第50話 目覚め
ようやくヒロイン? が覚醒します。
○義経の精神世界
ーーあなたはあなたの人生生きれば良いの。例え源氏の為に身を捧げるとしても……、それがあなたが何かを我慢する理由にはならないわ……
球体に触れると、母親との記憶が義経の脳裏に一気に溢れ出した。何だ? これは…… なぜ、今母親の声ばかりこんなに思い出す? この球体は……?
ーーあなたの才能はきっとあなた自身を狂わせる。そして、あなたもそのうち誰かを好きになる。その時は辛い思いをするかもしれない。だからその時きっと……
確か、病気を拗らせて、もう先が長くないと聞き……最後に会った時の話、あの時は意味がわからなかった。しかし…
ーーそうか、この球体は母が私を活かす為に作ったと言う神器『伊邪那美』
母が、私のために? 私は理想実現の為の道具では無かったのか? この神器からはそんな辛い圧力は感じない。むしろ……。
しかしなぜ、今になってこれが……そもそも何故この空間でこんなに自我を保てているのだろう?
……その答えは考えるまでも無かった。弁慶ーー。アイツだ。義経は彼の顔を思い出して、ふふふと笑う。きっと何か自分の為にしてくれているのだ。家来になるのも戦に出るのもをあれだけ嫌がっていたのに、いつも自分の為に全力で動いてくれる。きっとここ数日、他の家来達や義仲の娘とコソコソしていたのもきっと自分の為だ。
母上、ありがとう。そして弁慶。
ーー私は、今、お前に会いたい!
義経は目の前にある球体を握りしめて、力強く祈った。
ーーいつも、自分の気持ちに正直にいなさい。その時はきっと、私が力になるから……。
○粟津合戦場
依然目覚めない義経を樹上で押さえつけながら、迫り来る大正坊を慶次郎は見ていた。
「畜生! 」
三盛すぐに飛びかかったが、すぐに弾き飛ばされる。
「さっきの動きと別ものだね。あの終の拳とやらを打った疲労が相当だったんだな。」
「弁慶、気をつけろ。こいつ再生してからの方が力が上がってる」
「んな、気をつけろって言われても…。」
慶次郎は義経を抱えたまま身構えた。
「手間をかけさせてくれたが、これまでのようだね。」
慶次郎の真前に大正坊がやってきた。巴はまだ動けないようだ。
「君も動くなよ義仲。僕が何をするかわからないから」
義仲はチッと舌打ちする。慶次郎もいよいよ覚悟を決めた。
ーーちくしょう。ダメなのか、未だなのか、義経。頼む。目覚めろ……!
大正坊は慶次郎を吹き飛ばそうとその拳を突き出した。その威力は強大で、衝突と同時に樹上の枝の上に埃がまった。
ーーダメだ。直撃してるーー
義仲も三盛も諦めた。が……。
「すまんな。弁慶。厄介をかけた。」
目を瞑っていた慶次郎は静かに目を開けた。
義経が起き上がっている。そして片手で大正坊の一撃を防いでいた。怪物の手は、彼女に触れていない。おそらく『鞍馬』の力を反転させて、斥力で止めているのだろう。体から離れた位置への物体操作。今まで操作や暴走無しには出来なかった芸当だ。
「ばかな! 特異霊装の出力を制御しているのか? 」
大正坊が驚嘆する。
慶次郎彼女の目を見つめる。もう操作されていた時の虚な目をしていない。いつもの彼女に戻っている。
「全くだ。義仲が言った通り……手のかかる女だよ」
慶次郎と義経は、見つめ合い、そして笑いあった。
この話の舞台は異世界で史実とは関係ありません。
って、鎌倉殿〜が放送中は書いておこう
こっから、義経無双…になるのかな。いろんな意味で。




