第34話 提案
説明回が続きます。次くらいからは…。
〇宇治川 鎌倉軍の陣 夜
「範頼様はその暴走を制御できるのですか? 」
今度は横にいた鬼三太が聞く。範頼は懐から指輪を一つ取り出した。
「それは……。私の鞍馬の顕現体と同じもの! 」
「生まれたばかりの君の体から僕の神器『黄泉比良坂』を使って切り放した『鞍馬』の顕現体の「写し」だ。これがあれば、僕は君を自在に操る事が出来るのだが……誓って、使ったのは今回が初めてだ。特異霊装に乗っ取られた君の意志を鞍馬を通して呼び戻せる……。」
「つまり、それがあれば私の暴走を抑え込む事が出来るのですか? 」
「もちろん。暴走の度合いにもよるだろうね。相手は特異霊装だ、どこまで力を含有しているか、想像もつかない。ちなみに、『八尺瓊』から分離させた「写し」も存在する。それならもっと確実に制御できるはずだが、それは今、頼朝兄様に渡している。僕たちに、謀反の意志が無い事を証明する為にね。」
「そんな途方もない力を、何故、貴方の神器は制御できたのですか? いくらなんでも、特異霊装に干渉出来る神器なんて信じられません」
「もちろん。僕もそれなりの代償を払った。それだけの式だったよ」
日立の言った言葉に、範頼は無言のまま上着を脱ぎ始めた。その裸になった上半身は斜めに巨大な傷痕が残っていた。受けた時は相当の傷だったと予想出来る。義経の家臣一同は黙り込む。
「これが、特異霊装に干渉しようとした者への報いだ。拒絶反応……と、表現した者もいた。数週間、生死の狭間をさまよった。同時にその時……特異霊装と君の鞍馬の「写し」を分けた事を最後に、僕は新たに「写し」を作る事が出来なくなった。以後、別の人間を新たに操作する事は出来なくなった。能力の大部分を失ったのさ。」
「なぜ……範頼の義兄様はそこまでして私を? 頼朝の兄さまにも相談せずに……」」
範頼はそれを聞くと、少し恥ずかしそうに頭をかく。
「あまり言いたくなかったのだが……、僕は君の母上、常盤御前に憧れていた。あの時は子供だったが、今ならはっきりわかる。家族に抱くそれ以上の感情を求めていた。その異常性も含めて……僕は彼女が好きだった。その人が命を懸けて守った君と特異霊装だ。僕自身も命を懸けるに値すると思っている」
義経はそれを聞くと、俯いて深く考え込んだ。
「義経。僕は君に提案する。君が集めた家来達と一度別れて、僕の元へ来て欲しい。必ず僕が君を守ってみせる。」
家来一同が驚きの表情をする。
「待って下さい。暴走を抑えられなかったのは家来である私達にも責任があるかもしれませんが、それも原因が解らなかったから、今なら……」
「君達は何もわかっていない……。」
食い下がった日立に範頼が言い放つ。
「制御できたとしても彼女は特異霊装なんだ。もし、正式な発動条件を踏んでその力が本当に発動した時、義経はどうなると思う? 」
日立は、それを聞いて「はっ」とする。
「答えは正直僕にもわからない。義経自身が誰かの命を犠牲にして力を発動するのか……、彼女自身が命を失い誰かが能力を手にするのか……。長い特異霊装の歴史で、特異霊装と人が一体化するなんて事は一度も無かった。それだけ、彼女……いや、彼女とその周りの人間は不安定で危ない状態にあるんだ。」
さすがの日立もこの範頼の演説に言葉を失った。
「少し……考えさせてください」
義経はかろうじて、言った。
「構わない。あの弁慶……彼の意見も聞いて考えるといい。だが、忘れないで欲しい。今のまま、平家との戦が続けば……きっと、君は大切な人を犠牲にするだろう。それを止められるのは僕しかいないんだ」
範頼は、あの人の好さそうな笑顔を義経に向けなながら言った。
神器を使って人を生み出しす→宝貝人○、大きな力が体に封印されててリスクと引き換えに力が使える→ナル○
がんばれ、オリジナリティ
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