対策させない対策を考える回
勇者は神の使徒であり、使徒だけが雷の権能を使う。
そのせいか、勇者の特殊技継続力は9999。
魔法使い兼僧侶は世に満ちる粒子を用いて魔法を扱う特化職であり、預言者とも呼ばれる。
そのせいか、魔法使い兼僧侶の魔術技継続力は9999。
戦士兼武闘家は人類の持つ最大にして最高の戦力であり、強靭な肉体を持つ。
そのせいか、戦士兼武闘家の耐受技継続力は9999。
一般人の能力は精々100。
勇者一行以外の能力値は英雄と呼ばれる存在であっても500に届かない。
俺は一般人枠だったが、勇者らの力すら盗み、人の限界を超えた『全能力999』を得ている。
なおかつ彼女らにはない特殊な肉体も得ている。
三人には遠く及ばないが、でも勇者一行の末席に加わるなら俺を置いて他にはいない。
確かに盗賊兼遊び人は、奪う事に特化した寄生虫だ。
何も生み出さないくせに快楽を追求するという非建設的存在。
ウケはよくない。評判はすこぶる悪い。冤罪を着せたくなる人の気持ちもわからないではない。不快害虫って奴だ。害虫ではないのに、むしろ益虫なのに、人は俺を遠ざける。
追放されたのも、今にして思えば、当然だったのかもしれない。
盗賊兼遊び人。穀潰しだ。周りに悪影響を与える腐ったリンゴだ。the rotten apple injures its neighborだ。皮肉にも『創造』スキルを得て、何も生み出さない寄生虫という事実を払しょくするに至っているがそんなことは関係ない。
自分の評価は自分がするんじゃない。自分の事を知らない第三者が、自分の評価をするのだ。評価された自分こそが真の自分なのだ。世の中そういう風に出来ている。追放した人間が悪いんじゃない、追放すべきと思わせた本人がいけないのだ。
閑話休題。
さて、俺は突然致命打を受けた。
首にナイフ形魔法武器を突き立てられ、盛大に血を噴射した。
だが、俺のHPは999。
痛恨の一撃は、すべてが一撃死になるわけではない。
一撃死スキルを乗せているなら別として――そもそも即死無効のパッシヴスキルを持つ勇者一行に一撃死スキルは効かないが――相手の攻撃力の如何によっては殆どダメージが入らない。
その場合どうなるかというと、世界の修正力によって肉体は再生する。HPが残っている限り。
ただ肉体が即死する攻撃は入ったので、ペナルティは発生する。
数秒の寝落ち。
ペナルティが解除され体を起こした俺の目に入ったのは、ぴくぴくと痙攣する少年だった。
目つきの悪い、ジャージ姿の高校生くらいの男。
今まで見てきた現地人に比べると異質な装い。明らかに何かあるとわかる。
俺の血を浴びて麻痺状態になっている少年には、意識があるようだ。
だが体は動かせない。それは俺の血を媒介して降りかかる呪いのせいだ。
――これって、ヤツの言っていた転生者か? だとすると……
俺はまず、罠にかかった少年の『アイテムボックス』を的にして『ぬすむ』を実行。
やはり、あった。
俺の推理を肯定するかのように、分厚いノートが俺の手中に現れた。
パラパラ見てみる。汚い字で何やら書き殴られているが、読めないほどではない。
「…………」
最後の方で、俺と思われる者との激闘の記述を発見。
描写から、コイツと俺との戦いの記録であると思われる。
だって俺のスキルと思われる描写がてんこ盛りなのだもの。
しかも結構奥の手を引き出されている。スペシャルアビリティ『絶対回避』とかはともかく、『スキルハウリング』なんて切り札中の切り札だもの。
内容から勘案するに、こいつもしかすると、死んだら過去に戻るのかもしれない。
ん? それだと時間パラドックスが発生するのか? 戻るというよりやり直せるのだろう。臨死体験的な。未来予知的な。何らかの概念で。
何度も何度も俺に殺されてやり直してきたと思われる記述だけでなく、前の方のページにもやり直している描写がある。酷い能力もあったものだ。タイムパラドックスは素人が手を出していい題材ではないのに。
――死んで時間を巻き戻す能力……本人の能力なのかはたまた、このノートが『神器』なのか。
「…………」
一つだけわかるのは。このままこの少年に死なれると、俺の体の仕掛けにも対策されてしまうだろうという事。次死ぬのは俺だろう。




