表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/186

第14話 私はこれで弁慶になりました。

過去編は、早く現代に戻りたい一心で急いで書いてしまった…。いつか、じっくり書き直したい。

〇平教経の屋敷


 教経が屋敷に戻ったのはその日の夜遅くだった。帰ってきたら、玄関で海が待っていた。教経は無言のまま、奥の部屋にはいり着替えを始めた。海が横につき、着替えを手伝う。2人は無言だった。


「村は全滅させた」


「そうですか」


 一瞬、海の手が止まった気がしたが、2人は淡々と着替えを続ける。


「だが、慶次郎とはるは生きている」


 今度は、明らかに海の手が止まった。がやはり、海は無言のままだ。


「はるにな…今日会った時…まるで俺が村を襲いに来た事を知ってるような口ぶりだった。慶次郎も思ったよりずっと早く村に帰ってきた…。お前の仕業か?」


「はい。詳細は言ってませんが…2人にそれぞれ、すぐに逃げるように使者を出して伝えました。」


「そうか…」


 着替えが終わり、教経は部屋を出て行こうとする。


「仕方ないだろ!清盛様の御意志だ!」


 突如、大きな声をだした教経に海は表情一つかえない。


「解っています。貴方が本当は、こんな事したく無い事も。でも最後には清盛様の命令を、ただ遂行する事も。それに納得していることも」


「では、なぜ、このような事をした?」


 教経は海に詰め寄った。


「いけませんか?死んでほしくない…と思ったからです。」


「それは俺に対する当てつけか?」


「勘違いなさらないでください。私はあなたの妻。貴方が例え鬼や妖に堕ちようとも、地獄の果てまでお供する所存。武家に嫁ぐと決めたあの日から覚悟はできております…でも…」


 ここで、海はようやく泣き出した。目から大粒の涙を流しぽろぽろと泣き出した。


「せっかくできたお友達と、袂を分かつ事が…これほど辛い事とは思いませんでした。武家の妻失格です。どのような罰もお受けする所存です」


「済まなかった…。」


 教経は海を抱きしめる。海はまだ泣いている。


「覚悟が無かったのは俺の方だ。だから、お前はそのままでいてくれ。お前だけが…俺をこの現し世に繋ぎとめてくれている。だから、もう泣くな…」


 教経は、海をさらに強く抱きしめた。


〇そして、山村


 空が白んできた、明け方…、慶次郎は気絶していた村の広場で目を覚ました。和尚が横で焚火をしている。


「目を覚ましたか…。村の惨状は、ワシの不徳の致す所…本当に悪かった。あの後、結局平家の奴らにも人を出させて、手伝わせてな。死んだ者は簡単だが弔わせてもらった。」


 さっきまでいた広場にたくさんの墓が作られている。やっぱり夢ではなかったようだ。


「まさか、教経と接触しておったとはな。解ったと思うが、あいつは平家の中で一番まともそうに見えて、かなり異常者だ。」


 慶次郎は俯く。


「改めて聞きたい、アンタ、いったい何者なんだ?」


 慶次郎はとにかく、一つずつ情報を整理するしかなかった。


ーあまり多くは語れんがー。ワシは、この国で特異霊装を管理しておる、とある機構の人間だ。そこの頭たる、お方の命で諸国を回って、特異霊装の情報を集めている。お前がその異世界とやらから、こちらにやって来たのは、特異霊装のいずれかの力では無いか?と思ってな。色々調べておったのだ。そのせいでお前の事が清盛の耳に入ったらしい。……おお、そうだ。管理しておるといったが、その機構自体は特異霊装を一つも所持していない。全ての所在を把握もできておらん。


 平家の人間とやたら知り合いだったのはー


 ーワシも一応、昔、武士をやっていてな。清盛ら平家の人間と組んで源氏と戦った事もある。清盛とはまあ…腐れ縁というやつだ。最近は、あの教経のような若い人間に武術を教える事を頼まれたりして、屋敷に出入りしとるのだ。顔見知りも多い。


 清盛が死んだという情報を聞いたのだがー


 ーその事も、あまり知らん方がいいかもな。かいつまんで話すと、今いる清盛自体は別に偽物でもなんでもない、まぎれもない清盛だ。だが、一度死んだ…という、言い回し…、それは清盛自身の神器とその能力の秘密に大きくかかわる単語なのだ。当然ワシも知らんが、奴の能力は情報が洩れる事でかなりの優位性が無くなる式が組まれているらしい。清盛の能力の話は平家の中では絶対の禁句だ。普通は知ろうとするだけで、命が狙われる。お前さんはそれを知ってしまった。


「ほら」


 と、言うと、和尚は細長い物体を慶次郎に投げた。見ると、あの教経が慶次郎に渡した脇差だ。


「お前の懐に入っていた。柄の所に細工がしてあってな。小さな神器が仕込まれておった。これだ」


 和尚は指先で小さな簪のようなものを、プチっとつまんで潰した。


「これ、教経に貰ったのだろ? おそらく誰か第三者の神器…お前の言動を盗聴するための物だろう。遠隔操作の神器ならそんなに長い時間機動できんはずだ。すでに盗聴する事はできまい。まあ、あやつもお前のことを信頼しきってはいなかったのだな」


 なるほど、それで教経は全て知っていたのか…。清盛の秘密を聞いてしまった事をー。でも、それで何も聞いてない村の人もー。「俺から聞いたかもしれない」ただ、それだけの理由で。


ーー清盛は、最初は秘密を聞いたお前とはるを殺すよう、教経に命じたらしい。誓って偶然なのだが、ちょうど、それと入れ違いにワシのせいで、お前が、異世界から来た人間であるという情報が奴の耳に入った。それが良かったのかどうか…。奴は命令を変更したようだ。…まあ、だが、ひとまずは助かったと思ってよいだろう。しばらくは身を隠して、ほとぼりを覚ますとよい。必要なら、またお前を匿ってくれる人を紹介する。


「いやーー」


 慶次郎はそう言うと、立ち上がった。そして、はるの居場所を和尚に聞いた。


「村の事だがな…。もしお前がこの村に来ていなかったら…などと考えるな。お前が居なければ、逆に、もっと早い段階でこうなっていたはずだ。平家がそういう連中の集まりなのだからな。あまり責任を負うなよ…」


 慶次郎は無言のまま頷いた。

 はるは村から少し離れた高台の上にいた。ここに来たら朝日が上がるのが見える…と、一度慶次郎を連れてきてくれたことがあった。はるは慶次郎が後ろにくるとすぐにその気配を察した。


「慶次郎! もう大丈夫なの? 」

「ああ…お前は…? 」


 はるは、慶次郎と目が合うと、また目から涙をこぼした。慶次郎は、はるの頭を優しく撫でた。


「神器…無くなっちゃった。」

「ああ…そうだったな」


 慶次郎は、懐から根珠を取り出した。


「はるの神器をとったヤツのだ。もう、はるのは元に戻せないらしいけど…やるよ。少しは気が晴れるだろ」


「…よく、アイツらに取り返されなかったわね」


「教経に吹っ飛ばされた時、これだけ木の影に隠しておいたんだ。他にとった根珠は全部吸収したし、うまく、ごまかせてるはず。」


「ふふ。さすがね」


 はるが少しだけだが、笑ってくれたので慶次郎は安心する。


「これは慶次郎が吸収してよ。それなら少しは気が晴れる」


「わかった」


 慶次郎はその根珠を心臓に押し当て、根珠を吸収した。はるは少し悲しそうにそれを見ていた。


「慶次郎…これから、どうするの?」


「しばらくは、身を隠すよ。その後は…特異霊装を狙って…今度こそ、神器を集める。」


 はるは慶次郎をじっと見つめる。


「私、帰る所もないし、皆死んじゃったし、神器も無い。一人は嫌だよ。だから…一緒に行ってもいい?」


「ダメだ」


 即答した慶次郎にはるは、え? と聞き返した。

 和尚に、はるの身の振り方を考えてもらうよう頼んであると慶次郎はつづけた。そして。


「俺は、はるも他の皆も守れなかった。いや、今までだって村の人たちや和尚。それに認めたくないが教経とか、色んな人達が助けてくれてたから、なんとかやってこれてた。でも結局他人に頼りっぱなしだったから、今、こんな事になった…。強くならないといけない。一人で立てるくらいに…」


「慶次郎…」


「はるもそうだ。強くなるんだ。力の強い弱いじゃない。神器のある無いじゃない。一人で世の中を立って歩いていける力だ。村の人も町の人も皆それを持ってる。俺達はそれが見えていなかった。」


 はるは、しばらく俯いていたが「わかった」と慶次郎を見てうなずいた。


「故郷から、こっちに来て、ここの人達は…しばらくの間、なんか会う人も見えるものもゲームやアニメ…っつっても解らないか…えっと…そう、御伽噺の中の世界でいる人も皆、話の中の登場人物みたいな…。そんな空しい存在だって思ってた。でも、はるや、村の皆と話してると…、ちゃんと血の通った…大切な人達だって思った。だからー」


 慶次郎は、はるの方を見た。


 いつになるかわからないけど、故郷に帰る前に必ずまた、はるに会いに来る。その時までにお互い、ちゃんと歩ける人間になっていられたら、その時はーーーーー



 そこまで言うと、山の上から朝日が昇ってきた。さっきまでの惨劇が嘘のようにそれは綺麗な朝日で、慶次郎は思わず言葉を失った。



 あの後、俺ははるに何と言うつもりだったのかー。



 今でも慶次郎は、ふと思い出す。その日別れてから、慶次郎ははるとは会っていない…。


〇それから、しばらく後…京 市街 夜


 一人の男がフラフラと歩いていた。酒でも飲んでいるのであろうか。偉く上機嫌だ。

 ふと、男が前を見ると、ひとりの男が立っている。いつの間に現れたのだろうか?見慣れない顔だが…。そこまで考えて、男は目を見開く。今まで目の前にいたはずの男が急にいなくなったのだ。そして、男はこの現象に心当たりがあった。最近、京市中に現れる怪盗…。平家の侍を中心に神器を奪って回ってる者がいる。それは神器の能力なのか、煙のように消えたり現れたりする。名前は…


 「怪盗、弁天丸…あなたの神器…頂戴します…」


 男は背後から強い衝撃を受け、静かに意識を失った。


 そして…時計は、再び、慶次郎と義経が初めて会ったあの日へと戻る…。



〇京都、東山、とある古寺…



「あれから一年…いや、秋だったからもっと前だな。本当に早い」


 教経がつぶやいた。怒りの形相で睨む慶次郎に教経は静かに見つめ返している。


「アンタ…人にあれだけの事やっとて、よく懐かしめるな…」


 教経は、それを聞くと、ふっと笑った。

 あの後、しばらくして、都が摂津の福原に遷都した。一時的にだが、清盛をはじめ、この教経などの平家の中心武将もそちらに移住したという噂を聞き、慶次郎は京へと戻った。そして今日まで…ひたすら、神器を狩り続けてきた。以前のはるが慶次郎の仕事に来た時の噂と相まってか、夜な夜な神器を狩る「弁天丸」なる怪盗が現れると諸国に流れるほどの噂がたった。特異霊装にたどり着くため…が一番の目標だったが、この教経との落とし前を付ける…。それがまず、慶次郎の頭の中にあった。


 慶次郎は鬼丸を構える。ちなみに、鬼丸は顕現すると指ぬきの手袋なる。しかも右手だけ。初めて顕現した時、慶次郎はその厨二アイテムに愕然として、なんとか別の物に顕現できないか、散々手をつくしたが、一度顕現したものは変更が不可能らしい。


「やめておけ、慶次郎。お前の神器の事は良く解ってる。勝ち目はないぞ?」


「こっちは、この一年、お前にリベンジする為にずっと修行と能力の改良を続けて来たんだ。吸収した神器も数知れない…。お前はここで倒す。平教経」


 リベンジの言葉の意味が解ったかは定かでは無いが、教経は静かに、「ますらお」を構えた。慶次郎は考えた。三日月を使っても、攻撃しようとして能力が解けた所にカウンターを合わされる。ならば…。

慶次郎は、鬼丸を構えたまま教経に走った。三日月は使わずにー


 教経は、三日月すら使わずに突っ込んでくる慶次郎に、確かに意表は突かれた。しかし…、これでは間合いに入った瞬間に真っ二つだ。教経は細かいことは考えず、「ますらお」を振り上げた。


 その時ー


 顕現。神器『虎徹』


 慶次郎の5つ目の神器。能力、と言える程、特殊ではない。脚力を強化して足が速くなる能力。これは三日月とも鬼丸とも併用して使える。予想通り、教経は急加速した慶次郎に完全にタイミングを外され刀を振り上げてガラ空きになった胴を晒す。貰ったーと慶次郎は鬼丸を教経の心臓に鬼丸を押し当てようとしたーーー。が…


 次の瞬間慶次郎は教経の上方に吹き飛ばされていた。教経の前蹴りが、彼のアゴを完璧にカチアゲていた。慶次郎は数メートル後方まで飛び、地面に叩きつけられた。


「また能力を増やしたのか。いや、驚いた…。いい攻撃だったが…。お前自身、神器に気を取られ過ぎだな。他が全く見えていない。」


 教経は軽くため息をつく。意表を突いた事は間違いないらしい。無防備のアゴへの一撃受け、意識がなくなりそうになるのを慶次郎は必死に耐えた。


 ちくしょう…まだ足りないのか…これだけやって一年間…これだけやって、これだけの神器を吸収したのに、まだこんなに差があるのかよ…。こりゃ、どっちにしろ、特異霊装なんて夢のまた夢だったな…。

 

「確か、あの時、清盛様はもし捕まえたら殺さず生きて連れて来いとの御命令だったな。まだ有効なのだろうか?」


 教経は一歩一歩、慶次郎に近づいてきた。逃げなきゃいけないのに、神器どころか、指を動かすこともできない。これまでか…。


神器『高雄』ーーー


 そんな声が聞こえる。そして慶次郎の周囲を夥しい量の炎が覆った。教経は慌てて慶次郎と距離をとった。


「無事ですか…?ってダメそうですね。その様子じゃ。」


慶次郎の前…教経に立ち塞がったのは、あの義経の家来の1人…佐藤忠信(女)だ。そして…


「これは、また随分とヤバそうな奴だな…」


 続いて現れたのは、鬼三太、

 そして弓を携え無言で現れる佐藤継信…


「本当今回は割に合わない遠征だわ」


 日立と呼ばれてた女性も続く。


「あんたら、なんで…」


ーーっって、こいつらがいるって事は…


「弁慶ーー!」


 瀕死状態の慶次郎に構わず抱きついて来た…のは言うまでもなく、義経だ。また偉い笑顔だ。そしてどんな美少女でも、今抱きつかれると痛いから…、いやマジに。そして、ちょっといい匂いするのが、なんか腹立つ。と、慶次郎はもがく。


「こんなに早く会えるとは思わなかったぞ?もはや運命だな。これは」


ーーうん。弁天丸の慶次郎で弁慶なんだね。俺。知ってた。大体予想ついてた。


 慶次郎は半ば諦めの境地で目を閉じた。


 運命…義経はそう言った。たしかに弁慶と義経なら、運命からはそう簡単に逃げられないだろう。


 まったく、これから俺はどうなってしまうのだろう…。  


 慶次郎はため息を一つ、ついた。




はるちゃんはいつか再登場予定。(そこまで書き続けられるだろうか?)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ