第16話 始まりの終わり その1
「やったか?」からスタート
ほら、だからエネルギー波のとどめはフラグだって…。
〇京 東山 山村
巨大な弓から放たれる、大きな光の矢…。これ、まさか、火炎と氷が等量でスパークしてて、全てをを消滅させるエネルギー波じゃないだろいうな。何ローアだよ?と、慶次郎が思う間もなく、その光の矢は義経一行を直撃、背後にそびえる山を吹き飛ばし、地形を変える…。
数秒後、 光の矢は消滅した。
「おお。鬼三太。やれば出来るじゃないか!」
大比叡を構えた鬼三太の後ろの義経が言う。慶次郎、忠信、日立も彼の後ろで無傷だ。
「普段、出来ないヤツみたいな言い方止めて貰えますか?っていうか、見てください。止めたのは俺じゃ無いですよ。」
見回すと、吹き飛んでいるのは、義経一行の右側のみ。左側は、元の古寺が残っている。
「攻撃が逸れたのですよ。おかげで比叡でも止めれたのです。」
「逸れたー。何故?」
義経は、教経の方を見た。教経の肩に矢が刺さっている。やがて矢はふっと消滅する。傷口が深いのか、教経は肩を押えてうずくまる。鮮血が肩にどんどん広がっていく。
「おお、その矢は…お前か…継信!」
義経達が後ろを向くと、弓を持った継信が立っている。
「この佐藤継信。弓こそがその存在理由。威力で劣ろうが、早打ちと狙いは決して後れをとらん。」
「見事だ。継信。鬼三太とは大違いだな」
「何か、私をダメ個性持ちにしようとしてませんか?義経様」
騒いでる、義経一行をしり目に、慶次郎は教経の前に一人歩み出る。そして、右手に鬼丸を顕現させた。教経と慶次郎はそこでにらみ合った。
「待て…」
義経が、慶次郎の肩を叩く。
「弁慶。手負いの獣に手を出してはいかん。今はここを離れる事を優先しよう。我らの敵はこいつではない。平家そのものだ。」
「関係ないし、お前に指図される言われはない。俺はこいつを吹っ飛ばしたいだけだ。」
慶次郎は教経に襲い掛かろうとする。
義経は、落ち着いたまま慶次郎の首根っこを掴んで、引っ張った。慶次郎は「ぐえっ」っと声を上げ後ろに倒された。
「お前の実力では、間合いに入った瞬間今のこやつでも軽く返り討ちにされる。弁慶。逆上すると周りが見えなくなるな。戦場では気を付けた方がいい。平教経。改めて提案する。ここは、痛み分けという事で、お互い引かないか?」
こいつ。部下のおかげなのに、随分と偉そうに言えるな。と、慶次郎はひっくり返りながら思う。
教経は数秒、義経と慶次郎を睨んでいた。が、しばらくすると、ふっと息をつき、立ち上がった。
「承知…。さすがは源氏の御曹司とその家来衆…。その実力、この平教経、恐れ入った…。」
「それは、こちらの台詞だ。平教経。」
「あと、貴様、佐藤継信と言ったか?」
教経は継信の方を見て言った。継信は、「いかにも」と言い教経を睨む。
「この平教経も弓で他人に後れをとった事は初めてだ。この肩の傷の借り、今日は預けるが…高くつくぞ?」
「勘弁してくださいよ。こっちだって散々やられたんですから。」
やれやれと継信は言う。教経はまた、ふっと笑う。最後に慶次郎の方に少し視線を送り、そして消えるようにその場から飛び去った。慶次郎は、彼がいなくなったその場を睨んだまま、拳を握りしめた。
〇京市街、某所。
朝日があがり、周囲は大分明るくなっていた。とある民家の屋根の上に一人の男が座っている。この時代に似つかわしくないドレッドヘア、そしてサングラスのような眼鏡をかけている。随分と傾いた男。覚えておいでだろうか、随分前に義経一行に倒され、あまつさえ根珠を奪われた、平維盛という男がいたことを…。
維盛の横に、教経が現れる。
「取り返してきた。」
教経は維盛の横に彼の根珠を置いた。
「ちっ。余計なことを…」
「そう言うな。これがまだまだ必要だろ。お前にはさ。」
教経は根珠をとると、すぐに心臓に押し当て、自分の神器を元に戻した。
「ひとまずは感謝する。手前も随分やられたみたいだな。その様子じゃ」
教経の肩には既にかなりの包帯が巻かれている。
「強かった。本人とは刀を交えなかったが、家来衆はどれも侮れない。今回京に戻ったのは、例の平家狩りの男…、あれを仲間に引き入れる為だったそうだ。。まんまと連れていかれた」
「俺の根珠を獲った奴だな。そんなヤバイ奴なのか?」
「いや。全く戦力にならない。しかし使い方によっては厄介な奴だ。そして、その使い方を義経はよくわかってる…」
教経は自嘲気味に笑った。
「なるほどな…。」
「野放しにして他の源氏と結びつくと結構な脅威になる。今回の失敗の責任は俺がとるが…、次は最初から俺もいく。」
「…おい、てめえ…いいかげんウゼエんだが。」
「何がだ?」
「俺に気を使ってるその態度がだ!いいか、俺の親父は勝手に暴走して、お前に負けて、処罰されたんだ!そして俺は平家の跡取りなんて立場を外されて、今、せいせいしてる。あの件に関して俺達に貸し借りはねえ。」
「その通りだ。そんなつもりは毛頭無い。同じ平家の同世代なんだ、協力していこうではないか。」
維盛は、けっと一言いい、立ち上がる。
「仕事なら手は組む。だが必要以上に慣れ合う気はねえ。失った俺の立場と清盛様の信頼も俺自身で取り戻す!そんだけだ」
維盛は立ち上がり、去ろうとする。
「つれないな。昔はサラサラ髪のお河童頭の坊ちゃんだった…」
「うるせえ!殺すぞ!」
「はいはい。次は鎌倉に内偵だったな?北条氏も食えない奴らだから…。気をつけろよ」
「言われなくても解ってる…」
言うと維盛は隣の屋根へ飛び移り颯爽と走り去った。
「鎌倉…くしくも、源頼朝か…」
教経は一言、つぶやいた。
〇京 郊外の某所
「さて、決断の時ですな…」
京都から少し外れた道の途中。慶次郎と義経一行がいた。鬼三太と義経が言い合っている。
「なぜだ。このまま強制的に平泉に連れ去って帰れなくすれば、もう言う事を聞くしかなくなるぞ?」
物騒な事言ってんじゃねーよ。と、慶次郎。
「百歩譲って仲間になるのは良しとしましょう。しかし、事情は分かりませんが、この者、平家に狙われています。同行するだけでも、相当の危険を伴います。少なくとも、この者が自分の意志で付いてくる…。そうでない限り同行を認めるわけにはいきません」
「なら大丈夫だ。もう弁慶は私と一緒に来るのだもんな!」
「お前のそのワケのワケラン自信は何なんだ?」
「だって、お前、もう京にはいられないぞ?いったい、これからどこに行こうというのだ?」
「半分以上、お前らのせいだろうが!」
「まあまあまあ。それなら、こういうのはどうかしら?」
日立がポンと手を叩いて言った…。
鞍馬寺から義経に逃げられた責任を負わされた維盛君は、父の後ろ盾を無くしていた事もあって結構な降格処分になっています。死罪も視野に入って、なんらかの処罰を受ける所でしたが、メキメキと頭角を現している教経が身元引受となる事を申し出て許されました。すっかりグレてしまった彼ですが、意外と現場で働く事は性に合ってるようで、教経ともなんやかんやで仲良くやってるようです…。
鞍馬寺時代の維盛と義経の話とかも入れたかったのですが、また次の機会に…。




