第三粒「知恵と加護を授かりました」
「それなら、ほら!僕のこのおでこの宝石を依り代にすればいいよ」
頭に付いている大粒の紅蓮の宝石を指で指す。今の居場所が駄目なら新しい居場所を作ってあげればいいのだ。
「家賃はタダ!衣食住の心配もなし!!あっ、でも寒いとか暑いとか狭いとかは僕にも分からないから快適さについては文句はなしで!」
『わしを………受け入れてくれるのか?』
「うん」
『わし、もうほとんど神様パワーはないぞ?』
「うん」
『ちょっとタロットカード占いの結果が良くなったり、バナナの皮に滑らなくなったり、ちょっとしたご利益がつくだけじゃぞ?』
「なんか微妙なラインナップだね………。別にいいって、そう言うの欲しくて言ったんじゃないし」
老人は若干怪訝な顔をしているがその顔は何処かしら生きることに希望を得た人間の表情と変わらない嬉しそうな顔だった。
「信仰が復活するまで僕の中で眠ってればいいよ。そうすればおじさんに今の世界を見てあげられる」
『成る程のぅ。わしと主とは元々相性はいいから確かにいけるとは思うが………でも、この何の役にも立たぬ老いぼれに何故主はそこまでしてくれるのじゃ?』
「えっ、それは何故って僕がおじいちゃんおばあちゃん子っだったってこともあるけど……。困っているお年寄りがいたら見ぬ振りせずに親切にする。これ、どの世界でも常識だから!」
『プッ……!カカカカッ!!!そうかそうか、精霊をそこらのお年寄りと同じ扱いとは面白い事を言う聖魔石獣もおったもんじゃ!!』
何の躊躇いもなく断言すると、白ひげの老人は可笑しそうに皺くちゃな顔で床に転げ回ってしまうのではないかと思うほど豪快に笑った。
『折角の申し出じゃ。有難たく使わせて貰おうかのう』
そう言うと老人は手を頭の上にかざすと、暖かな光に包まれる。すると頭の中に見たこともない文字や景色、知識などの大量の情報が濁流の如く流れ込んできた。ここでようやく自分は元の世界で事故にあって死んで、何の因果かこの世界に流れ着いたんだと全てを思い出した。
『そなたに僅かながら知恵と加護を授けた。知恵は必ずしも役立つ時がくるだろう。時には剣となり盾となりそなたを助ける。そして加護は繁栄と幸福をもたらす。だが決して独占してはならぬ。もし良い事があれば必ずしも誰かと分かち合う楽しさを忘れるではないぞ?』
「はい!」
老人の優しい眼差しは祖父に似ており、もう会えないんだなと思うと少し涙が出そうになったがぐっと堪える。
「あっ、いつまでもおじさんって失礼だし、これから僕の同居人になるんだから名前教えてよ!」
『わしの名か?わしはノームじゃ、これから世話になるぞぃ』
「ノーム?どこかで聞いたことがあるような……」
聞き覚えがある名前に何処か引っ掛かり覚えるが駄目だ。全然思い出せる気がしなかった。本当に残り僅かなだった力を分け与えてくれたようでノームは既に深い眠りについていた。
「まぁ、いっか。思い出せないんだったらそのままでも」
元々細かい事は気にしない性分だ。もしかしたらいつかの日にかぽっと突然思い出すかもしれない。
「これから一緒にこの世界を見ていこう。よろしくねノーム」
おでこの宝石をそっと撫でる。きらりと光る紅蓮の宝石は茜色の輝きを放っていた。




