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第20話 せいいっぱい

書いてて死にたくなる話ってあるもんですねえ。完全ハーレムにすれば、こういうやりとり無しで、とりあえずは楽なんだろうけど、それは特異霊装的に辛いものが……。


 はるの舞を見た翌日。慶次郎は、はるの師匠に自分の結論を伝えるため……はるの店にやってきていた。


○京 はるの店


「あー、弁慶さんだ。」


 と、店に入るなり飛びついてきたのは、あの戦いの時にいた、はるの友人である。


「ねーねー。例のお食事会、いつにする? 継信さんが都合つくならいつでもいいよ。」


「俺の都合も、どうでもいいのね」


「ちょっと! 」


 と、慶次郎の腕に絡まってた彼女を、はるは引き離す。


「その食事会の話、初耳なんだけど? 」


 友人は、昨日、忙しい時にはるに手伝いに来てもらった詫びとして、今日はこちらの店のヘルプに入っているようだ。もちろんヘルプなんて言葉はここにはない。


「いいじゃん。はるも呼ぶからさ。でもいいなー。ずっと待ってた人が来てくれたなんてさ。」


「アンタちょっと黙って。」


「何よー、愛しのき……アイタ!! 」


 友人の言葉をはるは思いっきり手をつねって止めた。そこに先の師匠が顔を出した。


「あら、弁慶さん。」


「お師匠さん。お話が……あります。」


 師匠は弁慶の顔を見ると、では奥にと、促した。慶次郎はそれに続く。


「そういえば、昨日も師匠と話してたな。何だろ? 」


 友人は、その様子を見てから徐に立ち上がる。


「私、自分の店に戻らなきゃ。アンタさ。師匠と弁慶さんの会話。聞いた方が良いと思うよ。盗み聞きでもね。」


 キョトンとしてるはるを置いて友人は出て行った。


 奥の部屋に通された慶次郎はまず、はるの舞を見せてくれたことへ礼を行った。


「もし、はるが……、白拍子として身を立てていきたいと思っているなら、俺も、師匠さんが言う通りにするべきだと思います。でも、はるが一緒にいたいって少しでも思ってくれるなら……。」


「貴方はあの子の全てに責任が持てるって言うの? 」


 慶次郎は首を振った。


「正直、彼女の事を女性としてどう思っているか、今もわかりません。前に一緒に暮らしてた時は妹みたいに思っていました。でも、別れてからしばらくは彼女に会いたいってずっと思ってました。向こうみずで、ワガママだけどいつも前向き明るくて……、ガメツくて自分勝手だけど、自分の事より他人の事を考える。優しい彼女の笑顔がずっと恋しかった。本当は会うのが怖かったんです。俺も色々変わったし、きっとあいつも変わってる。」


 慶次郎はここで出されていた茶を飲む。そして、もう一度、師匠の目を見た。


「でも、だから、待っててくれたって聞いて、ちょっと、戸惑ったけど、本当に嬉しかった。何より……。あんなに素敵な子が自分を思ってくれてるんなら、男として見ないフリはできないっすよ。」


 慶次郎は、グッと師匠の方を睨んだ。


「今すぐには無理だけど、彼女の事をちゃんと受け止めて、2人が納得する結論を出します。軍に同行することは危険ですが、彼女の笑顔は俺が絶対守ります。だから……」


 だから、どうするんだっけ? と、慶次郎は、そこまで考えて、自分が今、相当恥ずかしい事を言ってと気づき、顔を赤くして俯いた。そもそも彼女が自分の事を男としてどう思ってるか? なんて、彼女の口から聞いた訳でじはないのだ。


「あっはっは! わかったわ。あーおかしい。分かりました。」


 慶次郎が、え? という表情をしていると師匠は笑いを堪えながら言った。


「ごめんなさいね。だって、5年も会ってなかった男に押しかけたのに、そもそも女として見られてなかった……なんて事だったら可哀想じゃない。だから、ちょっと意地悪して試してみたの。」


 慶次郎は、はあ……と、半ば呆然としながら言った。


「はる次第だけど、貴方と一緒に行きたいって言うなら応援してあげる。その後の事は貴方達の問題だから……。」


「ありがとう……ございます。」


 慶次郎は安堵のため息を漏らす。


「でも、まだ貸し出すだけだからね。もし本当に娶ってくれるとなったら、ちゃんと身請け金もらいますからね。」


「え? 」


「そりゃあ、娘みたいに育ててきた子を渡すんだから、それなりにね。あんなに、青クサイくてウブウブなセリフを私に叫んだんですもの。当然、払えるわよね。」


 師匠は軽く慶次郎にウインクした。とたん、慶次郎はまた、さっき自分で言ったセリフの恥ずかしさが込み上げてきて、言葉を無くす


「えーっと、身請け金、前の娘の時はいくらくらいだったかしら? 」


 と、師匠は立ち上がる。そして……。


「あ、もう入ってきても良いわよ。」


 と、部屋の障子を開いた。

 そこには……、驚いた表情のはる立っている。最初、突然開いた障子に驚いていたはるだが、慶次郎と目が会うと真っ赤になって顔をてでおさえて、師匠の後ろに隠れた。


「きょ、今日は、これで失礼します……」


 慶次郎もまた、慌てて立ち上がって何もいえぬまま部屋を出て行った。師匠いつまでもクスクスと笑っていた。


○店の前


 慶次郎は、店を出ると恥ずかしさのあまり、走り出そうとした。


ーーああ、くそ。死ね。死ね。


 と、心の中で自分に叫ぶ。


「慶次郎!! 」


 後ろから、はるが叫ぶ。慶次郎は真っ赤な顔のまま振り返る。はるもまた顔を真っ赤にしている。


「ごめん!! 私やっぱり、アンタの事が好き!! 多分、会った時から! 」


「まて、お前、天下の往来で何言い出すんだ……。」


「だから、少々嫌がられてもついてく! アンタがたとえ誰の事を見てても絶対振り向かすから! 」


 「宜しくお願いします!!!! 」と彼女最後に京都中に響くくらいの声で言った。

 それを聴くと慶次郎、無言で後を向き歩いていこうとする。


「いや、なんか言えーー!! 無視すんな!! 」


 はるは走って慶次郎後ろから抱きついた。その勢いで慶次郎は前のめりに倒れる。


「ダメ。もう恥ずかしさで死ぬ。しばらく世界から消滅したい。」


「だから、私も一緒に恥ずかしい事してるんじゃない! ちょっとはシャキッとしてよ」


 はるはうつ伏せの倒れてる慶次郎をポカポカ叩きながら言う。


「はる……。」


「ん? 」


「遅くなってごめん。」


 はるに顔を見せられないまま、慶次郎は言う。はるは、赤くなっていた顔をさらに赤くした。


「バカ……おかえり。」


 最後に一回、慶次郎を叩くと彼女は涙を溜めた、精一杯の笑顔でそう言った。


はるちゃん。良かった。

さて、次です。次なんです。明日上げますので、とにかくお楽しみに。色々あるとは思いますが、とりあえず筆者は、はるちゃんに幸せになって欲しいと思ってますので……。


異世界の話です。史実とは関係ありません。

読んで頂いてありがとうございます。宜しかったら、感想、ブックマーク他、残して頂けたら嬉しいです。


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