もしもし?
『創造』スキルには、俺の知らないものを作り出すことができないという制約がある。
しかし俺は盗賊兼遊び人。
盗賊の真骨頂は盗み。
知らないなら知ればよい。他者の知識を盗めばいいのだ。知見を広げれば欠点は補える。
技能だろうと技術だろうと、盗めば創造はできる。例えソレに形がなくとも。扱えるかは別として。
まぁホテルで昔食べたランチを産み出す、みたいなことなら容易い。
見た事があり食べたこともあるので創造スキルで再現できる。量産すら可能だ。
こういう能力が勇者パーティでは重宝された。
食料費の節約は言うに及ばず。水道光熱費ゼロに加えて料理を作る手間・時間まで省くことができ、その上いつも同じ味が保証されているそれなんてグルメテーブルかけ。
食べ物だけじゃない。生活を豊かにする様々な物品を瞬時に出すことができる俺の『創造』スキルは、本来強いられるはずだった辛く苦しい旅を無縁にした。
発電機もバッテリーもぽいっとでる。家電製品だってぽいぽいっと出る。調度品だってぽいぽいぽい。がおーはがおう、ぱぴーはぱぴい。まみーはまみい。ぱぴーとまみーでぱっぱらぱっぱっぴー。
しかしながら。こんな便利なスキルにも当然欠点はある。
そう。魔法使いが無限に魔法を使えないように、戦士の扱う武器に耐久値があるように、スキルとてその制約を無視できない。つまり乱用はできないのだ。
だからハッピーなライフを送りたいのなら現地人の協力は必須。
食うためには農業をせねばならんし、よりよい住処が欲しいなら建築だってしてもらわなければならない。物資を行き来させるにはインフラ工事も不可欠だ。
何事も初手はマンパワー。文明レベルが上がるまでは現地人に言うことを聞かせないと。
それをさせるのに王族という存在は都合が良い。俺がやんちゃ姫を庇護している理由である。
「ここらの人で魔物を狩れるなら、当分肉に困ることは無いのだがなぁ……」
キラーラビット(仮名)。
中型犬ぐらいの大きさで目が赤く光る。
その体に対して結構な大きさの犬歯いや剣歯を持っており恐れ知らずなげっ歯類。
普段は隠れている爪も鋭くでかい。大人の首を狩れるくらいには伸びる。
武の心得もない普通の人間なら出会いイコール死。
魔法使い兼僧侶なら飼いならし(テイム)、先兵として他の魔物にぶつけるなり情報収集の目にするなり軽作業をさせるなりと色々使える魔物なのだが、俺にとってはただの素材。
殲滅した魔物らはあの後ざっと見回って痛みの少ない利用できそうなもののみアイテム化しはしたものの、量的には全然足りない。生き残りが百人とかいたら全然賄えないと思う。がおう。