表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
172/186

第14話 はると慶次郎

そして、再び出会った2人……果たしてそれがもたらすのは?

○神器『天蓋てんがい 花京鳥瞰図かきょうちょうかんず』の中


慶次郎は最初の一瞬、その少女が何を言ってるのか、分からなかった。しかし、この世界で自分の事を「慶次郎」と呼ぶ人間は、もう、そう何人もいない。安竜和尚、教経のりつね夫妻、そして……。


「はる……はる、か? 」


 慶次郎とはるは、ようやく向かい合った。最後に別れて、もう何年経つか……。最後に見たはるは、間違いなくまだ子供だった。しかし、目の前にいるのは……、バランスよく伸びた手足が印象的な大人の女性の体つき。顔も、慶次郎の世界なら、なんとか48とかの一角を担えそうな程の愛らしい顔立。しかし、気が強そうなのに、人懐っこいあの目つきは紛れもなく、あの時、数ヶ月だが一緒に暮らしていた、はるの顔だった。


「慶次郎……なんか、背、縮んだ? 」


「いや、お前がでかくなったんだよ!! 」


 それを聞くと、はるは笑顔になりながらも、ポロポロと涙を流した。


「慶次郎だ……。本当に慶次郎だ。」


「はる……どうして……。」


 なんで、こんな所に彼女がいるのか、すぐに結論が出なかった。


「主様! 遅くなりました! 義経様は!? 」


 駆けつけてきたのは山吹だ。


「山吹さん! 」


 慶次郎は、我に帰る。今は義経が死にそうなんだった。まずはそっちかと慶次郎向き直る。


「例の診療所の一角にこの空間の入り口がありました。それより……」


 山吹は義経を見つけるちすぐに駆け寄った。


「義経様がここまで……。いったい、あいつは……? 」


平教経たいらののりつね。平家の主力武将だ。」


「あれがあの……。」


 明らかに、巴や義仲よりもさらに上の実力者だと、鬼三太と打ち合っている全身傷だらけの男を見ながら、彼女は思う。そしてそっと義経の額に手を触れる。


「酷い熱だわ。これは怪我や疲労とは違う……。何かの病かしら? 」


「そんな、朝はなんとも無かったのに……。」


 はるが横から声をかけてきた。


「義経様の病は、敵の神器によるものよ。剣で傷をつけられたのが発動の式なんだって。その式を踏まない限り感染はしないらしいわ。」


「本当かよ? 」


「その神器使いは、すぐに逃げちゃって……。義経様は、この状態でずっと連戦なの。」


 「私を庇って、こんな事に…」と、はるは悔しそうな顔をする。


「こちらは? 」


 山吹が怪訝そうにはるを見る。


「ああ。古い知り合いなんだ。偶然居合わせた? らしい」


 ああ、うん。と、はるは顔を赤らめ、慶次郎もまた、ドギマギとした反応をする。山吹はさらに一瞬怪しんでに2人を見た。


「ふうん……。でも、だったら困ったわ。私の神器じゃ、病は治せない。義経様の意識が無いのは傷や疲労よりも熱が原因だと思うから」


「待った。神器で発生させた、病なら……。」


 慶次郎は、教経のりつねと打ち合っている鬼三太の方を見た。


「鬼三太! 来てくれ! 『大比叡』が要る! 」


 鬼三太は教経(教経)の薙刀を受けながら慶次郎の方を見る。


「馬鹿もの。行こうにも、この状況では……。」


「鬼三太! そこから離れて! 」


ーー奥義「武甕雷たけみかづち」!!


 忠信の声が響く。鬼三太は必死に教経を引き離し、距離をとる。そこに大爆発が起きる。


「酷いや。山吹さん。足が速いからって置いて行くなんて。」


「あら。私は一刻も早く主様の元に駆けつけたかっただけです。」


「忠信!! 」


 慶次郎達が見ると、道の向こうから忠信が歩いてくる。


「まったく、どいつもこいつも家来筆頭を軽んじおって」


 鬼三太が義経の元に駆け寄る。


「鬼三太。神器で発生させた病気らしい。『大比叡』で消せるかな? 」


「やってみよう。」


 鬼三太はうなづくと、薙刀の峰を静かに義経に当てた。薄く義経の体が光る。


「何かの能力を解除した手ごたえはあったな。」


「なら、あとは私が! 」


 山吹は駆け寄ると、顕現したクナイ『白地桃源』を義経の心臓に突き立てた。


「大丈夫。彼女の神器だ。これで義経は良くなるはずだ。」


 胸に刺さった神器を見て、慌てたはるに慶次郎が説明する。


「あ、うん……。」


 ここで、もう一度、はると慶次郎は見つめ合った。


「慶次郎……。遅いよ……。」


 山吹はその表情を見て、複雑そうな顔を見せる。


「いや……それが、その義経がさ。一人で突っ走って出て行っちゃって、行き先も言わないから、皆で、必死に探してたら、こんな夜に……」


 聞いてる途中、はるは俯き、拳を握りしめていた。


「そっちじゃないわー!!」


 はるの容赦ないパンチが慶次郎の顔面を捉え、慶次郎は派手に吹っ飛ぶ。


「お前、今、気功で殴っただろ! 絶対、和尚に習っただろ!! 」


 慶次郎は地面にノックアウトされた状態で辛うじて言う。


「皆。まだ、終わってない。来るよ! 」


そこに、忠信の声が響いた。



鬼三太、随分久々に活躍してる……。


読んで頂いてありがとうございます。宜しかったら、感想、ブックマーク他、残して頂けたら嬉しいです。

異世界の話です。史実とは関係ありません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ