていた維盛の根珠が淡く光っているのが解った。そして、腰に付けていた「数珠丸」がリーンと音を立てた。


 「あ、やば…」


 慶次郎は、慌てて根珠を置いてその場を走って逃げる。

 その時、慶次郎は寺の賽銭箱の前に腰を下ろしていたのだが、その場ですさまじい爆発が起こった。慶次郎は衝撃はで吹っ飛ばされ、地面を転がった。


「顕現…神器「水鏡みずかがみ」ますらお」


 そういう声が聞こえた。参道の鳥居に一人の武士が立っていた。まだ若いりりしい顔立ちをしているが、かなりの巨躯の持ち主、服の上からでも膨れ上がった筋肉が解る。手には一振りの刀が握られている。この爆発はその刀を振るった衝撃派によるものだった。


「悪いな。京の町には、俺の親父の神器で結界が張られている。平家の人間だけだが…、人だけでなく神器の位置も全て把握できるのだ」


 あの根珠自体がセンサーに引っかかっていたのか…。三日月でも隠れられない。慶次郎は木陰に隠れながら、その武士の顔を見た…。


「ちなみに、今吸収しようとしたが、それはもっと危険だ。別の人間の神器で平家の人間の根珠には吸収されないよう安全装置が付いている、吸収していたら、呪いで体中から血を吹いて死んでいた所だ。すまんな命もお前の神器もいらん。だが維盛君の神器は返してもらう。」


 条件付きで致死性のウイルスを発生させる神器…。たしかに危なかった…だが…。慶次郎は一歩前に踏み出す。


 その武士の目の前に、慶次郎が現れたのを見た。維盛の神器は神社の瓦礫の横に転がっている。これ以上、追う必要はないし彼は当然逃げてしまったものと思っていた。だが…


「ああ…お前だったのか…」

「平……教経のりつね……」


 慶次郎の目は怒りに満ちていた…。



 満月はまだ明るい………

 桜の花びらが月明かりに照らされながらヒラヒラと舞い散っていた。




ここで話は、2年前…、彼がこの世界に転移してきた時に遡る…。


なんか、なろうっぽいタイトルつけたい。

異世界行ったら弁慶でした…とか…か。なんか、ないものか。


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