第46話 七つ目の神器
頑張ります。ちょっとずつでも頑張ります!
○粟津合戦場
「新しい神器か? それなら、なんとかなるのか? 」
「わからない」
つぶやいた弁慶に義仲は「しっかりしてくれよ」と、嘆く。
「やれ。義経。弁慶に神器を使わせるな! 」
範頼が叫ぶと義経は手をこちらに向ける。
「まずい! 」
その手から放たれた重力波に義仲は剣立てる。するとシールド状のエネルギーがそれを止める。
「ダメだ。押し込まれる。ここじゃあ、長く止められねえ……。」
エネルギー盾は次第に押され、重力波に破られようとしている。
と、慶次郎はそんな義仲の横に立ち、右手に顕現した腕輪で義仲の『旭』の刀をちょこんと触る。すると…
「おお!! 」
義仲は叫ぶと重力波を止めていたエネルギー盾は、厚さを取り戻し重力波を押し戻しだした。
「押し戻した! どうなってんだ? お前の神器の力か? 」
義仲は盾を維持しながら、慶次郎に聞いた。弁慶は右手の腕輪を見ながら落ち着いて言う。
「神器『姫鶴一文字』。この金の腕輪で触った神器は一時的に出力が倍になる。」
「ほう、どんな神器でもか? 消耗が増してないし、便利だ。」
「ただし、腕輪から神器を離したら効力は訳15秒で消える。」
「何い!? 」
義仲が叫ぶとエネルギー盾が勢いに押されてに消滅する。義仲は慶次郎を引っ張って慌てて横に飛び退いた。彼らが立っていた場所の地面が激しく抉れて土煙が舞う。
「先に言え! 」
「しかも、一度に使えるのは3回までだ。3回目を使うと、一刻(約3時間)の間は次が使えない。」
「落ち着いて言ってるんじゃねえよ。なんだよ。その欠陥だらけの式は!? 」
「仕方ないだろ。急拵えでここまでしないと顕現出来なかった。ちなみにいつも体に接してる俺自身の神器なら、15秒の制限はない。でもこの神器すごく燃費が悪くて、体力が10分くらいしか続かない。」
「ああ、そうかい。で、その強化神器なら義経の暴走を止められるって? 」
「やってみないとわからない」
「だ、ろうな。」
義仲は大きくため息をついた。
「どうせ、もう他にやることもねえ。付き合ってやるよ。」
「ありがとう」
2人が立っていた場所に再び激しい重力波がえぐる。2人は二手に分かれて義経の撹乱を始める。
「巴! そっちの化け物しばらく頼めるか? 」
「やってみます。なんとか……! 」
『黒蹄獣』にのった巴は大正坊圧倒的な力に押されながらも、その機動力を駆使してなんとかその足止めをしている。
一方慶次郎達。義仲がなんとか、義経に攻撃仕掛けて隙を作り慶次郎が『虎徹』や鬼丸を駆使して間合いを詰めるも、結局、義経の重力波に阻まれた。
ーーダメだ。近づく事も出来ない。
「おい、どうすんだ? ここままじゃあジリ貧だ。」
「どうやら、君を買い被り過ぎたようだ。弁慶。何もできないじゃ無いか。義経。もうゆっくりで構わん。確実に弁慶にトドメ刺すんだ。」
範頼が、薄ら笑いを浮かべる。慶次郎は義経の重力波から必死に逃げまどっている。
「父上が平家に負けて……、離れ離れになってからも僕はずっと義経の事を見守っていた。まあ、他人の目を介してだけどね。鞍馬で順調にその力を開花させ、特異霊装の生贄に必要な力を一つ一つ身に着けていく中で、いくつかの不安要素があった。君だ。君を家来にして行動を共にするようになってから、彼女は明らかに変わった。それも僕の望まない方向にね。人間らしい感情も、目標のある人生も、共に向上し合う仲間も……生贄にはただ邪魔なだけさ。そう。」
ーー邪魔なんだよ……
暗い、ねっとりと絡みつくような、そんな範頼の声が聞こえない。
ーーどうする? せっかく用意した神器も相手に接しないと使えなみnい。
「弁慶。落ち着け。富士川の時はどうやって抑えたんだ? 」
義仲の声がする。
ーーあの時は……。
維盛が、瞬間移動で間合いの中に飛ばしてくれた。姉さんと山吹さんが敵を引きつけてくれた。皆で隙を作ってくれて……それでも届かなくて、最終的に維盛が……。ダメだ。また人を頼りにしたら別の犠牲が出る。それじゃあ、義経が暴走を嫌がっている理由……根本の解決にならない。
ーー『三日月』で隙をつくか?だめだ。全方位攻撃されたら同じ事だ。でも……
義経の視界から、慶次郎が消える。三日月のしくみを理解している普段の義経には、三日月は効かない。しかし暴走状態の義経には、『三日月』を使った慶次郎を見る事は出来ない。
「三日月か? もう見飽きたぞ。姿を現した所で義経が『鞍馬』で全方位攻撃すれば同じこと! 」
範頼は笑いながら言う。義経は無言のまま中空で待機している。さっきまでの動の戦いからはかけ離れた静寂が辺りを包む。義仲も、ひとまず慶次郎の出方を見る為、地面で動きを止めている。少し離れた所で、巴と大正坊が戦う音が聞こえる。
少し時間が流れたーー、一瞬の間……。慶次郎の姿が義経の背後の木の枝に現れ義経に飛び掛かろうとする。
「遅いわ! やれ! 義経」
範頼の声に反応するように義経の体から全方位に重力波が放たれる。それは慶次郎に命中し慶次郎の体は、地面に落下……せずに、すっと姿を消す。消えたその慶次郎は大きな赤い布を体に巻き付けていた。
神器『村雨丸』
慶次郎の分身を作り出す能力……。本来は、三日月の弱点を補うために使う能力だが、暴走状態の義経をだますには充分であった。
ーー全方位に力を放った直後……しかも、相手をしとめたと思っているなら隙が出来るはず。その直後なら!!
簡易な空蝉の術だ。本物の慶次郎は義経の死角に姿を現す。そして、木立を蹴って義経に飛び掛かった。しかし……
義経はすぐに慶次郎の方に顔を向ける。だめだ。暴走してても反応速度は落ちていない。慶次郎は心で思う。まだ義経に手が届くには距離があった。義経の右手がゆっくりと慶次郎の方を向く。
そして、その手から重力波が放たれた……。
神器『鬼丸』!
慶次郎は右手に顕現された鬼丸に気功を貯めてその重力波を止めようとする。
ーーダメだ、弁慶。鬼丸じゃ、あの重力波は止められない!!
義仲は心で叫ぶ。手塚三盛との闘いから何度も見てる。気功の力なら若干の防御は出来るが、それでもあの義経相手では力が届かないのは、わかった。
ーー力が届かない……? ん?
神器『姫鶴一文字』!!
慶次郎の右手に鬼丸と一緒に顕現されている、腕輪が光る。すると、鬼丸自体も淡い光を放った。
「鬼丸の出力倍だーー!! 」
慶次郎の右手からも大きく盾状の気が現れる。
轟音がして、重力波が弾かれる。義経は一瞬その衝撃でバランスを崩す。その手を静かに慶次郎の右手が握る。慶次郎は勢いで義経を押し倒し、近くの木の枝の上に着地した。
「やっと届いたぞ。今度こそ、この新しい神器。お前に……」
慶次郎は右手の姫鶴一文字を静かに義経のその無表情な顔に当てた。
存在すら忘れられてる神器やその設定使いまわす……。長い話を書くって難しいなあ




