恋心の交錯は婚約破棄の場で混乱する
「貴女との婚約破棄をここに宣言させてもらう」
卒業記念パーティーの、プロムの前の挨拶で、第二王子殿下は高らかに宣言した。こんなにも人が大勢いるのに、会場は水を打ったように静まり返っていた。名前を呼ばれた私は、倒れそうになりながらも、自分を叱咤激励し一歩進み出た。
「それが殿下の決定でしたら、謹んでお受けいたします」
「すまない。私は真実の愛を見つけてしまったのだ」
そう言うと、殿下は一人の少女の前に進み、跪いて愛を乞うた。彼女は返事できずに戸惑っている様子だが、王子を見つめる目は潤み、頬も染めていて彼女も殿下を想っているように見える。
彼女は男爵家の一人娘だ。きっと彼女は殿下を幸せにして差し上げられるだろう。
私は殿下と幼い頃から親しくさせて頂いていたが、とうとう恋愛感情を持てずにきてしまったのだから。
なんだか兄弟が好きな人に告白する場面を見たような気持ちになり、思わず殿下を応援する気持ちで微笑んだ。
「お辛いでしょうに、笑顔を見せて下さるとは…貴女は本当に素晴らしい女性だ」
殿下の後ろに控えていた騎士が、殿下に向かって宣言した。
「殿下は身分の差など結婚の問題にはしていらっしゃらない。私も伝えさせて頂きます」
殿下の護衛騎士は私を見つめて言った。
「殿下の婚約者であった貴女に恋情を抱くなど恐れ多いことでしたが、今なら伝えられる。どうか私との結婚を考えて下さい」
「えっ?」
ぽかんとしていると、後ろからも侯爵令息が大きな声で割り込んできた。
「ちょっと待った! 俺だって彼女に恋していたんだ、お前だけに権利があるわけではないぞ!」
「待っ、待って下さい! 僕も、僕だって好きだったんだ。身分は関係ないんですよね?」
今度は平民の天才魔導師だ。
あっという間に様々な殿方に囲まれる。
「えっ、えっ?」
私は混乱し、諸悪の根源である殿下に助けを求めるように視線を向けたが、男爵令嬢と見つめあっておりこちらには気付かない。
「殿下のお気持ちは大変嬉しく思いますが、わたくし先生とお付き合いしていて、卒業と同時に結婚するんです」
殿下は蒼白になり立ち尽くしている。
「何ですって? ならば殿下、わたくしと結婚してくださいませ」
「いえ、わたくしと!」
「抜け駆けはいけませんわ! 身分は関係ありませんのよっ」
殿下の所もカオスだ。
会場は大告白大会になってしまい、収拾がつかないまま夜は更けていくのであった…。




