第4話 嘘
※この話に登場する源義経は美少女です。
(なんか、煽り文句を入れてみた。)
〇伊豆 椙山山中
慶次郎は青い顔をしながら、数人の兵士たちと維盛に付き従っていた。一行は今、急な山の斜面を登っている。こうしてる間に、梶原景時が頼朝を発見してしまったら、ここに来た意味がない。そして、仮に源氏側の落ち武者と戦闘になった時がもっと最悪だ。三日月と鬼丸は使ったら十中八九、維盛に正体がバレる。虎徹だけで戦えるか…っていうか、万に一つ、頼朝と一戦するはめになったら最悪だ。義経の破滅フラグ回避は不可能になるうえ、その前に義経に殺されてしまう。何より気になるのは、行方不明の忠信だ。せめて無事でいてくれたらいいのだが…うかつだった。忠信は強いし頭もいい。少々の敵なら軽くあしらえると思って完全に油断してた。とにかく、考える事が山ほど増えた。俺、もしかして、来ない方がよかったんじゃ……?と慶次郎はため息をつく。
その時、前を歩いていた、維盛が急にバランスを崩し倒れそうになる。慶次郎は反射的に虎徹を発動して維盛の体を支えていた。
「だ、大丈夫ですか?」
「おお、悪いな。」
維盛は慶次郎に言ってまた歩き出した。
「維盛様、やはり陣にお戻りください。そのお体では……。」
「うるせえ! さっさとついて来い! 」
維盛はさらに先に歩いていってしまった
「体調がお悪いのか?」
慶次郎は無意識のうちに、横にいた兵の一人に聞いていた。さっきから、あまり話さないようにしてたのに、しまった…と、慶次郎は思う。
「ああ、同行させていて悪いが内密に頼む。あの神器を使った式による反動なのだ」
「あの神器? 」
『陰陽蟲』の事だろうか?
「見ていなかったのか。維盛様は頼朝のあの悪夢のような神器に打ち勝ったのだ。何年も準備を費やし、体にもあれだけの反動がある。」
「いったい、どんな能力…? あと、参考までに頼朝の能力も知りたい。」
「おい! 」
前を歩いていた、維盛が振り返っていた。
「下らない話をするんじゃねえ。」
「は、はい…」
慶次郎とその兵士は同時にそう言った。
慶次郎は考える。維盛はそこまでして、頼朝に勝ったのだ。だとすれば、本当に今頼朝はピンチを迎え、どこかの洞窟に隠れているのだろう。これは、本当にこんな事をしている場合じゃ無いぞ…。自分の能力だけで頼朝を助け出せるか…。
〇同じ山の別の場所
梶原景時は、数名の部下を引き連れて山の中を歩いていた。忠信は一定の距離を保って慎重に跡を追う。出がけはえらく面倒くさがっていたが、山に入ってからは、迷いなく一方向に歩いている。あえて他の平家から遠ざかっているように見える。いったい、この大事な時にどこに向かっているのだろう?
やはり、一度、弁慶に連絡を取るべきだろうか? そういえば、もう別れて随分とたつ…。不意に忠信は前を歩いていた景時らが視界から消える。忠信は戸惑ったがすぐ尾行が気づかれたと悟り慌てて逃げようとする。
「妙だな。何故、平家側の人間が梶原をつけているのだ。」
今まで気がつかなかった。真後ろに人が立ってる。しまった。二重尾行か…。景時の背後を見張る人間もう1人いたのだ。男は素早く刀を抜いた。殺気が辺りに満ちる…
顕現…神器『高雄』!
忠信の周囲に瞬時に炎の壁ができる。いつもの、のんびりとした忠信からは信じられない早技。忠信の戦闘モードにスイッチが入る。その武将、佐奈田義忠は慌てて後方に飛び退いた。が、忠信は次の行動を起こしていた。顕現させた錫杖で佐奈田の胸元を確実に突いた…。佐奈田は、声を出すまもなくその場に倒れる。
「神器『愛宕』八寒!…血潮まで凍りつけ…」
とにかくすぐにこの場を離れなければ…と、忠信思った瞬間。忠信の目の前で凄まじい閃光、轟音が弾けた。それが雷鳴だと気付く前に忠信は吹き飛ばされ、木に強く体を撃ちつけた。電流のせいか、半身が痺れている。
「顕現…神器『雷尽太鼓』。驚いたなあ雑兵と思ったのに、佐奈田義忠を一撃で倒すとは…とんだネズミもいたものだ。」
木の影から現れたのは梶原景時である。肩に樽太鼓を担いでいる。
「着ている服からして平家の人間ですかね。なぜ、我らの尾行を? 」
そうだ。見た目だけなら平家の兵の格好をしていたのに問答無用で襲ってきたのは何故だ? 忠信は痺れた体で考える。待てよ…佐奈田義忠って…。忠信は薄目を開けて自分が倒した男を確認する。着ている服、家紋、…間違いない。北条方についてる有名な武将じゃないか。なぜ、平家の景時と一緒にいるんだ? まさか…。
「佐奈田の旦那、死んでませんぜ。意識は無いみたいですが。」
「助かったな。頼朝から借りた大事な戦力だ。勝手に殺しては、以後、奴との関係に差し障りがあるからな。」
もちろん忠信が手を抜いただけだが、ようやく忠信は合点がいった。景時は既に平家を裏切っているのだ。頼朝を助けるために今、こうして山に入った。だったら、もう源氏…味方じゃないか。なんとか、話さないと…
しかし雷撃のせいで体が痺れて動かない。
「こいつ、どうしますか?殺してしまいますか? あ?でもよく見たら女の子だ。可愛い顔してます」
ーーまずい…。
忠信は心の中で思いっきり焦る。景時は「どれ? 」と顔を覗こうと近づいてくる。
その時…
煙というには、あまりに煌びやかな、金粉の煙が周囲に舞い上がった。景時らは、一瞬目を瞑った。
「煙幕? 誰だ!? 」
やがて煙が引く。景時が見ると、忠信の姿は既に無くなっていた。
「逃したか…しかし、何者だったのだ?」
景時は憮然として言った。
多分、忠信ネタはこれ以上引っ張らない…。




