第五話 ダンジョンの脅威
「僕はバカだった。無謀にも強過ぎる敵と闘い瀕死になった事があった。
ダンジョンの大ボス、魔王の手下に4人という少ないパーティで挑み2人は死亡、僕は瀕死、妹だけは守りたかったが僕をかばって食われた。
そんな馬鹿な事をして懲りずにダンジョンに挑もうとしてる。
君が成年であり低い階層で稼ぐつもりなら平気だろうけどやっぱ妹と重ねるんだ、だから後衛で見学してるだけでいい。
君に傷付くことはさせたくない。
まぁそれに元気なら少し寝て昼から財産をフルに使ってダメージ受けない様なすごい強い装備買ってダンジョンに連れていくから安心して大丈夫さ!
でも逆に闘うのだけはやめてほしい。
取り分はちゃんとあげるから」
ライは私、エルリアに強い口調で説得した
どうやら彼は私を護りつつ強めの敵を倒して私のレベルを上げ耐久値をあげてまた護りつつ強敵と戦う予定なようだ。
でもそれじゃ私はお荷物な気もするがとりあえず稼ぎ口と食い扶持を見つけられたなら良かったかも。
〜
「ここが僕のよく通う武具屋、ヘパイストスだよ!」
「らっしゃーい!…って、てめぇかライ」
かなり裏道を通ってやっと見つかる穴場な武具屋のようだが意外と新しい工房付きのお店であった。
気前の良い声の直後嫌悪感のある声を発しガタイの良い立派な顎髭の男はライを睨んだ。
「それなりの付き合いじゃないですか?ヘパイストスさん」
「お前は、武器を大切にしねぇ。自分の力で無理やりぶん殴るような斬り方しやがるせいで何本俺の子が折れたか」
苦笑いするライ、最初は嘘つきの小心者かと思っていたがその優男から想像できない並の剣を簡単に折るほどの怪力を持っているんだなと少し印象が変わった。
「お前は仲間を失って仲間を大切にするために物を犠牲にするようになった。
だが武具にだって魂は宿ってる、それだけは忘れるな。
そして冗談なのかは分からないがこのチビの武器と防具を用意しろとは言わないよな?
ん?俺は何人もの冒険者を見たことがあるがお前まさか…
覚悟があるなら黙ってこれ持って開けろ、一つ言っとくがそいつは武器じゃない。
生きている代物だ。
しかも一度開ければそれはお前の体の一部になる。」
ヘパイストスはライから視線を移してエルリアに向けると真剣な眼差しで一つの長い箱を取り出した。
ライは手を出そうとする私を静止して声色を強くしてこう言った。
「ヘパイストスさん、あなたの鑑識眼は素晴らしいと思っていますがこれは呪われた装備じゃないんですか?
僕はこの子にそのリスクを負わせたくない。できるなら普通の装備を渡してあげられませんか?」
「いや、こいつはこれから色んな業を背負いそうな気がする。
その中でこれがなきゃこの女は確実に死ぬだろう。
お前だって死にたくないだろ?」
「え、ええ」
不意に心配するライの横顔が目に入り目の前に置かれた箱に戸惑うエルリア。
もしかしたらヘパイストスは私が瞳の勇者だという事を察してこの装備を渡そうとしてるのかも知れない。
そしてこんなに強いと思われるライがいる前で死にたくないならこれを持てという位この武器は力を秘めているのであろう。
「ごめんね、お兄さん。
私妹さんみたいにお兄さんを悲しませたくないから」
名目はそうだが、もし瞳の勇者がライより強いのなら私は自分自身で自分の身を守らなければならない。
ライがやんわり止めに入ろうとしたが私は素早くその箱を開いた。