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義経異聞伝~ZINGI~  異世界行ったら弁慶でした  作者: 柴崎 猫
源平合戦 開戦編
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第15話 逃亡の果て

〇椙山 別の所 日の出間近の時間


「ようやく見つけたぞ。北条義時ほうじょうよしとき…いや、頼朝!! 」


 平維盛たいらのこれもりは叫んだ。頼朝に付けた蟲の能力の代償で体へのダメージが大きい。しかも、今日は朝からずっと山の中を歩き回っている。しかし、その苦労もようやく報われる…。

 対する頼朝は、北条義時ほうじょうよしときと数人の兵士に守られ相変わらず意識が戻っていない。よくこの時間まで逃げ回ったものだが、ここにきて、一番捕まってはいけない人間に見つかってしまった。


「神器 『陰陽蟲おんみょうこ十六夜灯篭いざよいとうろう


 維盛は小さく言う。2匹の人間大の大きさの蟷螂かまきりが現れる。源氏の兵士達は恐怖におののき悲鳴を上げる。


「ちっ」


 維盛だけ小さく舌打ちした。5匹だすつもりだったのに2匹しか出ない。一匹一匹の力も体調が万全の状態で出すときよりも、かなり弱い…。だが、今は躊躇している暇はない。「行け」と、維盛が一言いうと蟷螂は頼朝に襲い掛かった。陰陽蟲の中では珍しい、物理攻撃タイプの能力である。蟷螂の斬撃を義時と兵士達が止める。維盛はその様子を見てふと、思った。


「義時。お前…、神器を持ってねーのか。」


「言うな! 天才神器使いに僕の気持ちが解ってたまるか!? 」


「分かる気もバカにする気もねえから安心しな。むしろ、その足りねえ力で、そんな状態の主に最後まで付き添う矜持を尊敬はしてやる。それに。」


 維盛は、ゆっくり刀を抜いた。


「神器があろうが無かろうが…戦場では、殺した奴が強者だ。」


 維盛は頼朝に直接斬撃を加えようと襲い掛かる。止めに入った兵の1人は一刀に斬り伏せられた。刃は頼朝に迫る。


「兄様! 」


 義時の声が響く。その時、太鼓の音が響く。維盛は反射的に体を引く。直後、雷撃が維盛のいた場所に走った。2匹の蟷螂はその雷撃を受けて消滅した。:


「まだ、捕まって無かったのか…。景時かげとき


 梶原景時かじわらかげときが木の影から現れる。樽太鼓状の神器『雷尽太鼓らいじんだいこ』はすでに顕現されている。


「苦労しましたぞ。貴方が捕らえた我が兵たちを可能な限り助けてから、ここに駆け付けましたからな。」


 絶対に直前まで近くで隠れていたな…と、義時は思ったが、今はとにかく助かったと彼は安堵する。


「てめえ…平家を裏切ったってことでもういいんだな? 」


「いかにも、頼朝公の絶対的危機を助けるという、この手柄を手土産に寝返った先でもせいぜい楽しませてもらいますぞ」


 ここまではっきり言うと逆に清々しいな…。と、義時は頭を抱える。


「構わねえ…。まとめてあの世に送ってやる。」 


 実際、今の維盛では景時の相手は少々荷が重いの事を景時は良く解っている。景時はニヤリと笑い、太鼓を構えるのだが…


「維盛様。加勢致します。」


 維盛の背後から大庭景親おおばかげちかが走って現れる。景時は「げ」と焦った表情をする。土系の泰山と雷は相性が良いとは言い難い。颯爽と頼朝を助けて恩を売って逃げるつもりだったのに…。


「また寝返りますか? 」


 景時の横に並んだ義時が言った。


「そ、そんな事する訳なかろう。見くびらないでいただきたい。」


 そして、義時は今度は声を押えていった。


「夜明けまであと少しです。なんとか時間を稼いでください。」


「やつら…大丈夫なのか? 」


「分かりません。ダメだったら我々もここまでです。」


「う、うむ」


 冷や汗をかきながら、景時は雷尽太鼓を構える。


「景時…貴様の下衆な性格は前から気に入らなかったのだ。ようやくお前を屠れる…。ネズ吉! 」

 

 大庭景親が叫ぶと、彼の肩に乗っている鼠の目が光る。周囲の土が隆起しはじめる。


「ちい」


 景時は咄嗟に雷神太鼓を2回たたく。周囲に雷撃が走る。しかし…。雷鳴と共に走った雷は、景親が鋭く隆起させた土の先端に引き寄せられそのまま地面へと吸い込まれた。


「何!? 」


「そろそろ付き合いも長いからな。景時…。お前の神器…というか、高い山の頂や平野に立つ一本の木に落ちることが多い雷の特性を考えれば、さばき方はいくらでも思いつく。」


 得意げにいう景親にいよいよ景時は焦る。これはマズイ。助けに入ったのに軽く返り討ちされる。本当にまずいぞ。いよいよ、景時の顔は冷や汗だらけになる。


「義時様! 夜明けです!! 」


 遠くの山の向うから日光が差してくる。

叫んだのは義時の家来、源氏側の兵士だ。彼は懐から砂を取り出し周囲に撒く。義時達はその砂に注目する。弥太郎が転移陣の出口を作っていなかったら、この砂はただの砂だ。もうこれ以上、追撃から逃げる術がない。


 一瞬時が止まった。


「転移陣発生! 繋がりました! 」


 よしーーーー。

 その言葉を聞くと、兵士たちは頼朝の体を持ちあげその転移陣の中に駆け込んだ。


「あれは、金爛砂子! いかん。逃げる気か?! 」


 景親の声が響く。維盛も反射的に彼らを追撃しようとした。


「ええい、爆音と光だけでも!! 最大出力じゃあ!! 」


 そう叫ぶと、景時は力いっぱい雷神太鼓を叩いた。周囲がたちまち光に包まれる。そして義時ら、源氏側の武士は次々とその転移陣の中に飛び込んでいった。




オッサンズバトル…。でも、ネズ吉って何だよ…。


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