第38話 なつめの戦い
まあ、あれですね。義仲と義朝、巴と常盤の対比って感じのシーン。
○粟津 義仲の陣の近く。
巴は再び薙刀を義仲に向けていた。
「お前の事は生まれた時から知ってる。まさか、こんな関係になるとは、思わなかったがな。」
「そんな話は聞きたくありません! 」
相変わらず、ヘラヘラと笑っていう義仲に巴は真剣な表情で怒鳴った。
「おいおい。別にふざけちゃいねーよ。俺はこれから死ぬんだぜ。少しくらい格好つけさせろや」
巴は薙刀を持つ手がカタカタと震えていた。その右手には合わせて八咫の鏡が握られている。
「そっちこそ、何を戸惑ってるんだ? おれは構わねえっていってるだろ? お前なら、その力を使えばきっと鎌倉を倒せる。あとはちゃんと木曽の家を再興してくれよ」
巴の手はまだ震えている。その様子を少し離れた所から慶次郎となつめは見ていた。慶次郎は何度か声をかけて止めに入ろうとしたのだが、その都度、なつめに制され、ただ見ていることしかできなかった。
「ちゃんと、見届けないと。父様と巴が出す結論なら、私は全て受け入れる……。」
なつめは、そう呟いた。慶次郎は目をやると、なつめの手もカタカと震えている。包帯巻いたその目からは涙を流しているかもしれない。「強い子だな」と、慶次郎もこきは余計な事をすべきじゃないと、ただ、その様子を見ていた。
「私は……あなたを愛しています。」
「知ってる。そして俺もだ。巴。」
「私は、そんなあなたの家と誇を守りたくて……。」
「知ってる。大丈夫。お前になら、全てを委ねられる。さあ。」
義仲巴に向かって両手を開く。巴は「うああ!! 」と、叫んで手に持っていた、八咫の鏡を義仲に投げつけた。鏡は義仲の心臓に張り付く。巴はそれを目掛けて、自らの薙刀を突き刺そうと突撃を繰り出した。慶次郎は思わず、目を瞑った。
慶次郎はゆっくりと目を開ける。義仲た巴の間に、八咫の鏡がポトリと落ちた。巴の薙刀は……、義仲の心臓に届いていなかった。巴は、カタリと薙刀を地面に落として、その場にひざまづいた。
「できません……! 」
巴は目に涙を溜めて言った。
「すみません。私にはあなたを殺す事はできません。……決めていたのに。戦場に出たら、女は捨てて刃を振るうと、覚悟を決めていたのに……。」
義仲は八咫を拾うと、ゆっくりと巴に近づいてきてその肩をかがみ込むようにして抱いた。
「謝るのは、俺の方だ。辛い選択を任せちまったな。でも、お前を好きになって良かったって、俺は今心から思ってるよ。」
巴は大きな声をあげて嗚咽した。
「父様!! 」
なつめが木陰から飛び出してくる。
「なつめ、なんで……。」
義仲は巴から手を離し、駆け寄ってきた、なつめの肩を掴む。顔を上げると、そこに慶次郎がいた。それで、義仲はだいたいを察したようだ。
「なつめ……、ごめんなさい。私は、貴女の父上を手に掛けようと……。でも、その覚悟すらなくて……。」
巴は、まだ大粒の涙をこぼしている。
「大丈夫。2人が出した結論なら、私はどんな結果でも絶対責めない……でもね……。」
なつめは巴の方に歩み寄り、優しく巴を抱き包んだ。
「ここで刃を置いてくれる巴で良かった。大好き。お母さん。」
巴は、それを聞くとまた大きな声で泣き、なつめ強く抱きしめた。
そんな2人を慶次郎と義仲は優しく見つめていた。
次くらいからやっと本章ラストバトルに……行けたらいいな。
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