第四十九話 エルリアVSレシラ
白く光るリングに私、エルリアはとうとう上がった。
生身の人間が相手にしては相手は残り三人、こちらは二人。
あの瞳の勇者が手酷くやられたものだ。
場外を見るとライとノアは気絶。
エナは相変わらずムスッとした表情。
エリックは初戦と違い真剣な表情。
更に目線を敵陣営に向けると、複雑な表情をしたスミスがいた。
「へぇきょろきょろと…そして、
敵の前でその先を見る余裕があるんだ。」
「…」
「シカトかよ、何様ってんだ!」
レシラの怒号と共にスミスの勝負開始と言う声が聞こえる。
息を吐くと彼女は落ち着いた口調で話しかける。
「お前は認めたくは無いだろうけどお前はアタイと境遇が似てるんだ。
アタイはお前と同じスラムの民だったが能力を買われ勇者一行の魔法使いとなった。
だがアタイは元勇者一行から外れたときアタイの存在価値、魔力核を王国に奪われた
そしてアタイは再びただのスラムの女になった。
力なきスラムの女は身を売ることが多い。
それが生きるのに手っ取り早いからな。
そしてただの道具として扱われるだけの存在。
プライドも何も踏みにじられ蹂躙され泣きながらも生きてきた。
でもアタイは魔力核取り戻した!
お前も力を天から与えられ手に入れた力があるだろ?
これはスラムにとって王国への反逆の力だ
お前も本当はリベリオンに居るはずの人間なんだ!
それなのに!」
「あー、うるさいうるさい!」
確かに境遇は似ている。
だがぐちぐちと喋るレシラに私は耳を閉ざし大きな声で止めさせた。
周りも静かになるのを感じる。
そのタイミングで私は話し始めた。
「ここにいる理由?
私はあんたらが大嫌いだからよ!
過去ばかりに捕らえられたり
自分の生まれやその定め以上の事を望んで人様に迷惑をかけて!
スミス!アンタも含めてそう!
王国が優雅な暮らしをしてるのが疎ましいとか、過去の同士の恨みがとかさ
そんなの私にとってどうでもいいの!
私達は定められた事をして生きていく。
例えば私達が食べる定めの家畜を皆開放してあげて私達の食べるものを無くす事が理に適っているの?
違うわ、この世に生まれたのならばその定められた生に則るべき。
私がここにいるのは魔王を倒す為の力を与えられたから
そしてその邪魔を排除する為
国を混乱させるような生産性のない事をする為じゃないわ!
あなた達とは違う」
「残念だ、ノアから聞いてたからもしかしたらエルリアとも仲良くなれるんじゃないかと思ったけど反吐が出るような思想。」
「相容れないわ、あなた達はどうあっても抗うもの達なのだものね。
是非もないわ、来なさいよ
常に世の中は勝者が正義だろうし」
私とレシラは睨み合った。
私は早速右腕を上にあげダーインスレイブを取り出した。
相変わらず身の丈くらいあるが空気のような軽さだ。
「なんて、禍々しい剣
お前の心みたいだ…
まぁでもこれで終わる、気失ったらそのまま刻み殺してやる!
スリープ!」
これはノアを誘拐する時にかけた魔法だろうか。
空気が振動し迫ってくる。
しかし
「なに!?」
ダーインスレイブがその空気を吸収した
『どーでもいい魔法だが飲み込んでスリープを覚えたぜ、いやこの大会ではこれを相手にかければ勝ちか』
「いえ、私はあなたを気絶でなんかじゃ終わらせない、私ね、あなたの欲しいものがあるの」
先程の言い合いから苛ついたのか自分の体が赤く燃え、髪が赤く染まるのが見える。
レシラの顔がすぐに恐怖で染まった。
「な、何だ?ば、化物!!」
「あなたの、折角手に入れた
命と同じくらい大切な…魔力核」
「…ひっ!死んでも渡すか!フレア!」
彼女は錯乱し炎の魔法を私の左腕に当てた。
流石元勇者一行だけあって魔力も凄まじい。
「痛い…すごく痛い…、左腕がなくなっちゃった
どうしてくれるの?
新技だけど…グリムゾングラス!」
周りに悲鳴が上がる。
しかし痛みに耐えながら新たな力を使った。
やはり苛立ち等が無いと血眼の力は進歩しないようだ。
とてもうまく行った。
声とともにピキッと音を立ててレシラは固まる。
固まりつつレシラは誇らしげに言った。
「でも血眼の勇者の片腕はもらった!」
「ごめんね、実は再生できるの」
「へ?」
周りに再び悲鳴が上がる。
ダーインスレイブが緑色に輝くとジュポと言う音と共に左腕が元通り生えてきた。
これはエリックの緑眼の力だ。
案の定味方陣営も驚きの声が上がり、エリックも口を思わず開けていた。
その声にノアが目を覚ます。
もうこの技が決まれば勝ちだ。
私はレシラに話しかけた。
「私もあなたに選択肢をあげる。あなたは今ガラスと同じ。動いたりしたり触れたら散り散りに割れる。でも貴方が魔力核を素直にくれるのなら許してあげるわ」
「分かった!頼む!頼むから殺さ…」
バリン!バリバリ
その音は無残に響き砕け散った。
「嘘、言ったでしょ?エナ辺りが、
確実に殺すって。それに私これでも器用だから魔力核は」
残った白い塊を手に取り飲み込む。
「壊さずもらってくわ。
スミス!
あなたがこんな無駄で生産性の無いことを続けるのなら消えた三体分のやつらと同じように見せしめが如く私が殺していくわ!
勿論そこのシスターのあなたも
引き下がるなら引き下がりなさい
私はこの女の魔力核が手に入って満足だから許してあげてもいいわよ」
「舐めるなよクソガキ!
ワシらはそんな弱い意志でこの世を変えようと思っとらん、今でも思い知らせよう」
スミスの纏う紫のオーラの火花が非常に激しくなっているのが見える。
立ち上がろうとしたスミスだがそれを止める人物がいた。
あのシスターだった。
「私、ソフィアにお任せくださいスミス様!」




