第15話 そして暗転する
大庭景親とか、とりあえず名前だけ出して、鎌倉殿〜に媚びてみる。はると再会もいいですが、やはり教経との対峙感慨深い物があります。
○神器『天蓋 花京鳥瞰図』の中
「皆、未だ終わってない。来るよ! 」
武甕雷の爆炎が引くと、そこに教経は未だ立っている。咄嗟に顕現した刀「ますらお」で、忠信の奥義を止めたようだ。
「信じられない。前も出鱈目な強さだったけど、武甕雷を刀で止めるなんて……。」
「よく言う……。俺にしてみれば、「ますらお」の衝撃波を物理的に止める攻撃など存在するとも思わなかった。」
教経はゆっくり、口を開く。
「佐藤忠信……。大庭景親を討ちとったらしいな。前に会った時は兄達に隠れて目立たなかったが……、恐ろしい男に成長したものよ。」
忠信も錫杖を構える。
「待て待て、お前達!」
慌てて鬼三太が2人の間に割って入る。
「鬼三太。義経様は? 」
「とりあえず、大丈夫だ。」
まだ、頬にパンチの跡が残る慶次郎も2人の横に駆けつける。それを見て鬼三太が続ける。
「暗殺は失敗だぞ、平教経。だが、こちらの主君も貴様も満身創痍。前と同じ形になったが、引いてくれんか? 源平合戦の決着は戦場でつけようではないか。」
「受け入れられん! 貴様らは今やわが仇敵。この好機、絶対に逃さん! 」
刀を構えた教経の凄まじいプレッシャーに再び慶次郎達は押される。
「まったく、満身創痍に加えて3体1。これだけ優位に立っても一向に勝てる気がせんわ。」
鬼三太は、『大比叡』を構えてため息をつく。慶次郎と忠信も構えをとる。
ーーその男の言う通り。ここは引くのだ教経。主は未だ平家に必要だ。ワシと違ってな
空間に老人の声が響いた。さっき会った、この空間の神器の主。あの老人の声だ。
「親父! しかし、ここままでは!! 」
教経空間中に聞こえるような大声で叫ぶ。
ーー安心しろ。主の無念は、この場でワシが晴らす!
その時、空間が大きく捻じ曲がった。空が真っ暗になる。
「空間が……狭まっている。」
慶次郎が呟く。
「親父! 何をしたんだ!? 」
ーーお前には黙っていたが、ワシのこの空間神器、攻撃能力をもたん代わりに一つ、切り札がとってある
「まさか、親父……。」
ーーそう、ワシの命と引き換えに、この空間ごと中にいる人間を圧殺できる。こやつらはワシが命に代えても仕留めるゆえ……
「く……」
教経は、すぐに背を向けてその場を離れた。
「逃げたぞ? どう言う事だ!? 」
「俺達も空間の外に出ないと。多分、この空間神器の主が空間ごと俺達を殺す気だ。」
慶次郎が叫んでいる間も、その空間はどんどん狭くなってくる。
だめかーー。慶次郎は心の中で思う。そんな慶次郎をはるはじっと見つめていた。
ーーもしかして、今ってまずい状態なの? っていうか明らかにこの空間、危なそう。せっかく慶次郎に会えたのに。私……。
その時、はるは、義経が起き上がり、慶次郎にそっと抱きつくのを見た。そして、一瞬見つめ合った2人の顔はゆっくり近づき……。
状況が非現実過ぎて後になって思い出しても、はるはその光景は夢だったんじゃないか? と思うことになる。しかし……
ーーそういえば、義経様は、さっき好きな男は、きっと一番最初に助けに来るって言ってた。それって……。
はるの思いはよそに……。空間はどんどん暗転した。
はるちゃん、滑り台まっしぐら……と、思ってる人は、とりあえずこの章の最後までお付き合い下さい。
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異世界の話です。史実とは関係ありません。




