ぶん投げたい
スキル【創造】は何でも作れる万能おもちゃ箱ではない。
創造とは模倣だ。
ゼロからイチを産み出しているように見えて、実際は物事の見る角度を変えただけ。イチにイチを足してニにしただけ。創造と呼ばれるものはその大部分がそんな感じ。結局借りものをくっつけた新しい見え方のするナニカに過ぎず、それすら人が見慣れた瞬間からただのイチに成り下がる。
とはいえ。
もしかしたら、本当の意味で無から有が発生したことも。無いとは言い切れない。
人類はその事例を一つ、知っている。
いや、知っているとは言い難い。知っていると思う事すらおこがましい。
我々はそれを、簡単に、往々にして、ビッグバンと呼ぶ。
本当は何も知らないくせに、それが唯一の創造ではないかと、俺より過去に生きた人間たちは、たぶんそう思っている。
未来の人間は、もしかしたらそうではなくなるのかもしれないが。
「ミロクよ。妾はお腹がすいたぞよ」
声をかけてきたのは童女。名を、本間露。
ざっくりいうと彼女は、この島を支配していた王族の生き残り。
何か知らんけどコイツ、俺の事をどっかの宗教団体が持ち込んだ奴隷だと思っている。
城の探索で最上階の物置部屋に隠れていたのを見つけたのだが、出会って早々態度がでかく説教を喰らった。家臣たるものの心得云々的な。
それがあんまりにもしつこくてネチネチしまくったので、ムカついてブチ切れたら半日泣かれた。
しんどくなったのでこっちから折れて、それからなんやかんやと面倒を見るに至っている。その経緯については凄く長くなるのでここでは割愛する、俺がなろうをする趣旨に合わないので。単行本一冊の分量になっちゃったので書籍化したら載せるわ。楽してページ稼ぐために。
「露姫様、夕餉にはまだ一刻ほどございますよ。私がお願いしたドリルは仕上げていただきましたか?」
「そんなの当然ぞよ。妾を何と心得る。本間家の時期姫巫女であるぞ?」
「左様ですか。では確認させていただきましょう」
「か、確認じゃと?! 無礼者! そんなものは必要ないのじゃ! この痴れ者が! そもそもミロクよ、貴様、妾と話をする時はきちんと頭を垂れてつくばえというておろうが! いい加減身の程を弁えてたもれ」
「…………」
このやんちゃ姫、やたら傍若無人。
そして性格が悪い。意地悪を趣味としているメスガキならぬゲスガキ。傲慢の英才教育を受けた比類なき童女。実に王族らしい。伊達にパタリロみたいな声していない。
「露姫様。私が至らぬのは露姫様曰く「いやしき身分」のせい故、これはもう致し方がありますまい? もはやこれは貧民のサガと言えましょう。然るに、露姫様の意を通すならば私は疾くこの場より消え去るしかありますまいな。これ以上露姫様の高貴なお目を汚すのは――」
「ならぬ! それはならぬぞミロク! それは何度もならぬと言うておろう!」
「――で、あれば、露姫様におかれましては、ご寛恕いただきたく思います。さしあたって――」
「ぐぬぬぬぬ! もうよい! わかった! 妾は、その、あれだ! 万が一の手抜かりがあってはならぬ故、どりるを見直して参る。其方は、きっちりお役目を果しやれ」
「ははっ。心得ましてございまする」
どかどか足音を立てて八つ当たり気味に戻っていく童女。
何なのこのやり取り。何度やらせれば気が済むのよこの小学校一年生。
城の住宅環境整備を済ませたら、なるはやで現地人の生き残りを見つけて子守をぶん投げたい。