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義経異聞伝~ZINGI~  異世界行ったら弁慶でした  作者: 柴崎 猫
源平合戦 木曾の太陽編
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第53話 家族

一応、未だ『姫鶴一文字』の効果外なら、範頼は義経を操作できるのですが、そこはまあ、嘘も方便

○遠い昔 どこかの武家屋敷


ーーねえ。見て。かなり可愛く笑うようになったでしょ? 貴方の妹、きっと美人になるわよ。


 その人は、その赤ん坊をあやしながら、楽しそうに言った。笑うようになったのは赤ん坊だけでは無い。その人もだ。「子供ができて丸くなった」などと、側付の女達は言っていたが、確かに以前よりも優しく、そして子供に対して愛情を注ぐ普通の親になったーー


 そしてその人と僕も少しずつ、距離ができてきた。



〇粟津合戦場 鎌倉軍の陣


 範頼のりよりは目を開けた。すっかり静まり返った森の中である。


ーーここは……? 私はいったい……


 まず、手足が縄で縛られた状態である。そして自分が義仲にとも容易く意識を奪われ事を思い出した。彼はなんとか縄を切れないか、自分の神器を探る。


「無駄だ。貴方の神器の「写し」は全て預からせてもらっている。影の中に隠していた能力者も全て別に捕縛した。」


「義経……」


 彼は側に目を背けたまま座っている、その妹がいた。ますます「あの人」に似てきた。と範頼は思う。


「せめてもの情けで、根珠は取っていない……。」


「戦いは……。大正坊の奴はどうした? 」


「死んだ。そこに遺体が残っている。」


 範頼は大正坊だったと思われる肉塊に目をやった。範頼は諦めたようにため息をつく。


「言っておくが私は、貴方を殺す気は無い。理由はどうあれ、私は貴方のおかげでこの世に生を受けた。貴方がどんなつもりでそれを行い、私をどう思っていても、その事は覆しようの無い事実だ。」


「生を受けた……だと? 」


 範頼は吐き捨てるように言った。


「ふざけるな。木偶でく人形が! 貴様に命など存在してたまるか! 」


 義経はそれを聞くと悲しそうに微笑んだ。


「分かっています。今のこの私……、いつ特異霊装に乗っ取られるか分からない危うい存在だ。いや、今こうして話しているこの意識も人格すらも、神器に写し出した幻覚なのかもしれん。しかし、そんな私の元に集い、泣き、笑い、戦ってくれる仲間達がいる。私は今この場に在る事を誰よりも誇りに思っています。」


 範頼はそれを聞くと俯いた。義経は俯くと左手の薬指に指輪を顕現させた。


「これが私の『鞍馬』だ。そして……。」


 義経は懐から同じ形の指輪をとりだした。


「これが貴方が作った、『鞍馬』の写し」


 範頼はその二つの指輪を見つめた。


「能力を解除して下さい。もう、私をこれでを操作する事できませんし、何より……私にこれは必要無い。」


 範頼は何か言おうとしたが、やがてフッと笑い、俯く。義経の持っていた指輪の片方がフッと消えた。


「何故だ。なぜ、あの人は私を拒んだ? より完璧に特異霊装を管理する為、我が子をも犠牲にする。その汚れた思想の一端に協力できるだけで私は幸せだったのに。」


「母は、私を愛してくれていました。ただ、それだけです。私が幸せに生きれるようになるただそれだけの為……私に神器を残してくれた。」


「馬鹿なことを言うな! あの人は私の……」


 いつのまにか、2人の周りに慶次郎達、義経の家来衆、そして義仲の郎党らが集まっていた。2人で話をさせてほしいという義経の頼みを聞き遠ざかっていたが、いつしか自然に全員集まっていた。


「これが、私の答えです。義兄上。」


ーー彼女の晩年、私は彼女と意識的に距離を取るようになった。心のどこかでは、こう思っていた。彼女への想いが冷めたのだと。今までその異常かつ変質的な彼女に色香を感じていた私は、普通の母親になってしまった彼女には何の魅力も感じなくなってしまった……そう思っていた。


 義経が近寄りそっと肩に手を置こうとする。範頼はそれを、触るな! と叫んで振り払った。


「認められるか! 己の野望の為に家族を犠牲にする。あの人の為にだから私だってここまで……。」


「アンタさ。要はフラれたんだよ。それだけの事だ。」


 突然、慶次郎が言ったそのセリフに範頼は怒りの表情をしたがすぐ、妙に腑に落ちた表情をし自嘲した。


「もう、生きてる意味もない。殺せ。」


「義兄上! 私は貴方に対して頼朝の兄上となんら変わらない敬愛の念を抱いています。無償の愛を交わしあえる家族という存在に、この孤独だった義経がどれだけ憧れていたか!」


 涙目をしながらそっと範頼にさらに手を差し伸べる義経を見て、範頼はハッとする。あれだけ孤独な自分が憧れて手を伸ばそうとした家族という存在が今、向こうから手を差し伸べている。自分は今までこの手に何をしてきたのか? いったいどこで掛け違えてしまったのか? 自分はこの手を握りたかっただけなのに。範頼は無意識の内にその手に手を伸ばそうとした……。


 その不意の一瞬だった。範頼からも手が伸びたことに、一瞬顔を綻ばせや義経の目の前で、範頼の体が無惨に引きちぎられ、吹き飛んだ。

 あまりの一瞬の出来事に、義経は目を見開く。


「下らない。どいつもこいつも家族だ、繋がりだと……それだけの才能に恵まれて育ち、いったい何が不幸で、何が不満だと言うのだ……。」


「大正坊! 」


 つい、今しがたまでただの肉塊だったはずにその異形の者がすぐ横に立っていた。


「義経。残念だが、今回は君の勝ちだ。だが……タダではやられない。君たちだけでも……否、君の人生に余計な影響を与えてきたその仲間達だけでも……道連れにさせてもらおう。」


 大正坊はゆっくりと周りを見回しながら言った。

 

マザコンでロリコンでシスコンでドM。奇跡の変態共存体、範頼ここに散る!

異世界ものです。史実とは関係ありません。

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