1549年 8月
「応仁の乱で将軍の権威が失墜すると、室町幕府の後ろ盾で地方を支配していた守護大名たちの権威も失墜したんだ。んで、この守護大名達のかわりに力をつけたのが戦国大名」
おとこおんなの『戦国大名』とはなにか講義。
要約すると戦国大名という存在は、中央権力と一線を画して独自で領地を支配する存在であるらしい。
軍事や内政・外交も、戦国大名自身の裁量で行っていました的な。
この戦国大名のパイオニアとして有名なのが、伊豆を乗っとり支配した事から始まった北条早雲という人物だとかなんとか。
「この早雲を祖とする北条家は、守護大名以外での成り上がりの戦国大名として豊臣秀吉の北条討伐まで続きます。あぁ、北条氏のように成り上がりの戦国大名もいれば、元守護大名や守護代・国人または秀吉のように足軽から成りあがった者もいるよ」
守護大名→戦国大名?
守護代→下剋上→戦国大名?
国人→下剋上→戦国大名?
守護大名から戦国大名化した大名?
うん。わからん。
「室町幕府から任命されて領国を支配していたのが守護大名で、この権力基盤を独自に強めて戦国大名化したパターンってこと。代表的な大名家としては、今川氏・武田氏・大友氏・島津氏などがいるかな。今川義元は駿河の守護大名で軍事改革を行い、遠江から三河まで領土を拡大し戦国大名化していったのでござるよ」
「ござる?」
「そうでござるよ。忍者の棟梁にもなったのでござる。ノキザルの二代目加藤段蔵でござるよにんにん」
「…………」
忍者ってのが隠密行動をする訓練を受けた人だというのはおとこおんなの説明で理解した。が、何故全員女なのか。身体能力を考えれば男のほうがいいだろうに。
「それはほら。俺は女が好きなんだ。性的に」
「……それは、まぁ、人それぞれですし、別にいいのですが」
「おれは、いや、ボクは、知ってしまったんだ。女性の喜びを――キミのせいさ」
「…………えっと?」
こわい。なんだろうこの感覚。
命のやり取りでは絶対に負ける気がしないんだけど、奇妙な悪寒を感じる。気持ち悪いとしか表現できないこの気持ち、名状しがたし。
「ボクはね、自分の事をボクって呼ぶ女は嫌いだった。でも今は思うんだ。ボクを指すボクの一人称はボクが一番ぴったりだって。女の子を愛せるようになった今のボクにならね」
「すみません。ちょっと何言ってるかわからないです」
「いいよ。ボクもキミの事はわからない。お互いに少しづつ分かり合えればいいんじゃないかな。ボクはキミをもっと知って、いや、もっと感じたい」
「いやあの明日早いんであの。何と言いますか、毎日結構仕事量多いので、特に今日は早く寝たいんであのすみませんが――」
「あのあのって、ボクにあのって多様性ってこと?」
「(翻訳機能が働かないってことは)滅茶苦茶なこと喋ってます?」
「死ぬまで忘れられないチューしよ」
「いやです」
やばいな、遊び人スキルが効き過ぎたか。エロジャンキーになっておられる。
これ絶対夜這いするために忍者ジョブ選択したパターンだろマジでで狂えるくらいの鬱々しさだよ。
「戦国大名の情報から脱線しすぎかと。話す気がないなら帰っていただいても大丈夫ですので」
「ちょっと軽いツカミじゃーん。歴女なボクの講義はこれからだよ? もうここから凄い情報量が垂れ流されるんだから。たぶん朝が来てもまだ続くくらいあるよ? ほんと本気出すから全然終わらないから、うん。ゲットゲットゲットぽんちーかん終わんない」
「…………」
めっさ時間かかりそう。




