ゲスガキのたくらみ
遠心力を使った浮遊物の創造。それはかなり昔から構想としては存在した。
俺の知っている人類の歴史において、それらの研究が本格化されたのは第二次世界大戦以降だ。確か質量を持ったリングを、傾斜部分を設けたクランクシャフトで回転させることにより上向きの遠心力を発生させ、浮遊力及び推進力を生み出す推進装置だったか。
某国の極秘飛行実験のいくつかで制御不能に陥った結果UFO騒ぎが起こったが、プラズマの制御方法とそれに必要な素材(合金生成技術)の開発の遅れで、遠心力飛行技術確立には二百年(実用化に三百年)かかっている。
この技術を発展させて作られたドローン『マッシヴサテライト』の利点は、ゆっくりとだが非常に高度を高く取れ、いつまでも空に浮かべておけるところである。改良を加えられ進化したこのドローンを用いれば、中間圏との境の成層圏界面から地表をモニタリング出来る事は勿論、リンクする設備次第では軌道エレベーターの中間デバイスとしての役割も果たし、条件次第では地表にエネルギー供給など様々な恩恵をもたらす事を可能とした。
閑話休題。
ルビーエレメント(マッシヴサテライト)ドローンを使って生きていそうな地元民をサーチ。
地元民救助活動で生き残りを回収していくうちに、俺は彼らから様々な情報を得て、自分の置かれた状況をかなり狭い範囲にまで絞り込めつつあった。
常に翻訳機能が働いていることを示すAR表示から、俺が八面世界のどこかに飛ばされたのはわかっていたが、どうもここはヒノモトと呼ばれる国のサドないしサドガシマという島らしい。
そして統治形態は王が一人の独裁ではなく、王族による半合議制だったのではないかと思われる。
「役人の方は先に救助された役人の方に、今後の方針を確認してください。動けるようになった皆さんは、役人の指示に従って行動を。調子のまだ悪い方は陽が沈んだ頃また診療しますので休んでいてください」
救助した役人は最初調子をブッこいていた。
助けられた恩などない態度。
それどころが俺に対して異国の奴隷と蔑み、碌にこっちの話を聞かないモード。
まぁ俺としては、災難だったね、と思うし、可哀そうだったね、とも思う。
けど、イラっとするほどではないけどあんまりよい気分ではないよね。正直ウザかったのは否定できない。
なのでその日の救助が終わったら役人どもを死体置き場に積んだ死体の山に混ぜようと思っていた。
本音を言うと楽しみにしてすらいた。のだが、その日救助活動から俺が帰ってくると、どうしてなのか彼ら、とても協力的になっていた。
思いもよらぬ役人ズの『きちんとした謝罪』イベントが発生。
そんな事されちゃったりすると、流石に俺としても振り上げたこぶしをそのままドカーンできない。小心者の性。いやいやそれだけじゃなく、キチンと言う事を聞いてくれる「働き手」となれば、少しでも多い方が良いという理由です。理性的な思考の賜物です。
これについてはこの日の夜、俺のいない間の露姫の飯対策として預けていた物資が激減りしていたことで、俺は「奴の差し金だと?!」と不覚にも変な声を上げてしまったのだけれどもね。
まさかあのやんちゃ姫が他者を顧みるなんて。
びっくりした。
思わず徹夜で城中に監視カメラをつけることになった。
だって怖いじゃん。ゲスガキのくせに何を企んでいるのかって、戦々恐々じゃん。
勇者みたく賢いくせに馬鹿な振りしてるのか。魔法使い兼僧侶みたく徹頭徹尾な馬鹿を騙すための演技をしているだけなのか。戦士兼武闘家みたく気分次第な感性オンリー脳筋しかし必中結果引き寄せマンなのか。って。