第23話 平泉編 後始末 4 行く先
和尚のキャラ、活かしきれて無いなー
〇平泉市街地、茶店の店先
「久しいの……。元気そうにやっとるようでなによりじゃ……。」
「アンタ本当に突然現れるな」
床几に並んで座り茶を飲んでいるのは、慶次郎と安竜和尚である。今回は慶次郎もお尋ね者ではないので、2人はリラックスした雰囲気での会話となった。
「今回は先に連絡したであろう。これでも心配しとったのだぞ。あと、お前が前にくれた醤油も恋しくての。さすがにもう残ってはおらんだろうが。」
「ああ、醤油なら平泉の神器で作れるようになったぞ。仲間に料理好きなやつがいてさ。色々、前の世界の料理再現してくれててホント、ありがたいよ。」
「何。それ、ワシにもちょっとよこせ」
「はっはっは。わかったよ。後で用意する」
掴みかかろうとする勢いで迫る和尚に慶次郎は笑って言った。
「ちなみに…今、お前が仲間と呼んだのは義経の家来衆のことか?」
「………ああ、そうだよ。」
慶次郎は和尚を見ながら言った。
「そうか…顔つきも京にいた時とは全然違う。もうワシの助言も必要はなかろう。」
「いや、それが、そうでもなくてさ……。相変わらず、平家や北条氏の動きも良く解らないし。」
「おお…そういえば、北条は、この国や義経にちょっかいをかけておったな」
「知ってたのかよ。あんた秀衡様と仲いいんだろ? 教えてやってくれよ。」
「わしは基本、組織的に政治的な協力はできない事になっておる。そのような些細な情報交換もな。秀衡もそれを承知でワシと付き合っておるのだ。お前こそ話せばよいのではないのか? 」
慶次郎はそこまで言われて、少し黙る。弥太郎との協力関係の事もあるし、何より今この事を義経に話せば、どうしても彼女と頼朝との仲に亀裂を入れるような事を言わなくてはならない。それも、自分がこの世界である程度先の事が解る……という、きわめて曖昧な根拠を元に…。どこかで話さなくてはいけないのは慶次郎も解ってはいるが、こちらの義経はどうも、兄頼朝に異常なまで狂信的な信愛の情をよせており、話す事はかなり危険だ。
「ふむ。お前さんはお前さんで色々悪だくみしておるようだの」
「悪だくみと言うな。俺の行動は全部、主君の為だ。」
そこまで言うようになったか…と、和尚は心の仲で思った。
「そうだ。ワシも色々、自分の事、組織の事、説明をしなくてはお前にしなくてはならん。やはり、世がそういう流れになってきたのだ」
「また、意味深な言い回しをして…」
この点については、慶次郎は突っ込まない事にしている。和尚には恩があるし、話せない事情があるのもなんとなく察している。
「一度、一緒に清盛にあってもらうぞ? 」
「平清盛か…正直、あまり会いたくないが…一度、助けてもらってるしなあ。」
ふと、慶次郎は教経を思い出してしまい、慌てて記憶を消す。
「お前さんにとって悪い話ではないはずだ。次に京に来るときにワシに連絡をよこせ。当然だが、義経達にはその事を知られんようにな。源氏の者たちとは、ワシあまり会いたくないのだ…」
「いや、それ普通に考えて何年か後だぞ? 」
「それで構わん。ただ清盛自体最近体調が思わしく無いらしくての。まあ頭の片隅に置いておいてくれ。」
弥太郎の能力を使えば、京まででも日帰りができそうだ。あいつの事だからきっと京にも、転移陣を作ってるだろう。しかし、肝心な弥太郎との連絡が取れない。慶次郎は考える。まあ、今はいいかと結論付けた。
「他に、何か言っとく事あるか? 」
「ああ、そうだ…。別件だけどな。俺、今少し、困った事になっている。」
「困った事じゃと? 」
和尚は眉をひそめた。
「明日明後日の話じゃ無いんだが……源義経は……俺の世界では、このままいくと悲劇的な死を迎える。歴史に語り継がれるほどの悲劇…」
あまり、未来の事を知らないようにしたいと言っていた和尚に慶次郎は、それでも聞いて欲しいと言ってから続けた。和尚は真剣な目でそれを聞いていた。
「弁慶もその時、義経を守って一緒に命を落とす……。」
「話は分かった……。」
和尚は、そこまでで慶次郎の話を切った。
「だが、お前さんは、覚悟を決めた目をしとる。この世界で弁慶として生きていくと。ワシも立場上限界はあるが、可能な限り助けを出そう。故に…」
出来るまでやってみるとよい……。和尚はそう言った。
このまま行くと、義経と弁慶は確実に悲劇的な最期を向かえる…俺は…あいつの為に…あいつらの為に、その運命を変えたい。切り裂いてやりたいと思ってしまった。その結果。俺がその運命にからめとられて命を落とす事になっても。
意味深な事を意味深に書くの下手すぎる…
今回で奥州平泉編は終わり。
平泉編の役割は主要キャラの自己紹介ですかね。あと、慶次郎のこの世界での重要な動機決定…。
次から源平合戦 開戦編です。




