第20話 北条政子1 夜の誘惑
タイトル詐欺ですね。エロい話ではありません。
〇鎌倉 城下町
「昨晩は随分とお楽しみだったようだな…。」
言ったのは鬼三太だ。その言い方やめて…と、慶次郎は返す。
昨日が何かと言うと、義経と頼朝の事だ。本当に一晩中、話していたらしい。帰ってきた彼女は、憑き物が落ちたかのようにスッキリした顔をしていた。そして出発後、富士川で平家と一戦やる際の先陣を仰せつかった…と、家来達に告げると、そのままドロのように眠っている。日立が義経についていてくれると言うので、男4人は外で食事をしようと鎌倉の町に繰り出していた。
「最近心労がひどかったからな。今は少しでもお休み頂こう。」
言ったのは継信だ。
「でも優しくて真面目そうな人でよかったよね頼朝様。」
忠信が言う。
「ふむ。あの若さで、北条氏を完全に我が物にされている。流石の…何とい言うのか…何なんだろう」
「俺の故郷じゃ、カリスマなんて言い方をするかな。生まれ持った人を惹きつける才能というか、神格性というか……」
慶次郎は言う。そこで鬼三太急に助平面をして言う。
「しかし、見たか? 恐らく奥方の政子様だと思うのだが、まさに絶世の美女とはあの事。この鬼三太、女人を見て固まったのは初めてだ。」
嘘つけ。と、忠信の容赦無い突っ込みが飛ぶ。なんでも、最初は北条氏は結婚に反対だったらしいのだが、2人でこっそり逢瀬を重ねとうとう押し切って結婚したんだって。と、忠信が嬉しそうに言う。ロマンチックだよね〜。と、忠信はいつの間にか覚えていた言葉で締める。
「だが、あの笑顔はなんというか、作り物のようだ。本当の自分を隠す仮面のような…な」
と言ったのは継信だ。慶次郎はなるほどと思う。確かにあの美しさは近寄り難いってのを通り越して、何か怖かった。しかし、もしコネクションができれば、頼朝にダイレクトに意見を言える貴重な存在だ。できれば仲良くなりたいのが慶次郎の本音だ。
事は4人が店を出た所で起きる。
人通りが多い賑やかな繁華街。弁慶は、その向こうにちらりと女性の人影が見えた。あれは…
服装は市井の服だったので、そんなに目立ってはいなかったが…確かに、今まで話してた北条政子その人…だったのではないか? 少なくともよく似た人だ。無関係ということは無いだろう。 なんだこの偶然。こんな時間に、1人あの格好でどこへ行こうと言うのだ?
「おい。忠信、あれって…」
と、慶次郎が言い、忠信が振り向いた時にはすでにその人は無くなっていた。
「どうしたの? 」
「いや…、俺…ちょっと行ってくる。先に帰っておいてくれ。」
慶次郎はそういうと、戸惑う忠信達を置いてその人影の方へ走り出した。
「色街はそっちじゃ無いぞー。」
と、鬼三太の声が後を追っかける。
無視して慶次郎が、彼女を見失ったであろう角まで走ると、左に曲がったはるか遠方にさっきの女性の人影が見えた。
慶次郎は静かに三日月を発動させる。あの人とコネクションを作る最初で最後のチャンスではないのか? これは。行った先で見てはいけない物を見てしまいそうな気もする。ひとまずついていって見るか…。三日月を使えばまずバレない。自分は脅迫めいた事をしてコネを作れるとは思えないし、当たれば八卦外れれば逃げるだけ。
その実、綺麗なお姉さんへの(エロい意味も多分に含む)興味本位に他ならないのだが…。慶次郎は、政子と関わりを作る僅かな可能性をかけ静かに…、その闇に溶けていきそうな、美しい影を追った。
ミステリアスな政子様…
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